第215話 めっちゃ喋るじゃん……アーカス談
時の城、その中央にある庭。
俺と師匠達と再会はしたのだけど、ちょっと見ない間に顔つきが変わった。というか。
3人とも本当の仲間になった感じが出ている。
それに引き換え相変わらず俺は部外者感が出ているきがするのが悲しい。
例えば食事。
3人は説明する事もなく準備を分担してるし、パーティーの役割も誰も説明しないで動いてる。
俺も手伝おうと聞くと『座っていて』と言われる始末。
「これでも食べてクロウベル君」
「どうも」
「お主。それよりもお主は《《この城にいつ入った》》?」
「夕方ですね。詳しく言えば昨夜にこの城の事を教えて貰ってから次の日です」
ありのままを離すと師匠は唸った。
「アーカス。ステリア。すまんのじゃ……時の城と呼ばれる意味がわかったのじゃ。ここのボスが時間操作系の魔法を使うのではなく、この城の内部時間軸が崩れておる」
「なるほど……クロウベル君がこの城に来たのが僕達の時間で3ヶ月前。しかしこの城の中では同じ時間軸にいると言う事は、この城の中での時間のスピードが速い……直ぐに城を」
魔法職の2人は色々と小難しい事を言っては納得してる。
俺も理解は出来ているが、隣にいるアーカスはちんぷんかんぷんな顔だな。
「あっでもまってこの城の中になら、そのアレがあるんじゃない?」
アーカスは一度俺を見てから話をつづけた。
「アレって? 何?」
「え。ええっと…………そのアレはアレ! クロウベル君が見たら喜ぶもの」
「師匠……メルさんのパンツ以外で?」
「以外で!」
「お主……」
師匠が何か言いたそうな顔をしてるが、こういう時に発言を許しては俺が魔法の餌食になる。話題をさっさと変えなくては。
「冗談は置いておいて、俺が喜ぶものは特にないと。しいていえばステリアさんが持ってる卵。それが欲しい」
「…………渡す前に聞いて置く。何をするつもりだ?」
「目玉焼き」
「却下だ却下! この魔力の流れを見ろ。この卵の中にはきっとすごい生物がいるに違いない、絶対にふ化させる」
ちっ。
ナイが誕生する前に卵を割っておくかって思ったけどやっぱり無理そうだ。
「ちなみに冗談」
おれとて未来のナイを知ってるのにそんな事は出来ない。
どんだけ鬼畜何だって話だし。
「しいて言えばふ化したら教えてくれない?」
「なぜだ?」
「絶対的主君をわからせる」
「…………この卵が何の卵か知ってるのか……」
うおっと。
盛大なネタバレだ。
「し、知らない」
「…………そうか」
あぶない。
ステリアは納得してくれたのか、卵を後ろに置いてアーカスを見始める。
これは本気でやりたい。
あの小生意気な竜に誰が上なのかを教育したい。
ヘラヘラヘラヘラ笑って人の嫌いな顔をしてるくせに実力があって師匠とも仲がいい。
初回あった時に斬り付けたのにしなないし。心臓部分を刺したのに弱点は違ったし。
一番腹立つのは『俺なんて簡単に殺せるだろうに殺してこない事』まるで刺されて死んでも当然のような顔をして馬鹿にしてくる。
「ーい。おーい。クロウベルくーん」
「ん? なにアーカスさん」
「顔が怖いよ?」
「元からだよ?」
「そういう意味じゃなくて……クロウベル君って《《ちょっと変わった時計》》探していたんだよね? 冒険者ギルドで聞いたのけど」
…………ギルドの情報管理はどうなってるんだ。
顧客の情報がもれている。
一応ギルドには時計型の秘宝もしくは、時計職人の事を聞いた。
秘宝は知らなく、時計職人は何人か聞いたけどどれも普通の時計しか作ら無さそうだった。
ついでに過去の聖王が使っていた道具なども聞いてみたが、普通のアイテムばっかりで、何だったら墓の中に展示してますよ。まで言われたぐらいだ。
俺が未来に帰るためのアイテム。とは言えないよなぁやっぱり。
俺が未来人と知ったらこの2人にも影響があるかもしれないし。
「そうかも」
「特徴とか欲しいデザインってあるの?」
「我も聞いておきたいのじゃ」
この時代はワラワじゃなくて我なんだなって。
そういえば色々察してくれた師匠にも時計のデザインまで教えてなった。
「銀色の懐中時計で針が短針。数字は普通に0から12までで、時計の先端にカチっとボタンがついてるやつ。極めつけはそこの卵みたいに触ると手に電気が来るぐらいに感じる」
「そうなんだ! 電気ってわからないけど……何か凄い効果ありそうだね」
「そう、それで俺は未――」
「みらっ!?」
うおおおおおおお。
今未来から来たって言わない方がいいよな。って思った瞬間に喋る所だった。
アーカスも驚いて『みら』って言葉を復唱しようとしたし。
「…………いや。ミラ……ミラクルが起きそうな時計だなって……実はその時計は俺のえーあー」
思いつかない。
俺の何にしよう。
「そうじっちゃんの形見なんだ」
「お爺さんの形見なのに秘宝なの?」
「…………冗談です。記憶喪失に関係してるんだよ、うん。それだ」
なんて自然な言い訳だ。
3人とも突っ込んでこないし。
ステリアが軽い咳払いをして話かけて来た。
「僕達も少し探してみよう。先ほどアーカスが宝物庫と呼ばれる場所に行ったけど」
「特になかったわよ。鍵は壊れていて武器など一応持って来たけど……メルさん、いいでしょうか?」
「ん、我のマジックボックスに入れて置こうなのじゃ」
あー宝物庫ってさっきのか。
俺が左側から出て来たけど右から入ったのかな?
なんにせよよく時間が被らなかったものだ。この辺も時間軸のずれが起きてるのかもしれない。
「しかし……早めに城を出たほうが良いじゃろ」
「そういえば、俺が体験……じゃなくて聞いた話ではこの城の時間軸ですけど。1日が1年の時や城の中で数ヶ月が外の時間で数秒とか色々ですね」
「なるほどなのじゃ……」
師匠が返事をするとステリアが立ち上がる。
「メル。少し手伝ってくれないかな? この城の時間軸を調べ固定する。ボスがいた部屋が怪しい……アーカス。彼から色々聞いておいてくれ」
「え? ちょっとステリア!」
「今の僕達には必要と思うんだ」
ステリアは立ち上がると師匠を連れて中庭を出て行った。
残されたのは俺とアーカス。
周りには簡易キャンプセットがあり、スープがコトコト煮られている。
俺もアーカスもお互いに無言になる。
別に彼女でも仲間ってほど一緒にいるわけじゃないし……何を話していいか。
「ク、クロウベル君」
「何?」
「す、好きな食べ物は……」
「お見合いかっ!」
思わず突っ込む。
「だって……」
「俺に聞きたい事ってもどうせこの城の事でしょ?」
「え? ああっ! うん。そうなの! 敵とか建物とか《《先に来た》》クロウベル君なら知ってると思って」
「先っても数時間先だしなぁ……全体的な部屋数は見ての通り。地下には宝物庫。宝物庫からさらに地下に歩くと温泉が湧いていて先が見えないほどの広さ。上の方に食堂があってその近くには寝室やゲストハウスの場所。その近くにも書庫があったはず。周りの敵はカイザーアイやカイザーラヴィット。前者の弱点は眼玉。ネズミのほうは物理と火。ただ数が多いから無理に戦わなくても……魔石も出ないし。それぐらいかな」
アーカスが黙ってしまった。
「あの、すごい情報量が多いよ……隠す気あるのかなぁ」
「何が?」
「な、何でもない! それにしても温泉ってあの温泉?」
「お湯が出る温泉以外を温泉と呼ぶなら違うけど」
「クロウベル君って嫌な言い方多いよね」
「え!?」
そうなのか……こう女性に言われると傷つくものがある。
「ごめん。そんなに落ち込むとは思ってなくて」
「いや、俺の方こそ」
発言には気をつけるか、元悪役令息だけあって見た目も悪いのに口まで悪かったら最悪である。




