第213.5話 アーカス日記 2819日目 (視点変更
アーカス。
それが私の名前……いずれは英雄になりたい! って事で魔物に襲われた村を復興した後、同じ思いをさせないためにステリアと一緒に出て旅をしてもう5年。
そこそこ強くなった。と思ったんだけどタルタンの街で金策をしていた時に変な人を見つけました。
何もない聖王の墓の前で鉄格子を握ってる男性。
鉄格子に足をかけて開こうとしてます。
遠くから見ても、ヤバヤバの人間です。
こんな場所に人間は来ないし、一瞬魔族? と錯覚したぐらいに、でも彼に敵意はないので話しかけてみました。
良い魔族なら会話したいし、悪い魔族だったら残念だけど戦うしかない。勝てる勝てないじゃなくてこの世にいては駄目。
思い切って話しかけると普通に返事をしてくれた。
その彼は名前は『記憶喪失のクロウベル』それが彼との出会いだったのです。
記憶喪失の人間は沢山見て来た。
色んなショックな事があって記憶を無くす人達だ。
そんな彼を見たステリアは記憶喪失したふりをしてる。と小さく言っている。
うん。だめだよ? そんなに人を疑っちゃ。
でも私は直ぐに彼の事を驚く目で見る事になったのです。
その彼なんと飛んでもない物を隠していたから。
彼の持つ剣。
その剣に見覚えがあるの。
私の故郷で友人の作ってくれた最後の剣。
それにステリアの魔力と私の血を混ぜた剣で自動修復付のこの世に1本しかない剣なのに、彼はそのレプリカと思われる剣を持っていた。
もうしかしたら友人の作った剣がまだあったのかもしれない。
心ではそんな事はない。と思っていても、違うだろうなと思って気になります。
でも、初手を間違っちゃったので彼は剣を見せてくれません。
そんな中。
メルさんという魔法使いさんとお知り合いになる事になりました。
クロウベル君。
どうやらメルさんに惚れているような?
うん。男性はおっぱい大きい子が好きだもんね、ごめんねステリア。私が大きいわけじゃなくて。
恋人のステリアに一応謝っておく。
幼馴染のステリアは私の恋人。
初期の日記に書いた事がある、うん。まだ破局はしてないからね。
最近そのステリアの小言が少しうるさい。
話を戻そう。
なんやかんやあってクロウベル君をステリアが捕縛してくれた。
彼の持つ魔法の一つ。
影縛り。
一瞬であるけど彼の動きが止まったので急いで縄で縛りあげた。
縛り上げてる時から『記憶喪失のクロウベル』君は変な声を出しまくって困る。
男の人って縛られる事が好きなのかな?
ステリアも前に私を縛って来た。
うおっと、日記なのに思い出日記になっちゃう。
クロウベル君から剣を見せて。というとやっと見せてくれた。
私は彼に見せないように背中を見せて剣の柄に隠している魔石を取り出す。
魔石の入っているくぼみには『忘れるな英雄の気持ちを』と『私の字で書いてある』。急いでステリアを呼び見せつけると、ステリアの顔がドン引きしていた。
魔法使いであるメルさんも一緒に覗き込んだので、口元に指を当てて静かにしてもらう。
私は自分の剣を取り出して、同じように魔石を外してくぼみを見せた。
全く同じ文字が出てくる。
模倣魔法。
魔法馬鹿であるステリアからそういう魔法があると聞いた事ある。
でも、それであれば一度剣を彼が見てないと無理。
ステリアも首を振った。
魔法使いのメルさんが、小さくなるほどなのじゃ。と呟くのが聞こえた気がした。
もしかして彼って。
私の子孫…………うん。
《《私の子孫があんな変態じゃない。》》絶対に違う。
でも、考えれる事はそういう事かもしれない。
彼は未来から来た可能性がある。
だって彼が持ってる剣は刃こぼれこそしてないけど、私の剣よりも使い込まれてる。
何のためだろう。
これは私達だけの秘密にしたい。
だって正体を言ってしまったら苦痛で死ぬ魔法がかかってるかもしれないし。
未来では私は英雄になれたのだろうか。
聞きたいけど聞きたくない。
彼の正体をバレた事をバレないままに私は彼を未来に返そうと、と思う。この作戦をステリアと共有したい。
メルさんはどうしよう……魔法使いは多い方がいい。
私達の仲間になってほしいけど。
ステリアは『辞めて置いたほうがいい』と忠告してくれたけど、運命を感じる。
英雄になる。それは『記憶喪失をしたふりのクロウベルくん』を未来に返す事だ。
――
――――
「…………なにこれ」
私は突然の言葉に日記を隠した。
「うわああ! ステリア。突然話しかけないでよ。日記よ日記」
「そう、一週間分をまとめて書くのは日記って言うのかな? 日記は毎日書くから日記って言って――」
「細かいわよ」
ステリアは私の近くに座ると顔を歪ませる。
「彼は寝たみたいだ」
「そ、そう……」
私は日記のページをめくって続きを……ステリアが私の日記を読んだようだ。
「アーカス。これ日記だよね? 手記。事実と違う妄想が入ってるよね。いや、妄想というか願望が強い。あと僕は魔法馬鹿じゃないし、大きいから好きってのもないからね」
「うわぁ読まないでよ」
「じゃぁ1人の時に書いてよ。話があるからって言うから来てるんだ」
「ごめーんって」
部屋に小さいノックの音が聞こえたので私は押し黙る。
もしかしたらクロウベル君かもしれない。
「ああ。入って」
私の代わりに返事をするのはステリアで入って来たのは魔法使いのメルさんだ。
「夜分にスマンなのじゃ」
「あっこんばんは………………も、もしかしてステリアは3人でしたいの?」
「…………本当に彼は君の子孫なんじゃないのか? 変態な所がそっくりだ。昼間の剣の確認、あの時に彼女メルさんが見せた表情を見て、何か知ってるのかと思って声をかけたんだ。聞けば彼女メルさんとは別の次元で彼と会っている可能性が高い。との事、《《彼から出来る限り未来の情報を引き出して》》戦いを優位に進めよう」
「いや。駄目よ。未来は知っていたら意味はない」
私はステリアの意見に反対だ。
日記にも書いたけど、不確定だから人は動く。
魔物に滅ぼされるのがわかっていればもしかしたら何をしても滅ぼされる。と思い込む。それじゃ勝てるのも勝てない。
「魔物に負ける未来があれば、それを回避も出来るだろ」
「彼に気づかれるわよ。変な所にカンが良さそうだし」
「………………わかった。君がそういうなら僕も控えよう。しかし彼を早く元の時代に戻したほうがいい。帰るべき場所がある人間なら。メルさんいいだろうか? 手伝ってもらって」
「我は構わんのじゃ。しかし……いいのか? 恋人なんじゃろ? 我のような女が入って」
メルさんが困惑してる。
「少し居心地が悪いかも知れませんか、恋人と言っても旅が終わるまで友人みたいなものですし。もう少しパーティーを強化したいと思っていたんです……ダメ……でしょうか? 魔法の事は私全然だけどステリアが魔法馬鹿で」
「馬鹿じゃない。魔法知識が好きなだけだ」
メルさんは私にはない大きな胸を弾ませて考えた後に右てを差し出してくれた。




