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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第229話 成功報酬はほれ薬ですわ

 1日目は不機嫌なサンだったが、さすがは技術屋と言うだけあって2日目からは普通になった。

 なんだったら上機嫌まであるぐらいに微笑みを浮かべている。


 サンに言わせると「前回もそうですけど中々遠出はできませんので」との事だ。


 4日目には聖都タルタンが見えてきて、街はずれのアンジェリカの屋敷付近には大きな飛空艇が止まっているのが見える。



「…………遠くからでも『デーメーデール』そっくりですわね」

「でしょ」

「まずは街の入り口に。《《お友達》》のアンジェリカさんに連絡を入れましょう」

「友達少ないもんな」



 いっ!

 俺の足に激痛が走る。

 サンに足先を踏まれた、女性に踏まれてここまで何故痛いのかっていうのはサンの靴が特殊なんだろう。



「魔力で作った鉄よりも固い靴ですの」

「勘弁してくれ……その俺も友達になるからさ」

「貴方って……」

「うおおお! ぐりぐりしないでぐりぐり!」



 聖都入口に停留するとすでに聖騎士隊が出迎えてくれていた。

 その中にアンジェリカを見つけると俺は手を上げて俺の無事を知らせた。



 出入り口から出ると俺は近くに寄っては挨拶だ。



「よう」

「クロウベル君……よね?」



 信じられない者を見る目で言われた。



「え? 俺だけど? 師匠は?」

「メル様だったらセリーヌちゃんと急いでフェーン山脈に帰ったわよ」

「まじで!?」



 アンジェリカは普通に頷く。



「あの乳でか師匠! 俺を置いて帰るだなんて……俺の何か悪いって言うんだ!」

「そういう所と思うよ、本当に」

「冷静な突っ込みありがとう」

「何漫才をしているんですの……忙しいんですわよ」



 サンからも注意を受けて俺は一歩横に引く。



「じゃぁ。俺の出番おわったしどうぞ」



 師匠がいないとなると俺の存在意味も無くなってしまう。


 フェーン山脈かぁ、困ったなぁ……場所は知っていても足は無い。

 転移の門でもいけるけど、複数の道をあみだの様に行くので俺は道を知らない。


 ってか師匠あれ何度も間違えるから俺も覚えきれないんだよね。



「貴方、手伝いなさい」

「ん? 断ります。いっ!!? 足! 足踏まないでって!? サンさん!?」



 サンが俺の足から足をどけてくれた。

 サンの目つきが取っても怖いです、睨んでます。



「話聞いてました?」

「何となく。ようは飛空艇の中を調べたいでしょ? 『コメットⅡ改』からの遠隔操作などで俺が『デーメーデール』のそっくりに乗っての確認作業」

「聞いているじゃありませんか……それなのに断ると?」

「そりゃ断るよ。師匠の所にどうやって帰ろうかなって考える所だし」



 場の空気がちょっと悪くなっている。

 アンジェリカでさえ呆れた顔だ。



「ほらね。クロウベル君ってメル様やクウガ君に関係ない事は手伝わないのよ」

「訂正させてもらうけど、クウガの事でも手伝わないよ? 現に北の迷宮に行かなかっただろ」



 薄情と言われてもこればっかりは、飛空艇の謎を解きたくないわけじゃないが俺の手に余りそうだし。


 だって、こんなイベント知らないから。


 知らないという事は解決方法が難しいという事。


 俺が周りにチート見たいって思われてるのは知識があるだけだし、無い知識まではどうにもできないよ。



「アンジェリカさん。お耳を」

「え。なにかな?」

「ふむふむ」



 アンジェリカが「あるわ」というと俺の方に向き直る。



「クロウベル君」

「だから断るって」

「ほれ薬って興味ない?」

「サン! アンジェリカもさぁ。何こんな所で油売ってるわけだ? あの飛空艇の謎解明したいんだろ? 中に俺が入るから遠隔で操作などできるといいと思うんだ」



 サンが「ほら解決ですわ」と勝ち誇ってる。

 だってしょうがないじゃん!!


 ほれ薬だよ。

 現実でいえば媚薬の強化版じゃん。

 欲しいよ!?

 催眠アプリの次に凄いアイテムじゃん。



「ほんっと……今日はもう遅いから明日から」

「俺は今でもいいよ」

「聖騎士隊が困るの! 夜の夜中にあんな物体飛ばせるわけないでしょ!」



 怒られてしまった。

 それであれば仕方がない、1日2日我慢しようじゃないか。


 聖騎士隊に連れられてアンジェリカの屋敷に移動する事になった。

 俺とサン。アンジェリカは貴族馬車である。


 個室の中で俺はアンジェリカに気になった事を聞いてみた。



「フォック君は?」

「彼? 君が連れ去られた後帝国の船を追って命令違反したまま帝国にいったわよ。会わなかった?」

「会わなかった」

「そう……帰ったらお仕置きね」



 俺のせいで少し悪い事をした。

 アンジェリカに罰を軽くしてもらう事を後でお願いしておくか。


 アンジェリカの屋敷では小さいパーティーがおこなわれ、そこでもサンの誕生日会が行われた。


 庭にみえる『デーメーデール』を眺めながら俺は酒を飲むとサンが近くによって来る。



「本物でしょうね」

「根拠は?」

「わたくしが作ったのですもの間違えるはずありませんわ」

「でも。帝都にもあるんだろ?」

「もちろんです…………明日の実験わたくしが乗りますわ。貴方は見ていなさい」



 サンはそう言うと俺から離れようとするので、手首をつかむ。



「…………ここが帝国城内であれば皇女の手を掴むなど死罪にされても文句はいえませんわね」

「今は技術屋だろ? ほれ薬欲しいし俺でいいよ」



 俺は手首から手を離して黙って飛行船を見ている。


 背後でサンが「…………そう言う事でにしておきますわ。ありがとうございます」というと足音が小さくなっていった。



 …………いや。

 本当に他意はないよ。

 ほれ薬ほしいだけだからね。

 まじで……危険とか危険じゃないとかそういうのは置いておいて欲しいからなんだけどなぁ。



「話終わった?」

「今度はなんのようかな、アンジェリカ」

「メル様から手紙……先ほど配達されたの」

「さすがは師匠だ。離れていても俺の事を……かぐわしい師匠の匂いが手紙からする」

「うわっ……」

「冗談だからね。ありがとう寝る前に読むわ」



 寝室で手紙の中身を読む。

 師匠の綺麗な字で2文字だけ書かれていた。

 手紙と言うより命令書。



「ふう……意味が解らん。が……一応証拠は消したほうがいいだろうな」



 映画なら燃やす。という事が出来るが俺の属性は水。


 燃やす事は出来ないので小さく千切って飲み込んだ。

 喉につっかえる手紙を水で飲み込むと白ヤギさんって大変だよなと思うのだ。



――

――――



 翌朝俺は謎の『デーメーデール』に乗り込む。

 逆にサン達は『コメットⅡ改』に乗り込み、デーメーデールへとドッキングした。


 元々は脱出用の緊急船だったのでドッキングは特に問題なかった。

 デーメーデールのコックピットに魔石で出来たモニターが映るとサンの顔が見える。



「問題はありませんか?」

「こちら良好。事前に言った4連砲と……横に会った自動操縦ボタンは白いかな」

「こちらの装置でも確認できましたわ。緊急用のハッチが壊れています。自動操縦の行き先が不明ですわ」



 なるほど。



「じゃぁ。白いボタンを押せばいいのか」



 カチっと音を立ててボタンを押す。



「ばっ! このお馬鹿さん! どうしてそんな事をするのですか!」

「え。この流れって押すんじゃ……」

「コメットⅡ改は離脱します。貴方も船から降りなさい!」

「すぐ降りる」



 通信が切れた。

 デーメーデールから大きな音が鳴ると『コメットⅡ改』が離れたのだろう。


 俺はそのままコックピットに残った。

 もう一度昨夜貰った手紙の中身を口に出した。



「押せってこれだよな」



 手紙には師匠文字で『押せ』としか書かれてなかったからだ。


 上空に飛んだデーメーデールの内部が赤く光って行く。

 外を映すモニターがチカチカと白と黒になると場面が切り替わっていく、超高速移動……? いや飛んでる感じしかしない。


 まばゆい光に包まれると俺は見知った場所にいた。


 場所だけは合っているが、あるはずの建物が無い。


 あるのは焼け落ちたスタン家の元屋敷だけだ。

 その出入り口に茫然と立つと、背後で物音が聞こえ振り向く。



「あれ……クウガ?」

「お前は……クロウベル!!」



 突然の呼び捨てだ。

 別に敬称にこだわってるわけじゃないが、部活の後輩が突然タメ口になった感じ?

 先輩としては苦笑しかない。



「いや、いいんだけど……」

「喋るな!」



 クウガが突然に俺に斬りかかる、それも殺気を込めての一撃だ。 


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