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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第251話 希望と絶望とちゅっちゅ

 地下33層。

 その壁に俺は今日も一日横線を入れていく。横に1本。縦に4本入れる事で5回という意味だ。その傷が8個ほどある。


 そうちょうど40日目だ。



 来る日も来る日も原始スライムを倒しては液体を流しまた倒す。

 最初はアーカスやステリアも手伝ってくれたよ? それもまぁ3日ぐらいまでだ。

 疲労が残る2人は文句なんて言わなかったけど、さすがにステリアが転んで怪我をしたので1度帰らせた。



 軟弱賢者め。

 そこからは4日1回補給物資をもらいながら俺はひたすらに原始スライムを叩く。


 最初は好戦的だった原始スライムもまた数が少なくなってきた。

 このままでないと出るころには俺は爺さんになっているだろう。


 そして爺さんの姿で未来に帰ると誰も俺の事を認識しないのだ。



「うあああああああああああああああ!!!  っと…………撃破。かぁでないよなぁ」



 頭がふっとーしちゃうよ! と思いつつも狩り続ける。

 別に単純作業が嫌いなわけじゃないし。


 どうも原始スライムは上に向けて移動する。

 上に行くには5本の道があり俺は順番にその道に行っては狩り続けるだけ。



 ベースキャンプに戻るとアーカスだけが座っている。



「あっおかえり」

「家じゃないし」

「そういう意味で言ったわけじゃないんだけど」



 わかってるけどな。

 俺はアーカスと程よい距離感の場所に座る。


 これがまた難しい。

 知り合い以上でも仲間じゃないし、相手は彼氏いるし近くに座りすぎて勘違い野郎にはなりたくない。



「何か微妙に距離感感じるんですけど?」

「気のせいだ。それよりも補給物資」

「はいはい。肉と水……手伝おうか?」

「いやいい」



 アーカスは裏拳で壁を叩くと壁に亀裂が入った。



「ごめん、聞こえなかった手伝おうか?」

「いらない」

「あっそうか! クロウベル君も聞こえなかったんだね。手伝うよ!」

「聞こえてるしいらないって」




 もらった肉と残しておいたパンを口に入れて何度も噛む。

 さすがはマジックボックス、風味も焼き立てでうまい。



「どうせあれだろ! また喧嘩でもしたんだろ!? 前回もそうだったし」

「け、喧嘩なんてしてないしー!」



 アーカスはそういうが、前回はステリアが1人で来てはアーカスとの仲直り方法を聞いてきた。

 ってか彼女のいない俺に聞く? 俺なんて喧嘩する相手も別世界なんですけど!?


 かまわず相談するステリアに押し倒せ! とだけアドバイスして返した。



「その押し倒されたんだろ?」

「ふにゃっ!? なななななななな……倒されてないし、その押し倒したというか、それに何か怒っちゃって」



 心の中でそっちかよ! とツッコミ とともに 『どうでもいいよ!』と言うツッコミが入る。



「どうでもいい」

「よくない!」

「ってか俺は忙しいの!」



 立ち上がり原始スライムを倒しに行く。

 背後でアーカスが黙ってついてくると俺の取りこぼしたのを黙って倒していく。



「出ないね」

「出ないな」

「このままでなかったら一緒に魔族倒しに行かない?」

「いかない」

「クロウベル君が好きなメルさんも一緒だよ?」

「行く……いや行かない。俺に関する記憶消してるんだろ? 2人は何で記憶消してないんだ?」

「メルさんが消すのは自分1人でいいって……いいなぁメルさんは何百年も思ってくれる人がいて」




 師匠らしい。

 確かにほかの2人は記憶を持っていても未来で俺と会う事ないもんな。

 と、いうかだ。

 そんな乙女みたいな悩みを俺に振られても困る。


 困って冷や汗がでるぐらいだ。

 


「……それよりも何か暑くないか?」

「暑いね……」



 新手の魔物の可能性が高い。

 スライムの残骸を足で踏み、辺りを警戒する。

 アーカスもいつの間にか剣を抜いては俺の死角をカバーしだす。



「クロウベル君。後ろと斜めは何もなし」

「了解、こちらも……いやあれ何」




 原始スライムの群れがどんどん融合していく。

 脳裏によぎったのは例のアレ。



「おいおい、キング原始スライム……?」

「美味しそう……私あれぐらい大きいゼリー食べるの夢だったんだ」

「どうみても冒険者ギルドの建物よりでかいんだけど?」

「うん。だから中々かなわなくて」



 キング原始スライムから透明な触手が飛んでくる。

 俺もアーカスもそれぞれ切り落とすと、切り落とした触手が床に落ち原始スライムとなって襲ってくる。



 アンジュの剣で叩き斬……れない!?



「かってええええ! 剣が折れる」

「もっと力を込めて! 私の剣は絶対に折れない!!」



 アーカスから怒られた。

 ちらっと見るとアーカスのほうも分離した原始スライムは斬れてない。

 襲ってきた分離した原始スライムを壁に叩きつけた所だ。



「何みてるのかなー?」

「…………斬れてないじゃん、そっちも」

「私はいいの! 叩きつけに切り替えたから」

「はいはい」

「はいは、1回のほうがいいよ!」

「うい」



 俺が返事を返すとキング原始スライムからさらに透明な触手が飛んでくる。



「突然どうしたんだろ」

「何所からの誰かさんがゼリー食べたいっていったからじゃ?」

「そうであれば順番がおかしいわよ!」



 触手攻撃は弱いが、切り落としたやつが面倒だ。

 硬貨しながら俺達にぶつかってくる。

 叩き潰しても最後には本体に戻って行っているからだ。



「一回撤退だよ!」

「いやしない」

「なんで!?」



 アーカスが疑問を唱えるが俺はある一点を見ている。

 キング原始スライムの中央に黒い魔石が見え、その横に赤い種が見えるのだ。

 剣だけでそれを教える。



「あああああああああああああああ!? あれってクロウベル君が欲しいって言っていた『原始の種』えええええええええ!?」



 種ぇ種ぇ種ぇ………………たにぇ。



「ちょっと! クロウベル君聞いてるの!?」

「はっ!? 近くて叫ばないでくれる!? 一瞬意識飛んだわ!!!」

「ご、ごめん」

「と。思う、昔俺が見たのと同じだし」

「見た?」

「いや、古文書で見たやつと同じ形」

「なんで知ってるのかなぁ……また言えない系なのかなぁ」



 アーカスから戦闘中だというのに、不満な声が聞こえてくる。

 しかし、暑い。


 キング原始スライムには熱耐性でもあるのか。



「バックアップを頼む」

「あっちょっと!」



 俺が一気に加速すると透明な触手がうようよ出てきた。

 足元にも小さい原始スライムがまとわりつく。



「水盾・連!!」



 スライムに水魔法。

 それも盾、普通なら効かないし無駄なんだけど、あえて後ろにいるアーカスへむけてかけた。


 魔法の発動で俺の体に重力がかかり足元の原始スライムを強引に引きはがす。

 アーカスが「そんな使い方があるんだ……」と、言うのと俺がキング原始スライムの核を貫くのとほぼ同時。



「フレイムバースト!! すべてを焼き払え!!!」


 ん?


 男の声が聞こえると部屋全体が真っ赤になった。

 俺の目の前で『原始の種』が燃え尽きた。


 は?


 思わず四つん這いになる。

 俺の手の中で8192分の1で手に入る種が炭とかした。


 背後では人の気配。



「ステリア!」

「アーカス! 無事だったか……そのごめん。君を支える勇気が出なくて」

「いいのよ。こうして迎えに来てくれたのが一番の勇気」

「たまにはリードさせてくれ」

「あっ」



 え、いやこれ。

 振り向いていいの?

 振り向いて激怒したいんだけど、振りむくタイミングあるよね。

 完全に逃した。

 見てないけど、小さい吐息が聞こえてくるし。


 俺の種が燃えたんだけど。



「うあああああああああああああああああああ!?」

「ステリア。な、なに!? 舌噛んだかな」

「ク、クロウベル君がいる!」

「あ。うん……忘れてた」



 俺は四つん這いから立ち上がって振り返った。

 アーカスは俺を見ているが、ステリアは露骨に顔をそむける。



「よう」

「ええっとその『原始の種』は出たかな?」

「今出たけど、どこかの賢者の魔法で俺の目の前で真っ黒にされて、この怒りをぶつけようにもどこかの賢者がちゅっちゅっちゅっちゅして怒るタイミングも見失って絶望しかなかったけど、もう1回出せばいいかっていう謎の前向きな考えが出てる最中の俺にそれ聞く?」

「あっはっはっはクロウベル君、どんまいだよ!」



 このクソ英雄。



「それはそのごめん。丁度よかった」

「何がだよ! もういいから2人とも宿に戻ってちゅっちゅしてくれる? それとも何、見せつけプレイなの!?」

「あ、いいかも」

「アーカス!? 変な事を言わないでくれ。君もだ!!」



 ステリアは俺に小さい箱を投げつけてきた。

 キャッチして中身を見ると『原始の種』が入っている。



「うおおおおおおおおおお! うお!? おお? うおおぅと」

「せめてわかる言葉で話してくれ、君が教えてくれた特徴。それを旅先で出会った錬金術師に相談したら1個だけある。と教えてくれてね……届いてすぐ持ってきた所だ」



 俺はステリアの前までヨロヨロと歩くと土下座、もう平伏する。



「俺は下を向いているので、どうぞ好きなだけちゅっちゅしてください」

「しない!!」





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