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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第240話 にんにん♪

道を歩きながら隣で文句を言ってくるのはフランシーヌ。

 俺もそれに返事を返してはゆっくりとペースを合わせ歩く。



「貴族でもないのに見栄を、なんてお馬鹿なんでしょう!」

「いやでも、あの場合電撃とびそうだし……」

「大の男が電撃が怖いんですの!?」

「こえーよ!」

「行って下されば貸しにしましたのに」

「それがいやだっていうの」



 俺がそう怒鳴るのは、先ほどのレストランでの事。

 椅子や壁の修理費。

 そこまでならまだわかる、俺も暴れたんだし。


 なぜか爺さんや私兵の飲食代まで請求された。

 フランシーヌが黙って払おうとしたのを、ボーイがフランシーヌの請求書を渡さなかった。


 《《小さい声で》》『ここは彼氏が払うとポイント高いですよ』と、俺に囁くからだ。


 無視しようと思ったが、さらに『ベルト』という単語を言うのでフランシーヌから無理やり奪って支払った。



 案の定というか高い。

 手持ちがあるからいいけど、これ一般の人は払えないよ?



「そもそも、爺やがこのデートを妨害する意味がわかりませんわ」



 まじで?

 俺だったらわかるけど、ようは俺みたいなわけわからん男にフランシーヌが取られるのが困る……。



「いや。もしかしてデートを成功させようとしてるのか?」

「どういう事ですの?」

「失敗させるためにやってると思っていたけど、俺が電撃を食らうのにはどれも失敗した時だけだし」



 俺は片膝をついてフランシーヌを見た。



「なんですの!?」

「ようは、俺がフランシーヌを満足させれば電撃は来ない!」

「今さら気づいたんですの!」



 確認だ確認!!

 人を馬鹿みたいな男だなって目で見なくてもわかってるって言うの。



「まぁいいですわ。彼方『ハヤブサの腕輪』を売ってる場所知りません?」

「また懐かしいアイテムで」

「っ!? 知ってますの!?」



 スータンのイベントで手に入る腕輪で例によって素早さが上がる補正の腕輪だ。

 スータンの中でも治安が悪い場所に売っている。


 ゲーム内ではクウガが主人公なので、たまたま入った道具屋で空白のカーソルがあるのだ。

 操作してる方は隠しアイテム! という事で選ぶんだけど、その瞬間に女性暗殺者に襲われるのだ。


 にんにんって語尾の女に。


 その女性暗殺者を返り討ちにしたクウガは《《一晩看病》》して別れる。

 

 その女性は冒険者をしていて仲間の病気のためにお金が必要。

 冒険者の稼ぎも足りなく、頼まれた裏仕事をお金を取ろうとしてたとか。



 まぁクウガの手によってクウガを暗殺しようとしていた男は死んだし。その女が『ハヤブサの腕輪』を『貰う』『貰わない』イベントがあったはずだ。


 貰うと、恩にきるけどやっぱり信用できない。と言われ二度と会えない。


 貰わないと。無償で……その……宿の看病もすまない。と言って街に滞在する。



「欲しいの?」

「欲しいというか……元々フリク家のものですわよ? 2年ほど前に預けていた男が死体で見つかるも腕輪だけ帰って来なくて」



 へぇ…………何だか雲行きがおかしくなってきたぞ!?



「酷く落ち込んだのは爺ですわ。爺がお父様のために手に入れた腕輪ですもの。私とてあちこちの店を任されているのです、この街のどこかに売っているまでは調べたのですが」



 護衛を兼ねて俺を連れ出した。と……。



「では、案内してくださいまし」

「オレナニモシラナイ」

「今ここで私が叫んだら、どうなると思います?」



 悪魔のような女だ。

 電撃が飛んでくるに決まってる。



「ちょっと我慢すればいいだけだし……」

「そう、では我慢して――」

「まった!」



 叫ぶ寸前のフランシーヌは息を止めて静かに吐く。

 この鬼! 悪魔! 顔がちょっといいだけの金持ち女!



「ほっほっほっほっほ! ざまぁですわ。なぜだが彼方の負け顔を見ると気分がとてもいいですの!」



 そうだった。

 この数日でいい奴じゃん。と思っていたけど元々こいつはおもらし令嬢。傲慢でわがままな奴だった。



「絶対に復讐してやる」

「庶民に出来るのならしてみなさい! ほっほっほっほ! それに罰ゲームですわよ。敗者に権限なんてあるとおもってますの? ねぇ。ねぇ。ねぇ」



 うっざっ!

 顔を近づけて俺を煽って来る。

 べ、別に悔しくなんて――むぎゅ。



「ばっ! 何するんですの!? 人のほっぺを手でつぶすだなんて」

「あまりにもうざかったから、店は聞いた事あるけど本当に売ってるかは知らない。それでいいか?」

「ええ、いいですわ。本当でしたら食事の後は片っ端から怪しいお店を回るつもりでしたし」



 もっとだるい。

 スータンの店が何件あるのかしらないだろ。

 当然俺も知らない。

 わかるのはゲームと違って沢山あるってだけだ。


 1件1件『ハヤブサの腕輪』売ってませんか? って聞いて回るの? 勘弁してほしい。



「じゃっいこっか」



 フランシーヌを連れて冒険者ギルド前を通る。

 懐かしいなぁ、ここには変態マッチョのギルドマスターがいたって……当然俺の事を知ってるはずもない。


 何人かの冒険者が俺の顔を見て凝視してきた。



「おっと」

「どうしました?」

「いや、顔隠すの忘れてた」

「ああ、極悪人だったというお兄さんとそっくりなんでしたっけ」

「そう」



 タオルで顔を隠してさらに路地に行く。



「あの、本当にこっちですの?」

「こっちだよ」



 確かに半裸のお姉さんや、酒瓶持ったまま寝てるおっさんなどがいるけど、こっちの道だ。

 俺達を見てはニヤついてる男もいて治安が悪い。


 爺さんやアンジュも周りにいるだろうから大丈夫とは思うけど、足早に抜けるか。



「よっと」

「ちょ、何しますの!?」

「背負いたくないから」



 俺はクレーンゲームのようにフランシーヌの腰ベルトを掴んで浮かせた。



「普通お姫様抱っこじゃありませんの!?」

「お姫様じゃないもん」

「爺や電撃ですわ!」

「地面に落とすぞ?」



 フランシーヌは俺の顔を見て引きつった。

 最初からこうすればよかった。

 ここで電撃が来たら最後、フランシーヌは地面に落とすし俺はその上に倒れる。


 怪我だろうな。



「魔法があるから治るだろうけど、顔中が傷だらけになるかもな……いたそ」

「ひぃ!? 爺や電撃はだめですわ電撃は!!」



 フランシーヌが叫ぶ。

 面白い。

 昔こういうおもちゃをお祭りでみたな。


 あれは亀に紐付けたおもちゃだっただけど、顔の前に餌を置いてぴょこぴょこ動く。


 試しに先ほどレストランで渡されたケーキをフランシーヌの前にだした。


 パクっと一口食べた。


 もう一つケーキを出すとそれも食べる。



「あの。降ろすかお茶が欲しいんですけど」

「どっちも嫌なんだけど」

「この!」

「暴れると落ちるぞ」



 スン。と暴れるのを辞めた。

 案外素直に言う事を聞き驚く。



「もう何でもいいですが、早くつれてってくれませんの!?」

「まぁそれもそうか」



 俺が歩くと客引きや強面のおっさんも遠巻きになった。

 魔よけの人形みたいで楽だ。



「ほっほっほっほっほ、私の美貌で道が開きますわ!」

「そ、そうだね」



 俺だって地元でこんな奴がいたら道開けるよ。

 関わりたくないもん。


 いくつかの細道を抜けて普通の家の前に立つ。



「一軒家ですわよ?」



 俺はフランシーヌを降ろすとノックする。

 反応が無いので、俺は《《建付けの悪い扉》》を『横にスライドさせた』。



「なっ! 何なんですの!? この扉!?」

「引き戸。知らない?」

「棚についてある……?」

「あっ! し、しめて!」

「はい?」



 俺は引き戸の中を見る、黒髪で全裸の女性が俺を見ていた。

 上着を脱ぐ所らしく、俺は黙って引き戸を閉める。


 閉めた瞬間、俺の眉間の所に扉越しに何か飛んでくる。



「攻撃!? あぶないですわ!!」

「大丈夫、受け止めて……いってえええええええ!? え。血でてるよね!? 刺さってない? 『癒しの水』!!」

「刺さってますわよ」



 脳天に穴が空いたかと思った。

 それぐらいに痛く傷を回復させると引き戸が開く。



「誰にんにん?」

「サクラ……だっけ?」

「本当誰にん?」




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