第284話 帝国のお誘い
戦うと言っても俺とクウガの試合。
非公式とはいえ、片方は英雄とか次期帝国の指導者、世界をまたにかける種馬。など噂されている人間と、その知り合い。と言うだけの俺では戦う場所がない。
「と、言う事だから諦めてくれ」
俺がクウガを説得しようとすると、部屋の扉が音を立てて開いた。
「話は聞かせてもらった!! この俺が力を貸そう!」
振り返らなくても声でわかる。
帝国の第一皇子アレキだ。
「おい、貴様! 振り返れ!」
めちゃくちゃ嫌なんだけど。
「はいはい。なんでございましょうが皇子殿」
「少しは素直になったようだな」
嫌味だよバーカ。
「アレキよ、小僧とドアホウの戦いの場を任せろ。というのは何なんじゃ?」
「ふ、魔女よ。この帝国……いや皇子となればそんな小さい事問題ではない」
「どうでもいいけど、師匠の事を毎回魔女呼ばわりキレそうなんだけど?」
俺が怒りを込めた声で言うとアレキはきょとんとする。
「魔女ではないか? では……メルギナスよ」
「呼び捨ても辞めて」
「…………ではメルと言われていたな」
「親密でもないのに呼び捨てはむぐ!?」
突然に俺の口がふさがれた。
可愛らしい手で目線だけで確認するとアリシアだ。
「クロウ君黙っていてくれるかな? アレキ皇子様も困惑してるし」
「むぐぐうむぐぐむ!」
そうだけどさ! と言いたいけど口をふさがれている。
「アレキよ、ワラワの事は魔女でよい。で? 本題を」
「そ、そうだな。近々帝国を世の中に広めるための武術大会を開催する」
してどうするんだ。
武術大会ってゲームでもよく聞くけど悪趣味な人間賭博だよ?
「そこのシード権で我が義弟クウガを登録してある」
「ぶっはっアリシアもういいから。話させて」
「もう回り困らせたらだめだよ?」
別に俺が悪いんじゃない。
あと、クウガ何故俺をにらむ……?
「勝手にやればいいだろ。俺は出ない」
「勝手にやるつもりだった。がクウガが表に出れないので中止になったのだ! 被害総額は25523万ゴールド!」
部屋の中が静かになった後、ミーティアが指で数字を確認し始めている。
「ぎょわー! す、すごい損害……クウ兄ちゃん。ミーティア達悪くないよね!?」
「そこの娘よ。お前たちは悪くない」
「じゃあ俺も悪くない」
この流れに乗ってしまおう。
わんちゃんこの馬鹿皇子なら俺の事も悪くないって言ってくれる。
「いや、お前が悪い」
うん。そんな事はなかった。
「なんでだよ! そもそもクウガが老人になったのはクウガが薬を飲んだから! 俺が飲めって言ったわけじゃないでしょ? 俺なんて無関係なのに薬まで取りに行ったんだよ!?」
俺は言い切るとアレキが一歩下がる。
「事実はどうあれ帝国はお前を特定重要人物と認識してる。数々の帝国繫栄のための妨害。普通なら魔女ともどもギロチン送りも出来る」
「ほう──」
──できるものならやってもらにょ!?
「もごごごご!?」
アリシアさん!? 思わずさんをつけるけど、また口を手でふさがれた。
今度は素手じゃなくて柔らかいハンカチを挟んで口をふさぐ。
「はーい。クロウ君は黙っていてね」
「もごご!?」
俺の発言権はどこ!?
「こわ。部屋の温度が下がったよね、ミーティアちゃんびっくりしたよ」
「クロウベルさんの本気ですかね……僕はまだその境地に」
「ふん。みたかドアホウだって、やる時は凄いのじゃ」
あっ師匠が褒めてくれる。
それだけで俺はごはん3杯は食べれそうだ。
「別に帝国の損失を貴様らにたかろうとは思ってはいない。だが……地下城下町の建設予定。丘の上にあるヒーローズの町、あそこは帝国が資金を出してるのにもかかわらず帝国領じゃないと言い張る始末。数度による帝国城破壊。魔物による被害、サンの出産費用など、ほとんどがお前が持って来た事だ。協力しようとは思わないのか?」
一部関係ないのまざってるよね!?
帝国城崩壊とサンの妊娠は俺の責任じゃない。
「もご!」
口を押えられて返事が出来ない。
いやアリシア離して! 結構ちからいれてるなこれ。
「やりましょうクロウベルさん! 僕も決勝で戦いたいです!」
「もごごごんもごもんもん」
「…………アリシアよ。放してやれ」
「はーい。クロウ君騒ぎ立てて話をおかしくたら、今度はその口を縫うよ」
「ぷっは。またまた冗談うまいなアリシアは、なぁクウガ」
クウガの顔色が変わって俺から目線を外した。
え?
すぐにミーティアを見る。
「わ!? ミーティアちゃんは何も見てないし聞いてない」
ミーティアも俺と目を合わせようとしない。
「クロウ君?」
耳元に静かにアリシアの声が聞こえてくる。
やばい。
「本題だよな! ええっと分かった! 協力はする。でも、決勝までに俺が負けても恨みっこなしで」
「ふん。わかっているお前の事だから1回戦で負けるつもりだろう」
「ソンナコトナイヨ」
俺は必死に否定するのに、師匠が「ドアホウじゃしな」と小さく言うと次々に「クロウベルさんですし」「クロウ君だもんね」「ド変態ちゃんのやる事はミーティアちゃんでもわかるー」など援護が一切ない。
俺の信用ってそんなないの!?
「優勝したらお前にも褒美をやる」
「え。まじで」
「帝国の栄誉、片翼の堕天の称号を──」
「いらん!」
「なんと!?」
アレキ皇子がびっくりしてるが、俺もびっくりだよ!?
そんな中二全開の称号貰っても全然嬉しくない。
「要らないんですか!? 僕は『片翼の聖天』の称号を持ってます」
クウガが驚いているので再度びっくりだよ!?
お前、そんな称号持っていたのか。
あと、聖天大してこっちは堕天だし。
「ふむ……他には何かあったかな……先日押収したアイテムで珍しいのはキエサリ液か、眠りの粉……」
「お!?」
キエサリ草。
名前の通りせんじて飲むと一定期間姿が消えるというやつ。
名前は知っていたしアイテムもあるだろうと思っていたがこんな所にあったのか。
ゲーム本編ではクエストでもらえるが、俺がこの世界で調べた結果、案の定秘宝扱いのアイテムだ。
うん。普通にあぶないもんね。
元々は目視してくる壁がある迷宮。で使うアイテムなんだけど……ゲーム本編でもまともに使われた事はなくイタズラアイテムとして使われていた。
「それ欲しい」
「ほう。優勝したらな。では言質もとれたし俺は失礼する」
皇子アレキが部屋から出ていくと、俺は振り返った。
「あれ? なんで全員無言なの?」
「クロウベルさん、その薬って……」
「何に使うのかな?」
「ドアホウもし変な事に使ってみろなのじゃ」
「ミーティアちゃんがターゲットじゃなくてよかった」
何と言う冷たい目。
極寒の地かなここ?
「いや、俺は別に俺が使って遊ぶとかじゃなくて、ちょっと試したい事があって」
このキエサリ草。
とある場所で使うと結界を通り抜けエルフ……じゃないか、長寿の里に行く事が出来る! らしい。
らしいってのは、実装予定ページの乗ったまま実装されなかったから俺は未確認。
元々アイテムが1個しかないのに、ほとんどの人が使ったのにもかかわらず、そんな追加DLCの話が出たのだ。文句がひどい出た。
それを試したい。
「まっドアホウのやる気があるのはわかったのじゃ。じゃぁワラワは先に家に帰って……」
「師匠、うまくいったら祈りの指輪が手にはいるかも!」
「………ドアホウ。あとで説教じゃな」
「なんで!?」
「肝心な部分の説明省いてるじゃろが!」
理不尽な。




