第266話 聖女にしこたま怒られる
「どうしていつもクウガ君が不幸にになるのかな? ハーレムの呪いがやっと終わったんだよ? 以前なんて死んでいたよね? それもこれもクロウ君が関係してたって聞いたけど?」
場所は教会にある秘密の部屋。
秘密の部屋っても要は防音に優れた小さい個室であるだけ、そこに俺達3人と魔石に包まれた老クウガ。それを見ては激おこのアリシアが部屋にいる状態だ。
「あの時だって死んだのじゃなくて瀕死だっけかな。いや死んだんだっけ……? 別に俺のせいじゃないし」
「言い訳! それに戻せないってどういう事!?」
「それは俺に怒られても。なぁセリーヌ」
「セリーヌも怒られている意味わからないわ、飲んだのは彼よ? それも勝手に」
セリーヌから見たらそうだろう。
俺からだって止める間もなく薬を飲んだクウガが悪い。と思ってる。
思っているがアリシアの怒りももっともだ。
「うん。セリーヌちゃんは悪くないよ。クウガ君を止めなったクロウ君が悪い!」
「俺!? なんだったら一番の被害者だよ?」
「一番の加害者だとおもうな。先生クウガ君は治るんですよね?」
師匠はアリシアの言葉を聞いては返事をしない。
師匠は結構堅実的な所もあって、無理な時は発言をしない時がある。
もちろん考え中で答えない場合もあるけど……どちらしにても、今すぐに治る。と、言う事は言わない。
その性格を知っているのだろうアリシアは今度はセリーヌのほうを見た。
「セリーヌちゃんってナイ君と同じ竜族なんよね? もちろん治せるんですよね?」
「どうしようかなぁ……でもセリーヌ悪くないのに怒られたわ。セリーヌは別に戻さなくてもいいと思うのよ? 死ぬのが数十年早まっただけよ? それともこの子の事が好きなの?」
おおぶっこんできた。
原作ゲームでは正ヒロインなのに、実際は聖女になった現在でも幼馴染の地位『だけ』のアリシアにクウガの事が好きなのか聞いてきた。
「それとも、こっちのクロウお兄ちゃんのほうが好きなの?」
「ちょ!? セリーヌ!? ぶっこみすぎだろ」
「アリシアよ……そ、そうじゃったのか……吹っ切れたと思っていたのじゃが」
師匠が初めて知った衝撃。と言わんばかりに狼狽する。
「どっちも違います!! 幼馴染としてです」
アリシアがセリーヌに怒るがセリーヌのほうは別に普通の気配だ。
「ふふ冗談よ。セリーヌだって、かわいそうと思うから魔石の棺に入れてあげたのよ? お爺さんになった現実を受け入れなくて発狂する人間を何人も見たわ」
うわぁセリーヌが楽しそう。
アリシアのほうは、おう凄い! 話が進まなくて怒りのオーラが見える。
見えるが何とか抑え込もうとひきつる笑顔。
このままでは姉弟子のアリシアVSセリーヌになるかもしれん。
それとも、一方的な戦いになり、もっとひどい事になりそうなので間に入るか。
「よくやったセリーヌ! そしてアリシアもそのなっちゃったんだからしょうがない」
「クロウ君!! 話の邪魔を──」
「っと、怒らないで……専門家じゃないから絶対はないだろうけど老化の薬って秘薬だろ? 魔力が関係していれば対になるものがあると思うだ。光に対して闇、水に対して火。もしくは土とか。セリーヌがわざわざ魔石の棺を出したって事はさっき言っていたようにクウガが発狂しないように。って事だから解決方法はあると思う。違う?」
「うわぁ……すごいわ! メルママの事以外なら頭がいいのね!!」
褒められたのか?
「で、若返りの薬は?」
「ナイお兄ちゃんが持ってるわ」
「ナイ君が!? ありがとうセリーヌちゃん。すぐに取ってきます」
アリシアが立ち上がったので『待った』をかける。
「ナイって古城にいなかったんじゃない?」
「クロウ君……こんな時にダジャレかな?」
「いや待って、ダジャレじゃないから!」
「そうなの!?」
「そうだよ! アリシアの中で俺はこんな時にダジャレを言う人間に見えるか?」
「うん」
うわぁ、はっきり頷いた。
いや、きっと聞き間違いと思う。
「ごめん。返事聞こえなかった」
「ハッキリ言うね。クロウ君はどんな辛い時でも冗談を言う人間と思っているよ」
言葉だけ聞くと俺はド最低の人間じゃん。
なんだろう。
涙が出ちゃう、だって男の子だもん。
「あっ! クロウ君その聞いて!? それが悪いって言っているわけじゃないの。クロウ君らしくて好きって意味で……」
「へあっ!? そ、そうか。いや良かった、拒絶されてるのかと思って」
突然に師匠が手を叩く。
俺を含む3人が一斉に師匠を見た。
「あっ師匠。会話に入れずに寂しかったです?」
「ドアホウよ……そういう所じゃぞ」
「俺の長所っすよね。アリシアにも褒められたし」
「セリーヌよナイを見つければいいんじゃな?」
うわ。師匠に露骨に無視された。
「セリーヌもナイお兄ちゃんもこの『姿に』なるのに、若返りの薬を使っているの。その余りを持っていると思うんだけど」
八方ふさがりか?
「はっはっはっは」
笑い声とともに部屋の扉があく。
聖女の権限でこの部屋には誰も入ってはいけない。という通達をしてるのに男が部屋に入ってきた。
「お!? 聖女アリシアに……お前は……なんでこんな場所にいる? 妹のサンと王国に行ったのではなかったのか?」
「…………皇子かよ」
アレキ・パール。
帝都の第1皇子でありバリバリの武力派。
皇子といっても30代付近でぼさっとした金髪は無造作ヘアーだ。
妹のサンと色々と関係を持ったクウガの事を義弟と呼んではあちこち連れまわしてる。と話は聞いている。
「なに。この部屋に義弟がいると聞いてな。聖女から誰も入るな。と命令を受けていたらしいがここは帝都だ。この俺のほうが偉い。その俺を『皇子』と呼び捨てするんだ、相変わらず『無礼』な奴だ。はっはっは」
何が嬉しいのかさっぱりだ。
「さて……義弟はどこだ」
「ええっと…………」
アリシアが言葉に詰まって師匠を見た。
「あー……セリーヌよ説明してやるのじゃ」
師匠はセリーヌを見る。
「あら、セリーヌは部外者よ? ここはクロウお兄ちゃんね」
セリーヌは俺を見てきた。
その目線を追っていたアレキ皇子も俺を見る。
「で。どこだ? またどこかの女と遊んでいるのか? 隠すのはよせ」
また。って所がクウガらしい。
クウガに代わって弁明だけしておくと、クウガは遊びじゃなくていつも本気との事。
「クウガなら床に転がってるよ」
「床? おお! そういえばなんだ大きな魔石みたいのが置いてあるな……大きさから魔石ではないと思うが、人……? なんだこの老人は」
「クウガだよ」
俺はアレキに老人の名前を教えてやる。
「ふ。俺が探しているのは義弟のクウガだ。どこの世界に同名の老人を探すというのか……で、教会に行く。と報告を受けているのだ義弟クウガはどこだ」
「だからそれがクウガ」
「ふむ……お前はとことん俺を馬鹿にしたいらしい。少しばかり腕があるからと言って生意気な態度許してやってはいるが」
お? アレキが怒ってきた?
どうするか。
素直に謝るか。反攻するか。
「よし! 面白そうだから反──」
「クロウ君待って!! どうして話を変な方向にもって行こうとするのかな? 先生も止めて!」
「ぬお!? わ、ワラワなのじゃ?」
「そうですよ! もう……アレキ様。聖女アリシアがこの老人がクウガだって事をご説明します」




