第252話 未来をうっかりしゃべる男と、未来を予測する男
3人で俺が寝泊まりしているベースキャンプへど移動。
焚火を見ながら大事な『原始の種』を眺める。
赤い種でありながら魔石のように半透明の部分があり宝石のようだ。
触った感触は柔らかくちょっと力をいれると実がつぶれそうで怖い。
目の前には恩人と変人の2人。
「改めて感謝の感謝1日100体ぐらいしか倒せないし今で4000体ぐらいだろ? あと2ヶ月で確率かって考えていた所だったし」
俺がお礼を言ったのにステリアが逆に頭を下げてきた。
なんで?
「その。君が出そうとしているのは知っていたが横から済まない」
「へ?」
「いや、こういうのは自分で取ったほうがいいんだろ? 以前アーカスが狙っているアイテムを、同じように渡したが怒られた事があって。今回も迷っていたのだが」
「あーー! あれはランクが上がったら自分のご褒美に買う予定の、バッグベアの等身大の木彫りの置物! いざ買いに行ったときに売り切れだった時のあの気持ち! 今思い出しても悔しい気持ちが湧いてきたよ」
30センチぐらいの木彫りの置物は見た事あるが等身大!?
バッグベアって大きさが2メートル以上あったような、どうすんだそんな置物。
「あー……確かに自分で手に入れたい物を送られて怒る場合もあるか。いや今日に限っては大感謝だ」
「そうか、それはよかった……そのメルももうそろそろこの街に戻ってくるらしいし、こちらが君の協力をする時間も無くなりかけた」
師匠がこっちに戻ってくるのか。
会いたいが、会うとまた面倒な事になりそうだ。
だって記憶けしてるんだもん、俺よくわからないけど記憶消す魔法って何度も同じ人にかけるような物じゃないと思うんだよね。
「あっメルさんとナイちゃん帰ってくる?」
「手紙が届いたのでもうすぐだろう、魔族の四天王グリムリーパーの位置を特定でそうだ。と手紙に書いてあった」
うん。
また知らない名前だ。
グリムリーパーっていうぐらいだから死神か?
「その……クロウベル君。グリムリーパーの弱点などないだろうか?」
ステリアが突然俺に向き合った。
「………………いや、知らない」
「未来人が言えないのはわかる。わかるからジェスチャ―で大丈夫だ」
「マジで知らない」
「クロウベル君。ほら種のお礼に弱点ぐらい教えてよ。ねっ!? ステリアもこうお願いしてるんだしさ」
「前にも言ったけど俺の世界では魔族戦争は終わってるっての……」
「そ、そうか」
ステリアが思いっきり肩を落とす。
「ごめんって……俺だって教えたいよ。俺が知ってるって言えば帝国地下の古代遺跡ぐらいかな」
「は!?」
「な!?」
あっ。
2人がとんでもない顔で俺を見ていた。
「ええっと、忘れて」
「出来るわけない!」
「古代遺跡って今よりも古いの!? もしかして」
「ああ! まだ見ぬ魔法があるに違いない」
「魔族を倒すアイテムがあるかも!!」
2人の圧がすごい。
「ええっと……じゃぁ俺未来に帰るから」
「詳しく話してもらうぞ!!」
「そう。話すまで返さないから」
うん。
俺は余計な事を言ったね。
まさかこんなに食いつくとは……いやでも未来の師匠はアーカス達と行った事があるって言っていたし、もしかして原因は俺なのか?
となれば場所ぐらいは教えないといけないし。
俺はステリアに「地図を出して」というと素早く地図が出てきた。
現在場所がここだから、こっちの海を渡った先……この辺かな? 今は森の中になってる場所。
そこを指さす。
「先に言うけど俺が知ってる情報とこの情報が違う可能性もあるし、死ぬ可能性も」
「それは仕方がない」
「冒険者だから覚悟はできてるよ?」
こういう所はこの2人は俺よりも大人なんだよなぁ。
「じゃぁ俺の知ってる情報だけ。主要都市などの地下にある古代都市。この辺であれば、ここと。ここ。こっちは行った事ないからあるかは不明。この場所もあるとは思うが同じく内部は知らない。で……海を越えた先にでかいのがある。宝があるとすればこっちのほうだけど、ここもあるかも」
いくつかの情報を教えていくと、俺の声以外は焚火の音だけが聞こえるようになっていく。
序だから裏ダンジョンの強敵も教えていく。
オリハルコンゴーレム。
悠久の鳥。
生き人形遣い。
偽りの鏡。
未来では見た事ないが、この辺が出るとは思った。
「…………クロウベル君って実は魔族なんじゃないの?」
「同感だ……」
「いやいやいや。俺は《《普通》》の人間だよ」
2人が無言になる。
アーカスがため息をつくと俺に顔を向けてきた。
「普通の人間は過去に何度も来ないし、まだ見ぬ敵の情報も教えないし、これでもギルドマスターを圧勝出来るぐらいに強くなった私と肩を並べられないんですけどー?」
「同感だ。君が普通の人間であれば魔族より先に滅びるべきだ」
ひどい言われようである。
そりゃこの世界に来る前に地球の記憶会ったり、この世界がゲームと似た世界でゲームネタが通じる世界なのは、現在俺しか知らない事だけどさー。
それでもこのいわれようは酷い。
「で、顔が笑ってるけど、ちょっと怖い笑顔だよ」
「人をゴミのように扱う人間みたいな笑い方は辞めたほうがいい。普通の人間というのなら」
「……ひどい」
俺はもういじけて膝を抱えて頭をうずめる。
「うわ。すねちゃった」
「アーカス。甘やかすな……20歳も超えた男性が可愛くいっても気持ち悪いだけだ」
「えーでも、クロウベル君これで少しは愛嬌あるよ?」
「それはまぁ……」
膝を抱えて顔を隠している俺に丸聞こえである。
「ってか、そういう話は聞こえないようにいってくれ」
仕方がなく顔を上げて姿勢を崩す。
「ほら」
「『ほら』と言われてもな……改めて礼を言う。さて……どうする。未来に帰る事は出来るが早いほうがいいか?」
ステリアが俺に聞いてきた。
え。もう帰れるの? だったら早いほうがいい。
「そうするよ。これ以上いてまた未来の事うっかり喋っても何かあるかわらないし」
「まぁそうだな。所で僕達の子孫は元気だったかい?」
「はい?」
一瞬言葉に詰まった。
英雄アーカスの子孫というのはいないのだ。
アンジェリカ、もしくはアリシアが英雄の子孫かと思ったがどっちも孤児院にいた。
俺が読んだ物語では英雄の死後。英雄の子孫を名乗る者達の悪政などが語られている、師匠にアンジェリカとアリシアの関係を尋ねてみたら、魂の生まれ変わりだろう、と簡単に言う。
この点は俺も仮設があって……メタ的になるが顔グラがそんななかった説も? いやさすがにないか。
とにかく、英雄となったアーカスは遠くに旅立つのだ。
その傍らには1人の青年の姿あったとかなかったとかで……。
「ええ、まぁ元気だよ。これ以上は俺の口からは」
子孫がいない。という事を俺は口に出来ない。
「《《大体わかった》》」
「ウソ下手だもんねぇクロウベル君」
変な所だけ察しないでほしい。まじで。
「俺はこれでもウソついた事ないんだけど」
「はいはい。魔力の多い人って子供出来にくいんだけど知ってた?」
「え!?」
まじか。
いや、でも……世界のバランスを考えれそうなのか? まぁそうか……魔力の多い人間同士で子供を作っていけばすぐに化け物クラスが出来上がるもんな。
「少し意地悪な質問だったな。君はメルが好きなんだろ? そういう事だから子供が出来なくても気に病むなっていう助言のつもりだったんだけど」
「質問に悪意しかねえ!!」
「そうよね。ステリアってこういう事で嫌われるのよ」
アーカスがうんうんとうなずくと、ステリアが「そうだったのか……」と落ち込み始めた。
「今後気をつけるとしよう。では君を未来に帰す。これを飲んでくれ」
俺はステリアから紙に包んだ薬をもらった。
飲めと言われれば飲むけど、飲んだ感じ砂利の味がした。
海に潜った時に口に入る砂。その砂の味に近い。
「にっが…………がががっが!!」
「クロウベル君!? ステリア何を飲ませたの!?」
「メドゥーサ女王の粉末だ。いろいろ考えたが君を700年ほど石にさせる。メルと手紙のやり取りをしていて、君がいた年数。さらにこの2ヶ月で君がいた時代を割り出した。誤差は無いと思うがあっても20年前後と思ってくれ」
馬鹿やろう! めっちゃくちゃ多いじゃねえか!!
「てめ……う、ご……足が……うれ」
「喜んでくれて嬉しい。安心してくれメルに見つからないようにこの場所は封印する。新しい封印魔法も覚えたんだ」
覚えたんじゃねえ! なぐ……殴らせろ!!
「ふざけ……」
「あっもう動かないみたい」
――
「あっお帰り! いやぁ掘り出したのがワシでよかったよかった」
「………………」
俺は無言で朽ちてない元聖王に殴りかかった。
「いっ! 君! 死んでいても若干痛覚はあるんだよ!? 突然なぜ殴るんだい!?」
「全部知ってたな……」
周りを見るとテーブルに茶器、そして見慣れた壁。
テーブルの上には秘宝の一つで目覚ましみたいな過去に戻るアイテムが置いてある。
「そりゃ、頼まれたからね……君にクロノスの時計を渡した後に事前に掘り起こした君をこうして置いておいたんだ。さすがは賢者……君を送って2時間後には石化から戻ったよ」




