第238話 呪いのアイテムは呪われてるんだよなぁ
デートって何だろ。
待ち合わせのスフィンクス公園前で1人考える。
別に意味は知らないわけじゃない。
男女の好きな物同士がご飯を食べたり遊んだりして回数を重ねていくと最後はホテルにいくあれである。
ここで疑問に思うのは、フランシーヌってまさか俺の事が?
別にイベントがあるわけでもないキャラだったし、あったとしてもクウガが好きになると思うんだけど……え? 俺の事が好きなの?
「おや? クロウベル殿じゃないですか! 奇遇ですな、こんな所で」
俺は考えを中断して話しかけてくる爺さんの方へ向く。
「何が奇遇だ。俺の後をついて来てたよね!? 全然隠れてない私兵までみえるんだけど!?」
「気のせいだよ。それよりも身だしなみが良くない! お嬢様とデート……いや買い物するのに普段のままとか何を考えているんですか」
「特に服ないし」
最低限の衣服以外は持ってない。
今でこそ小型のマジックボックスもってるけど、最初は手荷物だよ? そこにデート用の衣服何て入れるスペースがない。
それに慣れてしまうとオシャレに気をかける事がないというか。
「ふむ。ベルトぐらいオシャレポイントをつけましょう」
俺に白いベルトを手早くする爺さん。
なるほど、地味な服装にちょっと目立つ白いベルト、オシャレと言えばオシャレだ。
「服も着替えたほうが……いや、先ずは髪ですな。スライムオイルを煮詰めたのがここに、頭を失礼」
爺さんは俺を強制的にしゃがませると指を一つ鳴らした。
私兵の中から若い女性が来ると俺の頭をブラシの代わりに手で整えていく、少し髪を後ろに流してオイルで固定した。
無言で出される鏡を見ると、別人がいる。
「え。これが俺……?」
「ふむ。目つきが悪いし顔も悪いと思いましたが中々……まぁそれでもフランシーヌ様にはもったいないですな。おっと……では我々は用事があるので」
爺さんが急いで俺から離れる。
豪華な馬車が俺の目の前に留まると周りがざわつく。
御者が扉を開けるとフランシーヌが仁王立ちで立っていた。
「お、おう」
俺を見たまま仁王立ちのフランシーヌ。
ため息をつくと馬車からゆっくりと降りて来た。
その瞬間俺の体に電撃が走った。
「あばばばばばばば!?」
「ひっ!?」
フランシーヌが驚くが、俺の方が驚く。
電撃が止まったのを確認して辺りを探す、師匠の魔法並みに威力が強い。
「貴方!? 何時エスコートするかとまっていれば、そのベルトは呪いのお仕置きベルト!? ど、どこでそれを」
「どこって……え、呪い!?」
「私がお嬢様になるために特訓の時使用した装備品ですわ」
「お前の所の爺さんにつけられたんだけど!?」
「お馬鹿な事……スイッチは爺やがもってますでしょうに」
俺はベルトを引っ張るも取れない。
よし壊す!
「水槍!」
「待ちなさい!」
俺の魔法がベルトを切り裂く手前で止まった。
「何?」
「そのベルト無理に外すと、3ヶ月は消えない体臭になりますわよ」
「…………まじで?」
「まじですわ」
体験者からのレビューほど信頼できる。
俺は黙って魔法を解くと立ち上がる。
「後でお前の所の爺さん殺していい?」
「駄目に決まってますわ! 1日程度で外れると思いますので我慢する事ですね」
辺りを見回すと先ほどまで、嫌というほど目立っていた私兵や爺さんの姿見えない。
隠密のプロかよ。
おそらくだけどゲームでよくある正解を出さないと罰が来るイベントだろう。
「ちなみに、何で俺が電撃食らったんだ? 何かおま……フランシーヌ様の気に障るような事しましたでございましょうか?」
「普段通り喋ってくださいな、《《気持ち悪い》》」
「あばばばばばばばばば!!!」
「ひぃ!?」
俺の体に電撃は走る。
地面に体をつけて魚の様に飛び跳ねると電撃が収まった。
周りの人々が恐怖の顔になり俺達から離れていく。
「ぜぇぜぇ」
「だ、大丈夫ですの?」
「だ、大丈夫見えるなら目が腐ってるんじゃ、あばばばばばばば!!」
目の前がちかちかする。
気づけば空を見ていて、空にフランシーヌの顔が被る。
「一応言っておきますけど……私が頼んだわけじゃないわよ? その……今日はよろしく頼みますわ!」
え。この状態でデート続けるの!?
別な日にしない!? 俺死ぬって。
「何か?」
「……いや、今日はよろしく頼む」
そっと手を差し出すとフランシーヌは手を握ってくれた。
よし、どうやら手を繋ぐ程度では電気は来ない。
「フランシーヌ」
「何かしら?」
「おんぶしてやろうか?」
「………………もしかして、くっついていれば電撃が来ないと思ってません?」
「ちが……あばばばばばばばば!?」
「馬鹿な人ですわねぇ。昔可愛い少女が同じ事をしようとしましたけど駄目でしたわ、答えは身をもってですわ」
何度目かの空を見る。
ゆっくり起き上がると、とうとう公園の周りには俺とフランシーヌしかいなくなった。
「どれぐらい気を失ってた?」
「1分も満たないかと……」
どうする……街を破壊してあぶりだそうが考えたが、こちらの世界まできて犯罪者にはなりたくない。
と、言うかだ。
下手に捕まって牢に入れられて帰る手段を逃しても困る。
「買い物いくか」
「ええ、頼みますわ」
ようはだ。
フランシーヌに嫌われないように行動すればいいんだろ? さすがの俺でも電撃を4回ほど食らえばわかる。
猿じゃないんだから。
「デートっても何する? 飯か?」
「ああ。そうですわね! 行きつけのお店がありますしご招待しますわ」
フランシーヌが歩き出すので俺は横に歩く。
さて問題です。
恋人繋ぎはしたほうがいいのでしょうか?
デートです。
でも俺は好きな師匠がいます。
「ん?」
「どうしました?」
「いやなんでもない」
もしかしてのもしかしてで、俺が好きな人いるって知らない? え? マジで!?
「あの。俺さ好きな人いるんだけど」
フランシーヌの動きが止まった。
俺を思いっきりにらんでいる。
「あのメイドですわよね。わかりますわよ」
「いや? アンジュは歳ダアババババババババババババババ!?」
「ひっ!」
俺は周りを見る!
爺さん以外にも絶対にアンジュがいる! どこかでスイッチを押したのか。
いくら俺が強くても何度も食らうと死ぬからね?
「その……本当に大丈夫ですの?」
フランシーヌはしゃがみながら心配してくれる。
「小声で心配ありがとうよっ!」
「小声ついでに言いますけど、別に貴方の事が好きだから。とかではないですわよ? まぁでも知ってました? 貴方のお兄さんと婚約する可能性もあったのですよ?」
「え。スゴウベルと!?」
「……同じ名前で双子兄、クロウベルのほうですわ」
ああ、設定上の架空の兄ね。
俺は親父が作って捨てた弟のほうだったわ。
「そういう事なら。ほら」
「なんですの?」
「手ぐらいは繋こうとおもって、疑似でもしないと俺が電撃食らうし」
「ふふ。案外優しいんですのね」
案外はおかしい。
フランシーヌが進めてくれた店は一般人が入るような店ではなかった。
ボーイ2人が入口に立ち、フランシーヌが堂々と黒いカードを見せる。とたんに道を開けて丁寧にお辞儀した。
フランシーヌは黙って金貨数枚をチップとして渡したのを見た。
チップ制度はわかるけど、え? 俺も渡したほうがいいか……マジックボックスから金貨を同じように出すと店の中に入って行った。
「あら……貴方お金ありますの?」
「え。まぁそれなりに」
「興味深い話ですわね、食事しながらお話聞いてもよろしいで?」
「え、嫌だあばばばばばばばばばばば!?」
遠くから「懲りない人」と聞こえたようなきがした。




