第268話 クロウベル。クウガの偉大さを知る。
その中心で師匠は踊り子のように両手をクロスする様に上げた。
エロイ!
じゃなくて、エモい。
………………どっちも同じか?
とにかく師匠の周りに魔力が集まると空高く上がる、その魔力は雷となって城に落ちた。
師匠の事を知らない兵士組は腰を抜かしたり、ちびったりしてる。
逆に俺や師匠を知ってる兵士組はひきつりながらも遠巻きに見ていた。
先ほど勝手に逃げてくれ。とアドバイスくれた兵士に軽く手で挨拶し白煙の中、素早く城外へと出た。
城外は先ほどの爆発をみに野次馬がすごく、すぐに人に紛れる事に成功、そのまま酒場『竜の尻尾』へと逃げ込んだ。
何か言いたそうな店主をよそにいつもの個室。
大きい声では外に声が漏れる。というので普通のトーンでしゃべる事にする。
「で、俺達は今では大脱走した極悪人になるんですけど、これからどうします?」
「どうしますのじゃ。と言っても不本意ながらクウガを助けないとだめじゃろ。アリシアが悲しむのじゃ」
「まぁキレてましたもんね」
「あれぐらいで怒るだなんて今の聖女は気が短いのね」
十分気は長いと思うよ。
むしろ、激おこで塔を破壊した師匠やセリーヌのほうが短いからね。
「ナイを探せばいいんですよね」
「手はあるのじゃ?」
「まぁいつもの攻略サイト……じゃない占い師に頼ろうかと」
困ったら占いだ。
未来が見えた占い師マリンダの弟子ミリンダ。
並行正解でもお世話になった。
「遠いのじゃ……」
「王国ですもんね……でもほかにあては無いし」
俺と師匠が唸っていると、個室の扉が突然に開く。
別に料理の追加も頼んでないのに誰だ! と思ったらアリシアとミーティアの2人組である。
「うわ! 本当にいた……王国に帰ったと思ってたのに! そんなにミーティアちゃんに会いたかったのかなぁー? にゃ!? い、痛い無言でチョップは痛いからやめ、辞めて。辞めてくださいっ」
「クロウ君?」
声のトーンが落ちたアリシアの圧に負けて、ミーティアをからかうのをやめる。
「アリシアなんでここに?」
「なんでも何もないよ!? 城に緊急に呼び出されて、真っ黒になった皇子様を治し、次に事情をしってそうな城から消えた大脱走した3人組の足跡を追ってきただけです!」
声は優しいのに怒ってる。
「次から次にクロウ君って止まる事できないのかな?」
「俺が止まるのは師匠の横だけだから」
「冗談はいいから」
「…………ごめん」
素直に謝る。
騒ぎの張本人である師匠がアリシア達に声をかけた。
「で、アリシアとミーティアの2人はワラワを捕まえに来たのじゃ? そうであれば捕まるわけにはいかないのじゃ。ワラワは王国にも帝国にも仕える事じゃしないのじゃ」
「先生わかってます。これを」
アリシアは師匠に鍵を渡した。
「おお! 車の鍵じゃん!?」
「聖騎士隊のフォックさんって人がクロウ君を探していて……今回の騒ぎで偶然出会って鍵を預かってきたの、もしかしたら必要になるだろうかと。って」
なんて使えるんだフォック君。
全然忘れていたけど、俺が帝国側に連れされて車で追っていたんだっけ。
「ほう。どこぞのドアホウよりも使えるやつじゃの」
どこぞのドアホウとは俺の事で、まったく伏せられてない。
「どこぞの魔女よりも気が利くっすよね」
「ほう?」
俺と師匠が軽口を叩きあう。
とにかくこれで足は出来た。
現状の整理だ。
第1優先はクウガを元に戻す事。
「第2優先はどうしましょう? 俺と師匠の結婚式にします? それとも帝国を滅ぼすほうがさきっすかね」
「…………じゃぁ結婚式じゃな」
は?
「うえええええ!? ミーティアちゃん凄い事聞いたかも!?」
「うるさっ! 狭い部屋で大きな声だすな!」
「だってだって」
「先生……おめでとうございます?」
「師匠! え。でもあれ順番が」
「ドアホウよ、ワラワの気が変わるまで後30秒じゃ。29、28、27──」
カウントダウンされていく数字。
俺の頭で情報の処理が出来ないと師匠の声が0と喋った。
「ふむ。からかうくせに勇気はないなのじゃ。まだまだ先じゃの」
「驚いて思考が止まっただけ……」
「ミーティアにアリシアよ。ドアホウはこういうやつじゃ」
どういう事!?
あれだけ騒いでいたミーティアも、俺を心配してくれていたアリシアもがっがり顔になっている。
「うん……そのクロウ君らしいよ?」
「もったいないなぁ、これじゃメルさんは他の男に取られる! と、ミーティアちゃんは思うのだ」
「あら、新しい子を探せばいいのよ、セリーヌの紹介いるかしら? マーメイド族や淫夢の精霊、あまりお勧め出来ないけど天使族もいるわよ」
「ドアホウ良かったななのじゃ、ワラワ以外にも相手はできそうじゃ」
一瞬迷ったが俺は師匠の腰に抱き着き上を見る。
「俺は師匠がいいの!」
他の女性達も気になるが浮気はよくない浮気は。
「口だけじゃのう……」
「口だけだよね」
「口だけの男ってもてないよ? クウ兄ちゃんなんて本気になって実行するんだから、あれはあれで困るけどさ」
「セリーヌよくわからないけど、クロウお兄ちゃん褒めれてるのね」
「絶対違うから」
俺が一体何をしたって言うんだ。
軽い師匠とのスキンシップなはずなのに、ダメだしがすごい。
「ワラワも一夜ぐらいなら供に凄していいのじゃ。と伝えたんじゃがの」
「うえええええええええ!?」
「だからミーティアうるさいって!?」
「だ、だって。女性から誘ってるのに、うえっほ。げっほげほゲホゲホぜーぜー!」
ミーティアが胸を押さて咳込み始めた。
咳込みが治る魔法なんてないのでアリシアが一生懸命に背中をさすってあげてる。
「も、もったいないよ!?」
「俺は『ぐらい』が嫌なの! 嬉しくないわけじゃないけど……どうせなら事務的なのは色々よ落ち込む」
「でもクロウ君は先生が別な人を好きになってもそれを見守るんだよね?」
アリシアは俺に聞いて来る。
「あれ。その話したっけ? まぁ師匠が幸せなら俺が出る幕もないかなって、でもその男が偶然死んだり、師匠が男遊びたい気分になったら俺の出番あると思うし」
「うっわ前から思っていたけどきも」
「ミーティアちゃん。クロウ君だし、しょうがないよ」
「まぁドアホウじゃしな」
俺は何度も拍手を連打する。
その行動に周りの師匠たちの言葉が止まった。
「俺への攻撃はその辺で、まずはクウガの事!」
これもあれも全部クウガのせいだ。




