第227話 聖女アリシアと教会の商売
お食事券を貰って街中を歩く。
こうしてみると色んな店があるな……ゲーム内では武器・防具、道具屋、宿屋が基本でたまに、魔法屋や本編に関係ない占い屋などだったけど。
普通に飲食店は多いし帝国というだけあってファッション系も多い。
防具屋なのか服屋なのかショーケースの中に飾ってあるビキニアーマーを見る。
うーん水着だ。
個人的にはもう少しハイレグにして胸の部分も布を少なくしてほしい。
俺もそうだけど男女ともにビキニアーマーをちらちら見ながら一瞬見ては歩きすぎる。
師匠がこれ来てくれないかなー似合うと思うのよね。
説明書きに『こぼれません』って書いてるし安全だ。
その下に魔法防御、耐熱耐寒魔法、素早さアップなど戦闘に関する情報が細かく乗っている。
最後に値段だ。
金貨枚数で68000枚とだけ書かれていた。
べらぼうに高い。
この辺の宿が1泊金貨6枚なのを考えるとやばいぐらいに高い。
俺の手持ち全部でも足りないし買うとなると借金しないと買えない。
「もうやだーあんな水着だれがきるのよ」
突然の声に振り向くとカップルの女性側が同じ水着を着ている。
彼氏の方は強面の上半身筋肉自慢をしてる男。
「で、でも君に似合うと思うんだ。その戦闘面でも強い」
「そうだけどーこんな服着るの何て痴女しかいないわよ」
「そんな事ないさ。B級になれたんだその約束だしいいだろ?」
「でもー……」
カップルが店に入って行くと、店員により水着に『売り切れ、予約待ち』の看板が増え先ほどのカップルが店から出て来た。
その手には紙袋が握られていて顔が赤い。
なんだろう。
とてもつもなく負けた感じがしてゆっくりと歩く。
周りを見ると男性達が俺と同じ感じで歩くのが見えた。
そのまま歩く事教会へいくと、なぜか長蛇の列。
列に並んでいるのは男女問わず健康そうな人間から不健康そうな人間まで、司祭服を来た人が『最後尾はここ』という看板を立てている。
その横を素通りしようとしたら止められた。
「え、いやアリシアに会いたいんだけど」
「アリシア様でしたら列に並んでください。横入りは出来ません」
「いやでも、俺知り合いで」
「皆が言うんですよ。俺がアリシアを育てた。と……いいですか? 全員平等です。皆並んでいますよ?」
ちらっと列を見ると俺が悪者かのような目線を受ける。
え、なにこれ。
「…………並ぶけどさ……時間もあるし。これで会えなかったら覚えとけ」
「おや。捨て台詞ですか? 列から排除します?」
「あっごめんなさい」
高圧的に来られては俺も謝るしかない。
別に騒ぎを起こしたいわけじゃないし……列に並ぶ事1時間弱。やっと教会にある小部屋前まで来た。
回転率は速く次から次に入っては人が出ていく。
俺の番になったので部屋に入るとアリシアと目が合う。
小さい部屋に大量の小瓶がありミーティアキャップを開けるとアリシアに渡す手順なのが見える。
「はい。特性ポーションです、この場で飲んでくださ……あれ、クロウ君!?」
「はえ? あっド変態!」
「…………ド変態なのはミーティアおまえじゃい! ビキニアーマーを着てるとは」
「いいでしょこれ! クウ兄ちゃんに買ってもらったんだ」
あいつは……また際どい奴を……68000枚だぞ。よくまぁ……でも、アリシアは着てない。
アリシアの方見ると俺の言いたい事をわかったのだろう。
「私は後衛だからね。ミーティアちゃんみたいに前衛じゃないから。それよりもどこか悪いの? 教会で格安のポーションを配っているんだけど……クロウ君なら無料でいいのに」
よく見たらお布施箱。と、書かれた箱があり銀貨や金貨が入っているのが見えた。
俺も金貨を1枚入れて置く。
「いや。別に普通に遊びに来ただけなんだけど……それよりも北のダンジョンから生還おめでとう」
「ありがとう。所で先生は? クロウ君1人って事は無いと思うんだけど……」
「振られた!?」
アリシアの疑問に横から余計な事をいう痴女。じゃないか、ミーティア。
「振られてないわ! 俺だけ馬鹿皇子に連れられて別行動! それよりもよかったなミーティア。こぼれる物が無くて、似合ってるよ」
「ふにゃ…………ぬううう!」
「せまい室内で構えるな! アリシアも困ってるだろ!」
ミーティアが構えた手足には魔力がともなってるのが見えた。
本気で辞めて欲しい。
「ふふ、相変わらずだね。ここに来たって事は私に用事かな? 残りのポーションは少しだし、もう少し待ってもらえれば時間が空くけど」
「じゃぁ待たせて貰おうかな。特に用事ってわけでもないけどクィルは?」
「ギースさんと一緒にヒーローズの街にいると思う。クィルさん亜人には帝国よりそっちがいいって」
そっか。
何とも言えない空気だ。
とりあえず部屋の裏口から奥に進んだ。
待つ事数時間。
他の偉そうなシスターや神父さんから『聖女アリシアの知り合い』認定を受けた俺は高待遇で待たせてくれた。
「お待たせ!」
「おう!」
「………………お菓子に、本、教会で禁止されてるアルコールに、豪華な枕と、本当にクロウ君らしいよ」
「うわっミーティアちゃんでもここまでされないよ!?」
どうやら、待遇が良すぎたらしい。
俺は『よっこいしょ』と言うと起き上がる。ミーティアが「おっさんくさい」って言うけど中身はまだ20代だからな!
聖女様の部屋。と書かれた部屋に通されてそれぞれの再会を喜ぶ。
破廉恥ミーティアはさすがに上着を着て肌を隠して座っていた。
「脱いでいた方が患者さん沢山くるからね!」
「そんな患者にはポーション渡さない方がいいんじゃないの?」
「にっひっひ、そういう人には水を出してるから大丈夫」
俺は慌ててアリシアを見ると、アリシアはほほ笑むだけだ。
「教会の運営も手伝ってるの、もちろんポーションで治らないような人は私が回復魔法かけるし」
「なるほど……でも特に本当に顔を見に来ただけ。ああそうだ」
俺はポケットからチケットを2枚出す。
「皇女サンから使ってくれってフリーチケット。この辺の食べ物食べ放題らしいよ」
ミーティアがすぐに奪うと1枚はアリシアに渡す。
「クロウ君のは?」
「別に俺はいらないし……」
「ありがとう」
どういたしまして。と返事を返すと世間話を開始する。
俺が帝国に来た理由や王国に現れた飛空艇。
明後日の皇女誕生会に呼ばれている事、大題的にやるわけじゃなくてひっそりとするので規模は小さい事。
ここ最近は色んな人が挨拶に来る事、そんな中で俺の事を知っていた人がいた事などだ。
「へぇ。ゴーレムマスターの女性と貴族男性か」
「うん。クロウ君と先生の事知ってたよ」
懐かしい。トトとザックだろう。
「なんでも次の開発に使いたいとかサンさんが探したみたい」
「確かに使えるもんな。そもそも一般兵士の代わりにゴーレム使えば最強じゃない?」
「…………クロウ君それをするとゴーレムを持ってない国は負けちゃうよね」
「うん、だから王国も対ゴーレムの兵器を」
「それじゃ世界が滅びそうなんだけど……」
アリシアが困惑してるが、それで世界が滅ぶなら滅ぶのが運命だったんだろう。と少なからず思う。
俺とアリシアしか会話はしてなくミーティアを見るといつの間にか寝てる。
「寝るな」
「ふぁっ!? 難しい話終わった?」
「何も難しくないけどな」
正ヒロインのアリシアと話すとやっぱり安心する。
俺の記憶が戻らなかった時に一目ぼれして奪うだけあるわ。
それで殺されるけど。
「だって、同じ船が出て来たとか戦力を上げるとか戦争とかさー、もっと拳一つで語りあえばいいのにさー戦った後は宴会しようよ宴会」
「ミーティアみたいな奴がいれば楽だろうな」
「私も同行できればいいんだけど……」
アリシアが一緒に来てくれそうな空気になってる。
「クウガが城にいるし離れるわけにいかないだろ」
「もうクロウ君まで、何度も言っているけどクウガ君とはただの幼馴染よ?」
「その属性は強いよ。アリシアだってそのうち子供作るんだろ?」
俺としては普通に会話したのだけど、アリシアは即答しなく俺を見たまま数秒固まった。
「…………そうよね」
「ふにゃー? アリ姉ちゃん?」
「体調悪いのか?」
「え? 全然!? この通り魔力もすごい調子いいよ!」
無駄に回復魔法を俺にかけてくるあたり大丈夫なのかな……?
そのまま夕食をご馳走になり城に戻ったのは翌日だ。
聖都タルタルまで戻るまで特に大きな事も無く、小さいながら皇女サンの誕生日パーティーも無事終わる。
俺はサンに《《『肩たたき券』》》をプレゼントした。
だってさ! 相手は皇女だよ!?
俺が出せるプレゼントっても相手は俺よりも買えるんだしさー。
気持ち? ってなると色々また困る。
ネックレスや指輪も考えアリシアにも相談したけど『クロウベルの気持ちが大事だよ』って言われたし。
サンの事だから直ぐに破り捨てると思ったが「大事にしますわね」と大事にしまわれた。
別なのにしとけばよかった……。




