第272話 もっとも適格な考えをするノラ
しばらく見ない間にちょっとヤンデレが入ったフレンダ。
その占い結果で、俺達が探しているナイはイフの町にいる。と言う事がわかった。
「クロー兄さん。少しいいかな?」
俺の横で甘いケーキを食べ終わったノラが俺に何かを聞きたいらしい。
兄代わりの俺はノラの言いたい事はわかる。
俺の皿の上にはケーキが2個あった。
1個は食べてしまったがもう1個欲しいのだろう、うん……育ち下がりだもんな。
「言いたい事はわかる」
「え。さすがクロー兄さん。じゃぁボクは黙っているよ」
食べてないほうのケーキをノラのお皿へ移す。
「……クロー兄さん?」
「大丈夫だって、1個食べたぐらいじゃ太らないから」
「あっフレンダの分も食べますか?」
フレンダも食べてないほうのケーキをノラのお皿に移した。
ノラは下を向いて《《震えるほど感動》》してる。
「じゃ、フレンダありがとうな」
「どういたしまて、私が今暮らせていけるのは全部クロウベルさんのおかけなので」
「さて、それを食べたら帰るかノラ。…………ノラ?」
ノラはケーキにフォークをさすと4口で2個とも食べた。
その勢いで飲み物で口の入ったケーキを流し込むと俺に指を差してくる。
「ボクはケーキが欲しいって言ってないし、そんなにケーキ欲しそうにしていたかな! ねぇクロー兄さん!!」
「ち、違ったのか!? でも食べ……」
「食べたよ! 美味しそうだったからね。フレンダさんもありがとうございます!!」
「どうしまして、フランシーヌさんが持ってきてくれたケーキなの」
ああ、あの金髪ドリル髪の貴族の女性か。
そういえばあっちでは見かけたのに、こっちでは今日はまだ会ってない。
別に会いたいわけじゃないけど。
ノラは口の周りのクリームをハンカチでぬぐうと俺を見ては口を開く。
「結局はクウガさんのために若返りの薬を探してるんでしょ? ナイさんの場所を探すよりも、そのアイテムの場所を占ってもらったほういい。と思ったんだよ……クロー兄さんいつも騒動に巻き込まれるから」
「なるほど」
さすがはノラだ。
確かにナイがアイテムを持っているとは限らない。
だったらアイテムの場所を先に知っておくって手もあるわけだ。
「と、言う事でフレンダお願いできる?」
「その考えは思いつきませんでした! では水晶で占います」
「いやぁさすがはノラだ天才か。年々綺麗になっていくし美人だし、これで彼氏ができないのが不思議なぐら──」
「クロウにいさん。フレンダさんがやりにくそうなので黙っていたほうがいいよ」
「あい」
名誉挽回。
いや、汚名返上のためにノラをほめたたえるつもりだったのに。
「おっ」
思わず小さい声がでた部屋の中の魔力が変動していく。
ノラも気づいたのだろう部屋の中をきょろきょろとしては最後にフレンダを見た。
フレンダの感情が一気になくなると水晶球を見ては汗をかいている。
最後に水晶球にヒビが入るとパリンと2つに割れたのだ。
「きゃっ」
俺は割れる寸前にとっさにフレンダの手でを引っ張り盾になる。
「っと、大丈夫か?」
「え。はい…………あの。大きい手ですね」
フレンダは俺の手をさすっては言葉が少ない。
「はいはいはいはいはい! フレンダさん怪我がないか確認するからクロー兄さんから離れて! 所でクロー兄さん!」
フレンダを俺からはがし手足の確認をしながら話しかけてくる。
声は優しいんだけど、なんだけどちょっと怖い。
「な、なに?」
「メル姉さんとは最近どうなの? 子供出来た?」
「いやまだ、最近では師匠の子作りの許可が出てるんだけど事務的で」
「…………まったく2人とも何してるの!?」
むしろ何もしてない。
「まぁいいや。そういう事だからフレンダさん。…………最後に何か見えた?」
ノラがなんでか俺じゃなくてフレンダに確認するように話す。
「え、あっ……私は別にクロウベルさんの事はその……いえ、今は占いの結果でしたね。猛吹雪の中に大きな闇が見えました、闇は小さいのですが闇がこちらを見ると水晶球が割れてしまって」
とても嫌な予感がする。
「吹雪……人が住めない。と、言われた北の大地の可能性が高いのかな。南のほうにもまだまだ人が住めるんだしわざわざそんな場所に行く事もないんだけど、クロー兄さん何かわかるかな?」
「原始の洞窟かもしれん」
「元魔王が住んでいたって所?」
さすがはノラだ。よく勉強してる。
およそ700年前に合ったといわれる魔族戦争。その時の魔王と言うのがそこにいた。って過去に行った時にアーカスが教えてくれた。
で。闇というのは『マナ・ワールド』のボスでクウガが最近倒した。と聞いた。
元々の正体は思念体というか。
意思を持った魔力と言うかそんな感じ。開発元がいいボスの案でなかったんだろうな。って事で何も疑問には思わなかった。
そもそも別にクエストしなくても一生釣りして終わりなども出来るしこのゲーム。
本当は主人公だって自分のアバターを作れるんじゃない? と噂されていたほどだ。
開発費が足りなかったのだろう、結局クウガがメインで進むゲームになった。
それがまた微妙にしか売れなかった原因だろう。
「クロー兄さんってば!」
「うい。え? 何?」
「何? …………じゃないよ。クロー兄さん考え事すると周りの音聞いてない時あるよね。戦いのときに危ないから直したほうがいいよ」
「別に戦わないから大丈夫だ。で、話って?」
「だから場所!」
怒られた。
「ああ。やっぱり一度イフにいってナイに聞いてみるわ。俺の感が当たっていればそこだし、直行するには遠すぎる。師匠にも相談したいし改めてフレンダありがとう」
「こちらこそ、今度はもう少し先まで占っておきますね」
「いや、怖いからやめて」
フレンダの場合未来を見る。というより未来を創るって感じがするから怖いのだ。ゲーム内でもその道案内は外れた事がないからな。
「クロウベルさんがそういうのなら」
「所でそれって俺以外も占える? 例えばノラの彼氏こおおおおおおおお!? いったあああああああ!?」
後頭部に激痛が。
まるで、ケーキをのせた銀色のトレイで殴られた感じ。
それも平面じゃなくてトレイの横で殴られたような痛み。
頭を押さえて後ろを向くとノラが腰に手を当てては俺を見下ろしている。
「ボクは頼んでない。フレンダさんの占いを信じないわけじゃなくて、信じてるからこそ辞めて。占ってもらった結果誰もいないならまだしも好みじゃない男性が横にいたらボクは明日にでも死ぬからね!」
「ご、ごめん」
「そもそもクロー兄さんだってメル姉さんとの未来占ってもらって隣にいなかったら凹むでしょ?」
それはそう。
別の男なんていたらもうネトラレプレイだ。
師匠がそれでいいっていう男なら俺は影で見てるだけの生活になる。
「あっそれだったら大丈夫です」
フレンダの場違いな明るい声に俺もノラも言葉を失う。
大丈夫? え、大丈夫って何?
占いしてたの!?
「俺がずっと師匠の横に……? それは嬉しんだけど……え?」
「あっそういう意味ではなくて、占ったんですけど見えなかったんです」
俺の代わりにノラが「見えない?」と質問する。
「はい! クウガさんもそうだったんですけど。何人かの人は本当に見えなくて今の水晶じゃないですけど何か邪魔されるんですよね……クロウベルさんもメルさんもあまりに先の事になると見えませんでした」
「そ、そう……あの勝手に占うのは辞めたほうがいいよ」
「はい!」
返事はいいんだ返事は。




