第274話 ボクから見たら2人ともイチャイチャしてるからね
師匠が居るはずの温泉宿に行く。
いくってもいつも同じ宿なので場所はわかる、ロビーに入ると温泉施設のほうから出てきた師匠が俺を見て足を止めた。
師匠の恰好は温泉街特融の浴衣である。
体のラインがはっきり出てお尻もそうなんだけど、目立つのはやっぱりお胸。
こぼれそうな2つのスイカもどきが浴衣からはみ出そう。ってか下着ぐらいつけてよね! ぷんぷん。
「なんじゃ。もう来たのじゃ? 早いな」
「師匠! 重そうですね持ちましょうか?」
師匠が黙って俺を見て立ち止る。
「おうおうおう。じゃぁ持ってもらうなのじゃ」
「まじで!?」
浴衣からこぼれそうな師匠のすいかもどきを下から持とうとすると咳払いが聞こえる。
「2人とも、周りの人が見てるからね。それにクロー兄さんもメル姉さんとイチャイチャしたいって言ってるけど、十分してるよ!?」
んなばかな。
俺の期待するイチャイチャとかなり違うんだけど!?
「なっ! ノラ!? 久しぶりじゃの。ドアホウ退けなのじゃ」
ほら、俺のイチャイチャ時間は『退け』と言われてすぐ終わる。
師匠が大きく手を広げると抱きついてこい。のポーズを取った。
なんと。
俺が深呼吸をしてハグをしようとした師匠を見た瞬間、目の前に杖が見えた。
冗談だって……ちょっとハグしようとしただけじゃん。
じゃぁ相手はノラか。
「え、いやメル姉さん恥ずかしいな」
「久しぶりの再会なのじゃ」
「俺が代わりにハグしたいけどノラ頼む」
俺に頼む。と言われてはノラもしぶしぶ了解しだす。
でもちょっと顔が嬉しそう。
「しょうがないな……メル姉さん! いくよ!?」
ノラが師匠に抱き着く。
師匠のほうもノラにハグをしてくるっと1回転してノラを床におろした。
「なんだが照れるね」
「それぐらいが丁度いいのじゃ。会うなりセクハラかましてくるよりよっぽど健全なのじゃ。暇であれば泊まるがよい、なに部屋代はワラワにまかせろなのじゃ」
よし、次は俺のばんだ。
師匠と眼が合うと、師匠はノラの手を引いて宿の奥に行く。
俺はそのまま両手を広げたまま宿のフロアに取り残された。
宿の女将さんが俺の前に立つとノラと俺の2人分の追加料金を請求された。
俺がはらうんかーい。
──
────
6人は泊まれる部屋に改めて集まる。
部屋にいるのは浴衣を着た俺とノラ。
後は先に宿に泊まってる師匠とセリーヌ、こちらも温泉使用で浴衣である。
ノラには先にセリーヌを紹介し、セリーヌも第3の眼を動かしてはノラに微笑みかけていた。
「すごいわ! セリーヌを見ても動じないだなんて」
「驚いてるよ? 本当に竜人様……」
「竜人じゃなくて竜の変化。と言う所かしら、セリーヌと呼んでねノラお姉ちゃん」
「じゃっ話を進めようか」
ノラが「全く話を進める衣服じゃないけど」ってつぶやいているがしょうがない。だって温泉宿だし温泉があるんだもん。
「まぁ車が壊れた事はさっき言ったとして。ナイの居場所。占いの結果、この街の地下にいると……でセリーヌ」
「あら、なにかしら?」
「ナイに渡した薬ってのは現在、原始の迷宮……いうなれば元魔王のダンジョンにあると占い結果が出てる」
「まぁ遠いわ」
「って事です師匠」
師匠は話を聞いて無言のままだ。
並行世界で知ったけど、実は向こうの師匠は迷宮前まで行ける。
何で行けるかは知らないけどクウガ達がもう何年もかけて飛空艇など騙し取って、サンとかに肉体関係をもってやっと行けたダンジョン。
多分だけどこっちの師匠もいける可能性がある。
まっ俺もその事は口に出さないけど。
「ん。まずはご苦労なのじゃ。探していたナイもこの町にいるという事であれば、後でいいじゃろ。休息なのじゃ」
「了解! って事でノラ温泉だ温泉」
「いいのかなぁ、急いでいるんだよね?」
「急がば回れだ」
ノラが「よくわからないけど」と、いうが温泉と聞いて顔が嬉しそう。
俺も嬉しい。
「じゃぁ師匠ちょっと入ってきます」
「ほう……温泉は一緒に入る。とか言ってこないのじゃ?」
「ちょっと疲れまましたし風呂ぐらいはゆっくり入りたいと、師匠すみませんね。また今度で」
「まるでワラワが悪い言い方じゃの」
師匠を置いて温泉に入る。
ゆっくりと長湯して出てくる頃には夕食だ。
温泉といえば温泉卵。
そのほかにも日本でよく見かけた料理が多いんだけど、本日の眼玉料理はカニ。
なんと1人3杯まで無料という太っ腹。
なのに俺が部屋に戻るとセリーヌとノラが居ない。
「あれ!? 2人は?」
「ああ、地下迷宮にいったのじゃ。ナイの様子を見てくると言ってはノラも一緒についていったのじゃ。あの2人なら大丈夫じゃろ。ちなみに夕飯は2人は先に食べおわってるのじゃ」
「あっそうなんです?」
師匠のほうは窓辺に座って食事をした形跡がない。
俺を待っていてくれたのだろう。
「待っていてくれたんですか?」
「なに、小腹が減ってなかっただけじゃ。さて食べるかの」
タラバカニ。
に、近いよくわからないカニ。
大きくてハサミで切り込みをいれては専用のスプーンで身をほじくりだす。
俺も師匠も無言だ。
別に食卓が冷え切ってるわけじゃなくてカニだから無言なのだ。
あらかた食べ終わる頃に師匠がカニミソをつつきながら話しかけてくる。
「定員はワラワを含めて1名じゃな」
「なるほど……じゃぁセリーヌですかね?」
「本気で言ってるなら行かないのじゃ。というかなのじゃ……やっぱり知っていたのじゃ?」
「一応確認すると迷宮前のワープっすよね」
師匠が「そうじゃ」というので正解だろう。
「これで俺の《《師匠ポイントが1ポイント上がった》》かな」
「逆にマイナス1ポイントじゃな。迷宮前にワラワがいける事知ってるのなら知ってると言っておけなのじゃ。大方並行世界のワラワから聞いたんじゃろ」
「ええ。まぁその通りで」
俺もカニミソを食べる。
俺の食べ方はカニ甲羅に酒をいれてはミソ酒というおすすめの食べ方。
俺自身は日本の記憶あるのでこの食べ方はしっていたが、ノラなどは引いていた。
「どうしましょうねぇ……」
「どうするもこうするもないじゃろ……行くしか」
「面倒ですよね」
「面倒じゃの」
俺と師匠の意見が一致する。
「わんちゃんクウガをこのまま封印して次世代にかけません?」
「と、言うとなのじゃ?」
俺が師匠に唱える案は《《クウガ封印案》》。
俺が騒ぎの原因と思われるが、その原因はほとんどがクウガだ。
このクウガを封印する事で俺も巻き込まれなくなるしクウガだってあっちこっちで子供を作る事もない。
クウガの事はクウガの子供が成人したらまかせよう案。
幸いな事にクウガの子供は何人もいる、1人いけばいいかな。
「一理あるのじゃ」
「ですよね」
「で、アリシアはどう説得するのじゃ?」
おっと、難敵が現れた。
「う………………わんちゃん。アリシアはクウガの幼馴染だけなので怒らな……やっぱ怒るか」
「怒るじゃろうな」
クウガが老人になっただけで。激怒したんだ。
俺と師匠が頑張ったけど治りなませんでした。薬は迷宮にあるからクウガの子供が成人したら取りに行ってね。って言ったら絶縁されそう。
数少ない友人だし絶縁はされたくない。
「いくしかないか……迷宮ってすぐいけるんですか?」
「すぐには無理なのじゃ」
「じゃ少し休憩してからいきますか……あっ師匠カニのお替りいります?」
「ん」
師匠が黙ってからになった皿を出してきたので俺はカニを取りに行った。




