第247話 英雄はしっぽり。俺は汗でびっしょり。
旧聖都タルタン。
いまだ崩れ落ちる前の街で賢者ステリアに連れてこられた俺はテーブルにいる人物を見て短い挨拶をした。
「よう、久しぶり」
「うわっ……」
人を見るなり化物みたいな反応は少しだけ傷つく。
金髪で胸が控えめな女性。
隙だらけに見えるが俺クラスになるとわかる相手の強者感。
顔は美人に入るしもてそうなんだけど、ちょっと天然でむっつりが入ってる女性冒険者事、のちの英雄アーカスちゃんだ。
「あっ邪念を感じる……変な事思ってない?」
「まったく?」
「うーん……君は嘘つきだしなぁ。でも久しぶりだねクロウベル君……いやクロウベルさんかな?」
「呼び方は何でもいいよ。こだわってないし」
ステリアに席を勧められて椅子に座ると、テーブルのツマミを俺の前に差し出された。
「まぁまずはお食べ、クロちゃん」
「俺は犬かっての、頂きます」
「冗談だって」
豆の塩ゆでを口にいれては空を別の皿に置く。
その間にテーブルには冷えた麦酒が運ばれてきた。
氷の魔法で冷やしており一般の奴よりは値段も高いが一番美味い奴。
俺がジョッギに手をあてると、アーカスがジョッキを鳴らしてくる。
「かんぱーい」
俺の目の前でジョッキを空にすると、アーカスは直ぐにお代りを頼みだした。
「え、よっぱらい?」
「全然よってないよー?」
うん。酔っぱらいは皆こういうんだよな。
当然酔ってない人も同じ言葉を言うんだけどさ。
「それにしても久しぶりだねクロウベル君!」
「さっき聞いたっての」
「あれれー?」
酔ってるじゃねえか。
助けを求めるべくステリアを見る、グラスの半分も減ってないステリアは苦笑しだした。
「再会は彼女にとっても嬉しい事だ。多めに見てあげてくれ……というかだ。君が突然消えてからこっちは大変だったんだ……そう、未来に関する事を1つでも教えてくれればいいのに何も教えてくれない。それにメルも忘れる事にする。と、いっては記憶を消したってクロウベル君。話を聞いているか?」
「あっごめん聞いてなかった。その師匠は何所かなって」
2人は会ったけどまだ師匠に会ってない。
それに絡み酒はだるい。
飲むなら楽しく飲みたいし。
他にも考える事は沢山あって、まず俺が未来から来てるのがばれている。
これも隠しておきたかった……が、旧タルタンに来る前に『バレてるから』と教えて貰った。
「……メルはナイと一緒に神竜に会いに行ってる」
「ええっと……フランシーヌか」
「神竜の名前は知らない。レイアラント大陸ほうだよ、君なら何かしってるかもしれない」
ああ。ならそうだ。
ナイはナイでセリーヌの事を妹とか言っていたし、きっと何かあるんだろう。
いないのは寂しいけど未来でまた会えるし我慢するって事かな。
と、いうかだ。
未来は不確定だけど、過去は変わってない?
どの時間軸でも俺が過去に行く事が決定してるのかどうか……謎である。
「まぁいいか。今回は直ぐ帰るつもりだ……いや。まって……どうやって帰るんだ俺!」
最初は懐中時計みたいな秘宝。
次は目覚まし時計みたいな秘宝。
どっちも朽ちてない元聖王に騙されたのだ。
「こっちに聞かれてもだ」
「同感ー! そんな事よりも飲もうよ、私の酒が飲めないっての!?」
十分出来上がってる。
「飲むけどさ……何かあったわけ?」
「それが聞いてよ! 四天王の1人を倒したの!」
「四天王?」
「あれ知らない? 魔族の中でも上位にいるソロモン」
全く知らない。
いうて未来では魔族はほぼいないし戦争もしてないし。
「俺がいた世界では平和だからな」
「…………よかった。私達の行動は間違ってなかったんだ」
アーカスが突然に泣き出した。
酔っ払いだな。
「とはいえ、未来が平和だろうが慢心し僕達がここで負けたら意味はない。クロウベル君には感謝しよう。それで言えば君が元の時代に変える方法は一応僕の考えがある」
「あっ本当? さすがは賢者」
「賢者だなんて……普通の魔法使いだ」
なぜか少しキレ気味のステリアに怒られた。
帰れるなら何でもいい。
俺は俺の事をするだけだ。
「色々話を聞きたいが……」
ステリアが少し赤い顔をしては俺をじっとみる。
酒にはそんなに強くないみたいだな。
「まっお開きだろうな」
「ああ……少ないがこれを自由に使ってくれ。派手に遊んでも10日は持つはずだ。詳しい事は明日」
ステリアはテーブルの上に革袋を置いて席を立つ。
テーブルに鼻をつけては笑い出すアーカスの肩を背負うと2階にある宿スペースへと消えていった。
彼氏彼女であるあの2人はこれからしっぽりだろう。
師匠も近くにいないので俺の相手誰もいない。
………………最悪そういうお店に行くって手もあるが、別に困ってないしな。
未来に帰るのにはステリアが何とかしてくれるとして、未来のアリシアのために……いや、アリシアを助けると師匠が喜ぶのでこの世界で『原始の種』を取らなければならない。
まずは原始スライム探しだ。
この時代に沢山いるって話だしちょっと旧聖都タルタルの外に出てみた。
スライムといえば水辺だろう。
例の湖畔に水辺を見る。
濁った水が固まると漬物石ぐらいのスライムが俺に襲ってきた。
「お?」
これは幸先がいい。
アンジュの剣で一刀両断すると小さいコアを斬ったのだろう魔力の水のように消える。
「よわ」
逆に俺が強いのか?
水面から新しい『原始スライム』が現れた。
「そもそもドロップって種よね? え。溶けかけの種でも出てくるのか?」
2体目も倒す。
当然ドロップは無い。
「8192だしな、裏ダンジョンで俺が一発で出したけどまぁこんなものだよな。よっと3体目」
うん。ドロップは無い。
「わんちゃん4体目で出ないかな」
4体目、5体目も倒す。
「……8192を6回繰り返したって事は1200分の1ぐらいになってるなじゃないの? っと7体目から9体目終わり」
辺りから魔物の気配がなくなった。
頭ではわかってる。
ゲームは歩けば敵が出てくるけど、実際は同じ場所で同じ人間が乱狩りしたら魔物の本能がその場所を嫌うだろう。
「うおおおお! 探す! 絶対に朝までにだす。1分間に3体倒せば1時間で180体。沼る前にだす!」
水辺に出なくなったので俺はひたすらに湖の周りを走る。
出てくる原始のスライムを叩き斬ってはすぐに走る。
「あははははは。あっはっはっはっはっは」
――俺が1322体目の原子のスライムを倒すと何か死骸から出てきた。
「た、種だ……やったぞおおおおおおおお!」
「うわ……それスライムの排泄物」
背後から聞こえる声に振り替えるとアーカスとステリアが立っている。
「あれ? お、おはよう。それより、え?」
「欲しかったのスライムの排泄物。ギルドに行けば金貨1枚で売ってるけど……ってそれよりも湖畔の周りで剣を振り回してる男がいるから討伐してきて。ってギルドの依頼出来たんだけど?」
「え?」
俺は周りを見る。
そんな怖いやつがいるのか、俺も気を付けないといけない。
「そんな奴いなかったけど?」
「お前だ! クロウベル君!!」
ステリアが俺に怒鳴りだした。




