第281話 ショタとお姉さん物に!?
ゴミの山からアイテムを探す。
基本的に上のほうには穴に落ちた魔物などその下には年代ごとに物が埋まっている感じがする。
例えば上のほうには先ほど穴に落としたマネマネマンの死体? が2つ。
俺の姿を真似したのと師匠の姿を真似した奴。
俺のほうは頭が飛んでいて、師匠のほうは胸を突かれている。
どうしても上から仕訳けないといけないので山に登っては確認。
「………………」
一応背後を見た。
本物の師匠は扉の外にまだいる。
いや、これは研究だ。
どこまで師匠にそっくりなのか調べないと!
俺が師匠もどきのズボンを触る。
あれ?
ちょっとだけ中を見ようとするも肌にくっついて取れない。ってか子供のころに遊んだヒーロー物の人形みたいだな。
「どうじゃ。服のように見えて皮膚の一種じゃ取れんじゃろ?」
「まったく、服じゃない? 俺が気になるのは中身……うおおおおおおおおお!? し、師匠!? いつから」
「さっきから呼んでいるのじゃがゴミ山に登ったまんま動かないから様子を見に来たのじゃ」
「さ、さようで」
「まったくいい年してお人形遊びとはなのじゃ」
別に年齢は関係ない。
「いやぁどこまで再現されてるのかなって……」
「流石に悪いと思って手伝いに来たのじゃが1人のほうがよさそうじゃな」
師匠は師匠の姿を真似したマネマネマンに魔法で攻撃するとスライムのようにドロっと外装が溶けていく。
その下からは無表情のマネキンみたいのが残った。
「へぇ。こうなっていたんですね」
マネキンになったのならもう要らない。
さっさと遠くに放り投げると次の物に手をかける。
師匠は頭のない俺のマネマネマンも衣服を溶かすと思いっきり蹴って山から落とした。なんだかちょっとかわいそう。
「ってか壊れた武器とかも多いですね」
「迷宮すら要らないゴミじゃな。この迷宮には何人も人間が来ているっぽいの、全部が全部ボスを倒せるわけじゃないのじゃ」
女性用の防具を見ては俺もため息をつく。
胸当ての部分が砕けており、致命傷を負ったに違いない。
「世知辛いですね。もっと命大事に生きればいいのに」
「…………ワラワもそう思うのじゃが、いやワラワこそそう思うのじゃが。短命なドアホウが言うとやっぱり変わってるの」
「短命だから大事にしたいんですよ。もっとももしかしたらですけど師匠と同じ刻を生きられるかも……うええ。その顔ひどくないっすか」
師匠は思いっきり嫌そうな顔で俺を見てる。
「え? ああ……嬉しいのじゃ」
「顔とセリフが合ってませんし、ものすごく適当な返事なんですけど!?」
師匠もゴミの山の中から折れた剣を取っては何もない場所へ放り投げる。
「地獄じゃぞ」
「はい?」
「長寿族の一番の死因は自ら命を絶つことじゃ」
「………………重い話です?」
師匠が頷くので重い話なんだろう。
「考えても見るのじゃ、周りが老化して死んでいくのに自分達だけが生き残るのじゃ100年200年はまだいい。ワラワは臆病だからここまで生きてるだけじゃ」
師匠の横顔がすごい寂しそう。
「だったら、死にたくなったら俺が殺します」
「こわっ! どういう考えになったらそうなるんじゃ!?」
あれ? 自分の中ではカッコつけたつもりんだけど、怖がらせてしまった。
「いやだから。長寿族の師匠が万が一死にたくなったら自分じゃ無理だろうし俺が」
「そこは止めるじゃろ!?」
「いやでも、師匠が考えた事を捻じ曲げるのも」
「そうなんじゃろうけど、少しは……いや。さてこのペースで行くと何日になるかわからんワラワも手伝うのじゃ」
師匠は言うだけ言うとさっさと反対側に行ってしまった。
何にせよ手伝ってくれるのなら心強い。
…………たぶん。
ちらっとみると適当に後ろにゴミを放り投げるようにしか見えないけど。
思ったよりは人間の道具が多い。
それを分別しては探していく事数時間、途中でトイレタイムや休憩タイム。
仮眠タイムなども取ったりしては時間だけが過ぎる。
目の前の山が半分ほど減った時、事前に教えてもらった形と同じ小瓶を発見した。液体は4分の1ほどで洗剤を入れたかのように虹色だ。
「あった…………師匠!! 師匠……?」
「あったのじゃ!?」
すぐに駆け寄ってくるので小瓶を渡すと、それを真剣な目で見て俺に返してくる。
「魔力の渦がすごいのじゃ。ここまで凝縮されているのに混ざり切ってないのじゃ」
「師匠飲んでみます? 若い時の師匠も見てみたいですし」
「あん? ババアで悪かったなのじゃ!!」
「そういう意味じゃなくて、俺の記憶する世界にはガンクロ女子っていまして若い時は肌を黒くするファッションがあるんですよ。わんちゃん師匠もそんな時期ないかなって」
「………………何か召喚でもするのじゃ? 巫女の儀式ならしっておるのじゃが、悪いが昔からこの肌なのじゃ」
どうやら飲んでくれないらしい。
仮に1000歳としても一口飲んだぐらいじゃ変わらないだろうしちょっと飲んでほしかった。
「それよりもドアホウ」
「何かいますよね」
何か息苦しい。
俺達の周りに黒いモヤが現れると人型や魔物みたいな影になっては散っていく。
「まるで古代都市の兵士みたいですけど……あっちと違って変なプレッシャーというか圧がくるんですけど」
「これが魔王じゃ……いや魔王の影というのかの」
「まじで……」
「望む者に手を貸し、代償に力を求める」
師匠はマジックボックスからエリクサーの小瓶を4本ほど取り出した。
「ライトニングフルバース!!」
影の集団に向けて魔法を唱えると師匠はエリクサーを1本飲み干す。
「脱出なのじゃ」
「了解。水竜ううううううう!!」
物凄い久々に水竜陣を唱える。
俺の願いにネッシー型水竜がでてくると、いきなり影の集団に囲まれた。
「え?」
青い水竜が黒い水竜になると俺達を襲って来る。
「魔力の残滓より上位やぞ。下手な魔法は食われるのじゃ」
「先に言ってくれないかなー!!」
アンジュの剣で襲って来る水竜の首をはねた。
ごめんっ。
普通ならこれで終わるんだけど首が無くなった黒い水竜はなおも襲ってきた。
「逃げるのじゃ、ついてこいのじゃ」
「了解」
帰りも敵がわんさかいる。
一応地図を見て近道を通るも敵はいないわけじゃない。
後ろから魔王の影が追って来るし、前には強い雑魚敵、俺の魔力もすっからかんでやっと迷宮から脱出した。
「ぜえぜえ……師匠俺生きてます?」
「…………途中で両腕無かったような気がしたがちゃんと生えてきたようじゃな」
「あの野郎、アンジュの剣を飲み込みやがって……手突っ込んで回収したんですけど、持ってかれるとは思わなかったです」
「だから諦めろって叫んだのじゃ……」
迷宮の外までは追ってこないようで、俺と師匠は背中を合わせてぐったりする。
師匠なんてエリクサーを飲み干してる所だ。
「あっ師匠俺にも」
俺は師匠の手から小瓶を取り口に含む。
まっず!
「げっほ。なんだこれ! 師匠エリクサーが腐ってます!」
「ばっ! 吐け! それ若返りの薬じゃぞ!」
「はい?」
よくみたらエリクサーじゃなくてさっき見つけた小瓶だ。
無くさないように師匠に手渡したんだっけ。
ってか。ああ、どうしよう! 明日からショタのクロウ君と魔女のお姉さんと言うR18物語になってしまう! 俺は急いで口から液体を吐き出した。




