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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第28話 喋るお尻

 必要な情報も手に入り宿に戻って来た。

 部屋に入ると三角帽子をかぶり教師代わりの師匠がノラに勉強を教えていたようだ、ノラは机の上でバタンキューをしている。



「丁度良かったの。復習じゃ! 魔力の水は飲めるか否かなのじゃ」

「飲むだけなら飲めますよ。その代わり元が魔力ですから直ぐに消えて存在すらなくなる。砂漠などで飲んでも一瞬喉の渇きが収まったに見えて直ぐに元に戻る。でしたっけ」

「正解じゃ」



 水魔法が人気無い理由の一つである。

 水不足の場所や作物に魔力で作った水を与えても意味がない。

 そのくせ他の魔法よりも属性持ちが少なく覚えるのも大変と言う。


 基本地味だし。


 同じ理由で土魔法も人気は無い。

 一瞬で強い壁や土槍を作る事が出来るが魔力が切れると砂の様に崩れ落ちる。

 土魔法で家や橋を作れない理由の一つでもある。

 ただ強いよ、最終的にはゴーレムだって作れるし。



 やっぱり一番人気は火と聖。

 これさえ才能があれば一生食べれるし歴史に名を残す事だってできる。



 

「クー兄ちゃん凄い、お金の感覚はおかしいのに」



 褒められたうえでけなされた感じがする。



「ノラ?」

「ああ、ごめんなさい」

「いやその通りだからいいんだけどさ……それより二人とも今度は……砂漠だよ…………」

「なぜ悲壮感でいうのじゃ」

「だってクウガが向かったのはスータンだよ!? イフに向かってくれれば温泉。ザ・混浴イベントだってあるのにスータンじゃイベントと言えば露出が少ない」

「…………言っておくのじゃが、別に温泉だからといってなぜ混浴しないといけないのじゃ?」



 師匠が反論してくる。



「え、だって温泉ですよ」

「クー兄さん。メル姉さんの事になるとちょっとおかしくなるもんね」

「ノラよ……ちょっとでは無いとは思うが……まぁドアホウはこれはこれで慕って(したって)くれるし才能は未知数じゃ……アリシア達はスータンに行ったのじゃな?」



 アリシアが今すぐに命の危険はない。と思う。と師匠の言葉を信じてイフに寄り道して温泉ひゃっほい! としたかったが友人の命と師匠とのイチャラブを天秤にかけて何とか正解を伝えた。



「そうみたい。あの馬鹿は暴れた後に牢に入れられ数日前に出発したって、もしかしたら間に合うかも」

「何にせよ追い付ければのう」

「あの、追い付いてもボクの事は……」



 ノラが心配そうな顔で見てくる。

 あーそうか、俺達の旅がアリシアを追いかける事だからノラにとっては追いついたら心配だよな。



「訓練はするよ、場所がかわるかもだけど」

「場所ですか?」

「フェーン山脈になるかも」

「おい、ドアホウ。なぜワラワの家でやろうとする」

「え。俺、師匠の家とは一言も、師匠の家の隣に家を建ててそこで教えようかと。まさか師匠だってノラを放置しないですよね」



 ノラが「メル姉さん……」とすがるような目だ。



「当たり前じゃ!」

「よしノラよくやった!」

「何がですクロー兄さん」



 師匠がノラを教える。と言う事は俺はノラと訓練するだけで師匠のそばに入れる口実が出来るのだ。



「ともあれ、ワラワのやる事は終わったのじゃ」

「じゃぁ……寝ます?」

「ワラワは寝るのじゃ。ノラ、ドアホウが変な行動起こしたら起こすのじゃ」

「その時はボクは部屋の外に出るね」

「ノラよ……」

「ノラありがとう!! ありがとう!!」



 師匠がジト眼でみてくるが、俺はノラにお礼をいいまくる。



「ドアホウ、今すぐ馬小屋に行くか両手縛ってここで寝るか、部屋の外に追い出されるか、手足もぎ取るか。どれを選ぶのじゃ?」

「ふむ………………手足で」



 俺は両手を師匠に投げ出すように前に出す。



「はぁ……ほんっとドアホウめが。《《信用はしとるのじゃ》》、好きに寝とけ」



 師匠はそういうと大きなベッドの真ん中で毛布に包まった。

 ノラも「じゃぁボクも……」と師匠の横に邪魔にならないように横になる。



「いいんですか師匠。俺を信用しても……」



 小さく聞いてももちろん返事はない、聞こえない感じで言ったし。《《今日も》》ソファーに寝そべるとゆっくりと目を閉じた。




 ――

 ――――



 翌朝宿を引き払って馬車屋の前に行く。

 グラペンテから砂漠の街スータン行きの馬車だ。


 いかつい顔の御者は俺と師匠の顔を見て先に声をかけて来た。



「あんたら、行先は?」

「え? スータンへ行きたいんだけど。3人」

「じゃぁやっぱりお前らか、乗りな」



 普通の乗り合い馬車ではなくて乗客を乗せるために特化した二段階上の馬車に案内された。



「え。高くない? 一番安いので1人金貨8枚なはずで……これ1人倍以上はしそうだけど」

「無料だ」

「ええええ…………」



 俺はそっと腰の剣に手をあてた。



「まて! お前だろ、セタ姉さんから聞いてるよ。普通に剣を触るな、いきなり斬ろうとするな」



 御者が慌てると、師匠が横に並んだ。



「誰の事じゃ?」

「セタ、この街のギルドマスターだ。スタイルいい姉ちゃんを引き連れたボンボン風の男と、その弟らしき3人組がスータン行きの馬車に来たら無料で乗せてくれって頼まれてるの! 前金も貰っているし伝言で『《《昨夜は凄かったです》》』と伝えておいてくれって」



 すぐ隣にいたノラがすすすすっと師匠の横に移動した。



「ほうほうほう。普段ワラワを師匠、師匠と言う割にやる事をやっているようじゃな。いや、ワラワは嬉しい。ドアホウもワラワ以外の女に目を向けるとはなのじゃ、どうじゃ? ここでドアホウはリタイヤって事で。御者よ、乗るのは2人で」

「まってまって!」



 大慌てで師匠の手を握る。



「なんじゃ、ギルドマスターとよろしくやっていればよかろうに、顔は覚えてないが美人だったと思うのじゃ」

「やってない、やましい事はやってないから! それはもう《《魔女》》に誓って」

「…………そこは神はじゃろ」

「まぁ……そうともいいます」



 ギルドマスター、えっとセタだっけ。

 彼女から聞いた魔女の話は二つあり、一つは災厄の魔女。これは人間を導き人生を破滅させ、国さえも亡ぼす。と言われている。


 もう一つは契りの魔女。

 よくある昔話で魔女に助けられた少年が、魔女から秘密だよ。と言われた事を周りに喋ってしまい。魔女討伐が始まる。

 それに切れた魔女は助けた少年ごと人間を殺してしまいいずこかに消える。と、言う話だ。


 魔女にかけて。は契りの魔女にかけた俺の良い返しと思うんだけど師匠からは冷たい目で見られた。



「で、あんちゃんは乗るのか? 乗らんのか?」

「乗る! さぁどうぞ師匠お先に」

「むう、仕方がないのう」



 師匠が馬車のステップに足をかけて中に入り込もうとする、俺はその師匠のお尻を掴んで馬車に押し込んだ。

 すぐに腹部に痛みが走り吹き飛ぶ。


 け、蹴られた。



「いいいいいい……内蔵が、内臓がいた、痛い」

「クロー兄さん……それはクロー兄さんが悪いよ」

「あんちゃん、どさくさに紛れて尻はねえよ」

「だって……だって……目の前に触ってくれって……尻がしゃべったんだもん」

「喋るかわけあるかドアホウ!! たっく最近はおとなしくなったと……御者よ出してくれなのじゃ」



 俺が腹部に『癒しの水』をかけていると目の前で馬車が動き出す。



「のおおおおおおお! 乗るって乗るから」



 俺が走り出すと、馬車の扉が開き師匠の手が伸びた。

 何とかつかむと馬車の中に滑り込む。



「はぁはぁはぁはぁ、本気で置いていこうとは……師匠ひどい」

「ドアホウも弟子というのなら身をわきまえろ。ノラだっているんじゃ」

「そ、そうですね。今度はバレないように頑張ります。あっまって蹴らないで! 本当に落ちるから!」



 俺は必死にに馬車の中にしがみ付くと、御者から『暴れないでくれ』と怒られた。


 対面式の座席に座るとやっと落ち着いた声をだす。



「そういえばノラは俺の妹弟子になるんですかね?」

「…………ワラワは弟子はとらん」

「え!?」

「メル姉さん……」

「勘違いするななのじゃ。そもそもドアホウですら弟子と認めた事はないのじゃ。教える事は教える、それを決めるのはお主ら2人なのじゃ」



 師匠ははっきりと言い切ると、三角帽子を深くかぶり足を座席の前に出して寝る体制に入った。


 その足の裏を触ろうかと一瞬思ってやめておいた。

 たぶん、本当に馬車から蹴落とされそうだから。


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