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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第271話 ノラはかわいい

 スータンの町。

 もう何度も来てるのでフレンダの家なんて目をつぶってもいける。

 そして転んだ。



「無理だったよ」

「…………何してるのかな……クー兄さん」



 頭上から聞こえる懐かしい声に思わず顔を上げた。

 髪を長くしたノラが俺をしゃがんでのぞき込んでいる。



「あれ。ノラ髪伸ばした?」

「…………別れた時から変わってないよ? 別の女性と間違えてない?」



 ああ、髪が短いのは並行世界の義賊ノラだったわ。

 ノラに手を差し出されて立ち上がる。



「クロー兄さんにとってボクはそれぐらいだって事だよね。それよりもメル姉さんは?」

「今頃はイフの町じゃないかな」

「そんな近くにいるんだからフユーンの町に顔見世に来てよ」

「ごめんって」

「別に怒ってないけどさ……」



 そういうノラは少し不機嫌だ。

 にしてもこっちのノラは久々に会った。



「ノラこそフユーンの町じゃなくてなんでここに?」

「商行馬車の護衛依頼。それが終わった所で帰りもフユーン行のクエストが無いか回っていた所」

「もしかして、そんなにお金に困ってるのか……」



 しばらく会わない間にノラが貧乏になっている。



「普通に暮らすだけならあるよ!」

「じゃぁなんで危険な冒険者を?」

「何でってランク上げるためにだけど」

「死ぬ確率も高くなるのに!? え、もしかしてあの馬鹿兄貴から仕事紹介されなくてド貧乏になった? 馬鹿兄貴の夜の誘い断わったから干されたとか!?」



 ありうる。

 スタン家当主で俺の兄、スゴウベル。女好きでノラがいい女だから誘ったがノラがそれを断ると、仕事も紹介されなくしまいには町にいられないようにしたに違いない。


 わが兄ながら何て言う事だ。

 お互いに大人になったというのに、こういう場合はどうしたらいいんだろう。

 殴り合い? 当主と? スタン家を出た俺にそんな権利があるのか。



「クロー兄さんの心配は前々からわかるけど……ボクから言わせれば冒険者登録もしてないクロー兄さんのほうが心配だからね。命大事にって言っている割に危ない事ばっかり首突っ込んで。あとスゴウベル当主はよくしてくれるよ」

「あっそうなの?」

「そう。クロー兄さんの考えているような変な事もない。そのスゴウベル当主様なんだけど、今度結婚するらしいよ」

「へえーえ!? はっ!? どこの誰と!?」

「誰って、話聞いてないの?」



 聞いても何も実質勘当されてるし、そもそも2年近く? 実家に帰ってない。



「まさかアンジュとか?」

「違うよ……ギルドマスターの娘さんで、スターシャって人。アンジュさんは最近スタン家を出ていったよ、サンドベルさんの所に行くとか」

「まじで!?」



 情報量が多い。

 スターシャか、一応知ってはいる。

 男勝りでこれだ! って決めたらトコトン突っ込んでくる女性。

 

 あとアンジュもやっと出ていったか。

 正直王都に住んでる父の所に早くいけばいいのにってスゴウベルと何度も話していた。



「占い師の所に行く予定なんだけど、暇なら来るか?」

「暇じゃないけど行くよ。久しぶりに会ったんだし」



 暇じゃなければ別に合わせなくてもいいのに。と、一瞬口を開こうとして黙った。

 文句を言うがノラが機嫌がいいみたいだし、俺が変な事を言って機嫌を悪くさせても仕方がないし。


 道を歩きながら俺がこの街に来た意味を話す。

 主にクウガが老人になったのと、老人になったクウガがショック死しないように魔石の棺に封印してる事。

 師匠とセリーヌは温泉にいって、俺が車を運転したいから別行動。

 そして車が破壊されて飛空艇で送ってもらったが、その飛空艇から落とされた事だ。



「…………クロー兄さんなんで生きてるの?」

「…………なんでだろうな。かなり昔に同じセリフを誰かに言われた事あるよ」

「命を大事にっていうクロー兄さんが一番危ないんだから」

「俺はもっとひっそりと師匠とイチャイチャしながら暮らしてるはずなんだけど」



 本当になんでこうなったのか。



「ほとんどの原因はクウガなんだけどな」

「クウガさん?」



 思い返せば今回の事もそうだ。



「実質あいつが9割絡んでいる」

「ふーん……」

「あっもしかしてクウガの事好きだったか?」

「クロー兄さん。前も言ったけどクウガさんの事は何とも思ってないよ?」



 上機嫌だったノラが不機嫌な顔になる。

 おっと地雷を踏んだか。



「すまん。そのノラもいい人が見つかるといいな」

「…………そうだね」



 ノラは俺を黙ってにらんで来る。

 何もそこまで怒らなくても。

 しばらくにらまれた後思いっきりため息をつかれた。



「はぁ……ほらクロー兄さんフレンサさんの屋敷が見えたよ」

「お、おう。そうだね。その機嫌直して、後で美味しいのおごるから」

「別に機嫌悪いわけじゃないけど、クロー兄さんありがとう」

「どういたしまして」



 《《妹的》》なノラには是非に幸せになってほしい。

 そもそもノラの運命を変えたのは俺のせいでもある。本当ならノラだってクウガファミリーの中にいるはずのに、クウガの事が好きじゃないって言うんだ。


 ノラの幸せは俺の幸せでもある。

 それにノラが不幸になったら、ノラにとってのお母さん……じゃねえ! 姉代わりの師匠も悲しむ。



 フレンダの屋敷は静まり返っていて、ドアノッカーを鳴らすとパタパタと足音が響いてきた。

 ガチャっと音を立てて鍵が開くと白い肌のフレンダが顔をひょこっと出した。



「いらっしゃいませ」

「久しぶり」

「そ……そうですかね? ノラさんもお久しぶりです。どうぞこちらに」



 要件も言わないのに屋敷にいれてくれる。

 いつもの応接室に案内されるとすでにケーキと氷入り水バケツに飲み物のビンが冷やされていた。



「誰か来客?」

「いえ、もうそろそろ来るかと思ってご用意しました」

「さすが未来師」

「最近は占いも辞めたんですが」

「そうなの!?」

「はい。ギルドマスターのカイおじさんの勧めで、私の占いが外れる。という噂を流してもらいました」



 あー…………。



「それはいい考えだな」

「クー兄さんそれって」

「ああ、当たりすぎていたんだよ。占いというかフレンダの占いはすごい分、いい結果だけとは限らない。この辺で撤退しないとってやつだろ」

「はい! さすがはクロウベルさんです。見たままを伝えるんですが結果が変わらない……いえ、占いを知ってしまったからこそ悪い結果になる場合もありまして」

「へぇ大変なんだね」



 ノラがフレンダにねぎらいの言葉を言う。

 俺だってフレンダから『クロウベルさん死にますね』って言われた日には寝込む。

 一切家を出ないで過ごしてみても、家を出ない事で死ぬかもしれないし。



「その休業中にすまないんだけど。古竜ナイの居場所わかる?」

「はい。イフの地下遺跡にいます」



 即答で帰ってきた。

 なんだったら水晶玉も見ていないし、カードだって触ってない。

 触っているのはケーキだけだ。



「えっと?」

「はい! クロウベルさんがこの町にきそうな感がしたので何を占ってほしいが先に占いました。その答えです」

「そ、そう……」



 ノラが小さい声で『笑顔が怖い』って喋ったのが聞こえた。


 



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