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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第254話 いやあの……アリシアさん狙ってます……?

 師匠の家に帰ってきた俺と師匠、アリシアの3人は一息ついた後に椅子に座る。

 聖都で買ってきたお菓子を並べながらの作戦会議だ。



「で。お主の言う秘策とはなんじゃのじゃ?」

「まぁまぁまぁ結論が早いですって師匠」

「お主を弟子なんて認めた事ないのじゃが……事と場合によっては呼んでもいいじゃろ。あと尻をもんだバツで後で唇を一晩縫い付ける」

「こわっ!?」



 思わず悲鳴が出る。

 なんなんだこの魔女は、尻をもんだぐらいで……。



「ワラワも尻をもんだぐらいで唇を縫いたくはないのじゃが」

「じゃぁ縫わなくても」

「お主にもう『もみません』と約束したのじゃ。それを破ったからには……」



 あっ……そういえばしたような気もする。

 ここを乗り切らないと、この師匠は絶対に俺の唇を縫ってくる。



「でも聞いてください」

「何をじゃ?」

「師匠にとっては数時間でも、俺はもう3ヶ月以上の冒険をしたんです! 毎日毎日師匠の事を思って思って」

「どうでもいいのじゃが、その手は辞めろなのじゃ」



 ペンライトを上下に動かすジェスチャーを混ぜたら怒られた。



「うい。では話の続きを……その数ヶ月分の時差があるというか、ここではない時に飛ばされまして。この時間軸に戻るよりもアリシアの魔力を一番に考えたのです!」

「クロウ君!!」



 アリシアが感動したのか拍手をしてくれる。

 こっちの世界でもアリシアは俺の味方をしてくれて嬉しい……ってか襲った相手だろうに拍手をする所が聖人というか、頭のネジが飛んでるというか。



「クロウ君?」



 うお、なぜか突然感情を出さない真顔になって俺を見てくる。



「……アリシア、拍手ありがとう。で!! そんな俺に師匠は唇を縫う。など……《《あまりにも、あまりにも、いや。あまりにも!》》 ひどいと思います」



 師匠が胸の下に腕を入れて考え始めた。

 よし、もうすぐだ。



「しかしじゃなぁ……」

「クロウ君は痛いのがいやなんだよね? 安心してクロウ君。痛くないように魔法かけるから」

「いやいや、アリシア今魔法使えないんだよね!?」

「あっ……ええっとじゃぁ薬草を飲んでからだね」



 そういう事でもない。

 痛い痛くないに限らず、唇は縫われたくない。



「それに師匠が……いやアリシアの場合は気を付けるけどさ。縫われてるときに舐めるかも、その指をねっとりと」



 眼を閉じて考えていた師匠の眉がびくっと動いた。



「………………よかろうなのじゃ」

「え! 舐めて舐めましてもいいの!?」

「舐められてたまるかっ!! ワラワも別に口を縫いたいわけじゃないからの。次は無いと思えなのじゃ」

「あざっす」



 アリシアのほうを見るとテーブルにいつの間にか裁縫セットを用意してあって、ぶっとい針に糸を通してる所だった。



「あっ、お仕置きが無いならしまうね」

「閉まって……」



 テーブルが少し広くなった所で本題に行きたい。



「師匠が話を脱線させているので本筋いいです?」

「このクソボケ……」

「師匠心の声がもれてます」

「漏らしてるんじゃ」

「…………オムツいります?」



 師匠が黙って杖を出すと先端が光り輝く。



「まったまったまった! それは洒落になれない!」

「本題」



 めっちゃ切れてるやん。



「まぁこれです」



 俺は過去から持ってきた『原始の種』をテーブルに置く。ついでにこの時代で朽ちてない元聖王が栽培していた『原始の花』からでた球根らしきのも持ってきた。



「ほう……さすがはワラワの弟子じゃ」



 一発で弟子認定された。

 正解はこれでよかったらしい。



「先生、これは何ですか? 種みたいですけど」

「うむ『原始の種』と言ってなのじゃ、星の誕生の際に魔力の元となった実など、いろいろ噂されている種。絶滅したかと思っておったのじゃが……これを食べれば種の中に残っている原始の魔力が体中に広がるじゃろ、3ヶ月もすれば依然と同じぐらいの魔力に安定するはずじゃ」

「そんな凄いのを」

「どこにあったのじゃ?」



 さっき説明したのに。



「だからここではない時間軸に……もしかして嘘と思ってました!?」

「当り前じゃろ!!」



 そんな、師匠だけは信じていたのに……。

 おれは師匠を見ては、深いため息をついてみる。

 やれやれ、この師匠は弟子の事をわかってない。風に。



「朝に別れたやつが夕方に過去に行ってましたって誰が信じるんじゃ誰がなのじゃ!!」

「それもそうか。まぁ不本意とはいえ別の時間に飛ばされた俺はこうして解決策を持ってきたわけですよ」

「悪かったのじゃ! こっちは解決策がなくてなのじゃ!」



 おこりんぼうの師匠である。



「たく……アリシア。何笑っておるのじゃ」

「先生の以外な表情が見れて楽しいです」

「ふん。まぁこ奴が持ってきた種。見た所本物のようじゃ出来れば一口で一気に食べるのがいいのじゃが」



 無理だろ。

 種ってもちょっとしたジャガイモぐらいの大きさはある。



「がんばります!」

「窒息するじゃろうに。効果は100とは言えないのじゃが3口で食べるのじゃ」

「その前に洗ってきてもいいですか?」

「もちろんなのじゃ、よく洗えなのじゃ。なんじゃったら一度土に埋めなおしたほうが綺麗かもしれんのじゃ」



 俺を見て言わないでほしい。

 これじゃ俺が汚いみたいな話になる。


 アリシアが小さく笑い水場で種を洗う。

 ハンカチでふくとテーブルの前に戻ってきた。



「じゃぁ! いただきます!!」

「どうぞ」

「うむ」



 アリシアは大きく口を開けては思いっきりかじる。

 赤い宝石みたいな色をした部分がゼリーのような断面だ。

 ちょっとだけ美味しそう。



「に、苦いです……」

「じゃろうな。アリシアよ……水は一切飲まないようになのじゃ」

「んんんん---!?」

「噛んだ所から腐る。赤い所が白く濁ってきたじゃろ? ほれ早く口にいれるのじゃ」



 まるで拷問だ。

 青い顔をしながら一度は首を振ったアリシアであるであるが、涙目になって残った『原始の種』を無理やり口に入れる。



「え。師匠知っていたんです?」

「一応なのじゃ。いや、しかし本当に見直したのじゃ。本来死ぬはずだったお主がアリシアを助けるとはなのじゃ。魔女として褒美の一つぐらいは……」



 師匠が俺に褒美をくれそうな所で師匠の声が止まった。

 アリシアは何とか3口で食べては床にうずくまった。吐きたいのを我慢してる感じ。



「ライトニングフルバースト!!」



 師匠が杖を向けて攻撃をする。

 攻撃は俺の横を通り過ぎて裏口へと消えた。

 家具やベッドなどが壊れると煙の中から殺気が飛んでくる。



「アリシアアアアアアアアアアアアアアアア!」



 クウガが叫ぶとまっすぐに俺へと攻撃を仕掛けてきた。

 まて、魔法を放ったのは師匠なんだけど!?

 ってか師匠がいねええ!!


 師匠とクウガはまだ会う時じゃないとはいえ、逃げるなんてずるい!



「街で貴様の情報を聞いた……アリシアを二度も誘拐して……アリシア大丈夫か! もう一人いたようだが……逃げられたかっ」

「んんんん、んん!?」



 青い顔をしたアリシアの口の中には、まだ『原始の種』があるらしい。

 何をしゃべっているかわからない。



「ちっ……貴様! アリシアに何をした!」

「え。種を食べさせただけだけど」

「種………………?」

「んんんん! んんん!! んっんん」



 アリシアは必死にクウガに訴えかける。



「苦い……?」

「んん!」



 アリシアは首を縦にして嬉しそうだ。

 嬉しさのあまりアリシアの口から少し白い液体がこぼれた。



「ん!?」



 照れたアリシアは急いでハンカチで口元をぬぐう。

 いや、あのさー…………。


 わからない人だったらいいんだけど、《《そのなんていうかだ》》。

 3文字で表すと。


 えろい。


 前を見るとクウガの顔が蒼白だ。

 俺のほうを見て手が震えている。


 あっわかるのね。



「ミィーティア!! クィル!!!」

「はいはいーはーい。かわいいミィーティアちゃんですよ!」

「アリシア。コッチ逃げル!」



 ミーティアとクィルがアリシアの手と体を引っ張り後ろに下げた。



「この一帯を消滅させる! 光の魔力を、その力を俺に。この身を守りかの敵を滅ぼせ! 『ノヴァ』」

「ばっかお前――!!」



 クウガから魔力があふれ出す。

 光系の上位魔法。

 現在持っている魔力を全部攻撃に回す魔法で万全の時は4桁ダメージ余裕の魔法。

 だったはず。


 俺は近くのテーブルをクウガに投げつけ、逃げるために自分のマジックボックスを漁った。



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