第278話 タイミングを逃した……か?
師匠が突然に俺の元の世界を事話せと言って来る、大きな選択肢は2つ。
誤魔化す。
喋る。
時間制限は師匠が鍋にいれてるおたまを1回転させる間。
ああ、もう半回転してる。
誤魔化すってどうするかだ。
ここはぶっ飛んだ発言をして場を荒らせばいけるだろう。例えば『師匠くさいっすね』この一言を言えば、おたまの動きが飛んで鍋の中スープが俺に飛んでくるに間違いない。
これを言えば地球の事なんてとりあえずは大丈夫だろう。
次に選択しならぬ、選択死。
いや俺ながらうまいな。
師匠の手があとちょっとで1回転する。
でも、本当に誤魔化していいのか? 師匠と俺は長い付き合いだ。
たとえ師匠にとってはゴミみたいな時間としても、その師匠が俺を試している。
ここで本当の事を言わないと、これ以上師匠との距離は埋まらないかもしれない。
脳内会議はすでに体感1時間を超えた感じだ。
しかし実際の時間は2秒足らず。
師匠の腕が止まった。
「で。決まったのじゃ?」
「こ、交換条件!」
第3の案をひねり出す。
別にもうそろそろ話してもいいだろう。って考えてもいた。
過去に言ったり並行世界に飛んだり、どれも嘘みたい体験を師匠は信じてくれたんだ。
「金なのじゃ?」
「金はまぁあってこした事ないですけど、師匠も俺もそんな興味ないっすもんね」
「ようわかってるのじゃ」
俺も師匠も多少の贅沢が出来ればいいか程度の人間だ。
「触らせて……」
「許可しなくても触ってくるじゃろ……」
「確かに」
じゃぁもうほしいものが無い。
あっ1つあったわ。
「愛がほしいです」
「じゃぁワラワも聞かない事にするのじゃ」
「うおおおおおおおお!! 選択し謝ったああああ!!」
寝転がった姿勢から起き上がるとたき火をはさんせ土下座をした。
「話させてください!」
「いや、もう興味失せたのじゃ」
「そこを何とか!!」
師匠ポイントが音を立てて下がった気がする。
これ以上さがると拒絶されるに違いない。
「愛は渡せないのじゃ?」
「いやもう、そこに居てくれるだけ嬉しいですから」
「本当になのじゃ?」
「そりゃもう」
師匠しかいない。
「ふむ。ワラワはかわいいのじゃ?」
「そりゃもう綺麗です。大きな胸に始まりそのお尻。桃の腐ったような甘い匂い、指が埋まるほどの弾力さらに──」
「ドアホウ?」
「褒めてるのに殺気が!?」
「本気で言ってるなら締め出すのじゃ?」
いつもの師匠の顔になってきた。
さっきまでは急にヤンデレ入ったかまってちゃんも入っていたが、まぁ師匠だって色々あるのだろう。
「本気ですけどね。で……どこから話します?」
「転移か転生なのじゃ?」
「転生……ですかね。っても記憶が戻ったのは15歳でして──」
師匠の質問に余計な事はいれず、俺も答えていく。
答えるたびに師匠は頭を抱えては次の質問に移り変わっていった。
答えた事は、転生した事。
15歳からの記憶がある事。
この世界は地球で見た物語の中である程度知っていた事。
この世界での本当の俺は性格も悪くすぐ死ぬ事。
師匠と出会う前から師匠を攻略しようとした事。
師匠は黙って、中身入りのオタマを俺に飛ばしてくる。
「あっぶ! いきなり何するんですか!? はっこれ《《師匠によるイケメン弟子へのあてつけイジメ!?》》」
「話がぶっ飛びすぎてドアホウが本気でしゃべっているのか考えていた所じゃ。少しは真面目にしろ」
「うい」
拾ったおたまを魔力の水で洗い流しては鍋に戻した。
「その魔力の水は汚そうじゃの」
「それこそ俺泣きますよ?」
俺が師匠の代わりに鍋をかきまぜる。
「で……答えましたけど。これでいいですか?」
「そうじゃの。次に行く場所の迷宮ボスは知っているのじゃ?」
知ってはいる。
黒い魔力の塊。というか魔力の意思というか。
混沌とした這いよってきそうな何か。
「魔力の……意思を持った集合体で合ってます?」
「はぁ……このクソボケドアホウは」
格下げされてる。
「あのもうそろそろ俺も本気で怒っていいと思うんですよね」
「手を出すのじゃ。駄賃ぐらいやる」
「たき火があって、出したら俺の手や腕が燃えるんですけど」
「ほれ、もんでいいのじゃ」
師匠が炎越しに胸をつきつけてきた。
あのねぇ。
いくら俺が師匠好きだからってもんでいいからって、火を超えて胸をもむなんて。
「癒しの水! 癒しの水!! あっち、あちいい! 火傷するって」
「…………よくもまぁ、ちゅうちょ無くまっすぐ火の中に手を突っ込んで揉んだのじゃ」
俺は洞窟内でごろごろしてから何とか落ち着かせる。
「だって師匠から揉んでいいって」
「愛のない行為は嫌いじゃなかったのじゃ?」
「胸をもむのは愛関係ないですし」
「変な奴じゃの……本題に戻すのじゃ。その魔力の意思。戦う物により姿形を変えワラワが見た時は……まぁそれはいいじゃろ。で勝った時に褒美をくれるのじゃ」
「へぇ」
クウガも呪いがそれて解けたしいいのかな。
「あっ! もしかして俺がそれを倒せばクウガを治せます?」
「…………ほう勝てる気なのじゃ?」
「どうかな? 師匠と2人でなら」
「挑戦権は勝った者は2回目はないのじゃ」
じゃぁ俺1人か。
面倒だな。
弱点は属性魔法なんだけど……その弱点がころころ変わるからタイミングによって回復される。
「しかしまぁドアホウらしくていい判断じゃな。自分のためじゃなくてクウガのためになのじゃ。ワラワが話したのはドアホウが元の世界に戻る事も視野に入れた結果じゃ」
「はい?」
俺が元の世界?
「話を聞いてわかったのじゃが。転生となると戻っても行き場はなさそうじゃしの。昔ドアホウと同じ別世界の人間と知り合ったのじゃが、死んだか戻ったかなのじゃ」
「地球なんです?」
「ネリマって世界らしいのじゃ」
ネリマ……ねりま……。
練馬!?
ああ。それって『ネリマパラダイス』ってゲームでは? 『マナ・ワールド』の社長が若い時に作った同人ゲームがそんな名前だったようなきがする。
アクションゲームで『ネリマ』に迷い込んだ青年が鬼畜ステージ挑戦しグンマーに逃げだすまでの設定。
と言う事は、よくある基礎設定の使いまわしってやつなのか。
いくら俺でもこの会社のゲーム全部しってるわけじゃないしなぁ……。
「まっ俺はこの世界で生まれてこの世界で死ぬ。それだけですよ」
「これでワラワの疑問は解決したのじゃ。会った時はどうせすぐ死ぬ人間じゃしのう。って思っておったのじゃが中々死なないからのう」
「俺に惚れました?」
いい加減鍋の中を回すのにも疲れた。
鍋を横によけて座りなおした。
「並行世界のワラワ並みににはなのじゃ。さて明日が本番なのじゃ休むのじゃ」
え、それって。
もしかして、これってキスする流れです?
俺の中の天使と悪魔が手を組んでイケーイケーって叫んでる。
「いや、今じゃないでしょ」
俺が口に出すも誰の返事も帰ってこなかった。




