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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第205話 墓穴を掘る。墓だけに

「下さい……先生! 起きてください!」

「!?」



 俺体を揺らされて起きると、車の中にいた。

 目の前には聖都の門が見え俺の頭は混乱する。



「先生じゃないからね……って。え!? いつの間に聖都に」

「あの。先生がゴールダンから帰る。って言ってからすでに5日目ですけど……?」



 まじか。

 いや、確かに初日は寝てたよ?

 でも2日目から5目の記憶が曖昧だ。


 そう言われると、誰か運転上手いかコンテストをして俺が1位。フォック君が2位。棄権したのはセリーヌで、4位に崖から車を落とした師匠だったなどの記憶がよみがえる。


 あの時は死んだかと思った……。



「師匠達は?」

「もう聖都の中に入ってアンジェリカ副隊長と打ち合わせに行きましたけど。ボクはこの車を修理にだすのに、その」



 ああ、なるほど。

 修理にだすのに寝ている俺が邪魔なのか。



「悪いね。さっさと出るよ」

「いえあの、ごめんなさい」



 謝られる理由は本当にないのにフォック君が謝って来た。

 俺が車から降りようとすると、服を引っ張られた。



「先生!」

「いや、先生じゃないし何?」

「…………あの、ここで別れたらもう先生と一緒に旅を出来ません!」

「……まぁそうだね」



 俺の事を先生と呼んでるのはあくまで聖騎士隊の臨時訓練講師としての仕事だったからだ。

 本来ならそれも終わっているし、すでに先生と生徒の関係は無いんだけど。



「あの、これからも先生でいてくれますか!」

「嫌だけど」



 茫然と固まるフォック君。服を掴んでいる手を俺は離すと車を降りた。


 別に師弟の関係も結んでないのに先生と呼ばれるのは嫌だし。

 …………そう考えると師匠は凄いよな。

 俺と師匠って師弟の契りをかわしてないのに、俺が師匠って呼ぶ事を容認してる。


 胸も尻も大きいが懐も大きいだろう。

 俺? 俺は小さいよ。

 別に名声も弟子もいらないし、知り合った友人が幸せなら俺も幸せって考えるぐらいだ。


 俺が聖都に入ろうとすると、目の前にいた門兵が急に叫んだ。

 後ろがあぶない! と叫んでいて俺は振り返ると、車が俺に突進してきてる。



「うおおおお!!! ミ、水盾!」



 両手を前にして全面に水盾を発動する。

 水で出来た盾の反対側では、泣きながらアクセルを踏んでいるフォック君が見えた。



「先生に認められないぐらいならいっその事死んでください。ボクも後から死にます!」

「うおおおおおお!!」



 並大抵の事なら押し返せる水盾が馬力に負ける。

 水盾・連のほうがよかっただろうが、これ再詠唱しようとすると多分間に合わない。



「わ。分かった!」

「先生死んでください!」

「先生じゃないし……いや。臨時で師弟の関係もつ。もつから!!」

「え。本当ですか!?」



 アクセルから足を離したのだろう、俺に襲い掛かる力が消えた。

 前方に出した水盾も力を失って消えていく。


 はぁはぁ……死ぬかと思った。

 師匠とまだイチャイチャもしてないのに、死んでたまるか。

 それ以前に、この世界でも車で引かれて死んだら俺の魂はどこに行くんだ。


 俺の気持ちを知らないフォック君は車から降りると俺の手を握締てくる。



「じゃぁこれからは本当の先生ですね!」

「…………よし、卒業」

「え?」

「いやだから、先生の俺から見てフォック君は卒業しました。後で卒業の証送るから。じゃっ」



 フォック君は無表情で車に戻ると俺に向かって車を突進させて来た。



「うおおおお! 無言は辞めて! 怖いから!! 水盾!!」

「聖騎士フォック! 聖騎士隊特務車から降りて待機!!」



 俺の耳元で女性の声が聞こえた。

 この声はアンジェリカである。


 俺に車で体当たりをしようとしたフォック君は直ぐにエンジンを切って車から降りた。

 その横で直立不動になって左手を胸の前に持っていく。



「………………助かったよアンジェリカ」

「あの、この車は聖騎士隊の特務車なのよ? それを聖都に入る所で暴走騒ぎとか何考えるのかなクロウベル君は、通報が入ったんだけど?」



 優しい笑みなんだけど、めちゃくちゃ怒ってる。

 実際は見えないけど怒りのオーラが見える気がするもん。



「俺が悪いんじゃなくて」

「途中から聞こえていたわよ、いいじゃないの先生になるぐらい。クロウベル君だってメルさんの押しかけ弟子なんでしょ?」

「俺のは運命の糸に結ばれてるからいいの!」



 アンジェリカはポケットから赤い糸を俺に手渡して来た。



「え、なにこれ?」

「クロウベル君の運命の糸。あら切れてるわね」

「辞めてくれる!? これ、普通の糸だよね!」

「ふふ、普通の糸よ。フォック君の事を何とかしないとこの手の事もっとするわ」



 酷い嫌がらせだ。

 本当に聖騎士隊副隊長なのか? 酷いにもほどがある。


 前世の記憶で『言霊』という言葉がある。

 例えば俺が強い! と声に出すと本当に強くなる自己暗示の一つで、アンジェリカはこれを俺にする。と行ってくるのだ。


 俺の運命の赤い糸がアンジェリカの呪いのよって千切られる。



「…………わかった。わかりました!」

「よろしい。では聖騎士隊フォック! 返事を!」



 俺に笑顔を見せるアンジェリカは次にフォック君を呼んだ。



「は、はい!」

「特務。引き続きクロウベル氏を護衛しつつ帝国に行く許可を与えます」

「ア……アンジェリカ副隊長!!」



 うわ。凄い嬉しそう……俺は全然嬉しくないけど。



「とにかくお疲れ様。白の書を取りに聖王の墓には明日行くから今日はゆっくり休んで」

「聖王の墓って……歴代の聖王が入ってる迷宮ダンジョン、何代か前の聖王のむくろがボスの所?」

「………………何でそんな事知ってるのよ」



 うわーっと!

 やらかした。

 アンジェリカの眼がとても細くなって鋭い。

 なんだったら俺にばれないように腰の剣をいつでも引き抜ける所に手がある。


 ばれてるけど。



「聖王に聞いた……」

「……………………へぇ。ふーん。へぇ…………おかしいわね。聖王様はそんな事言わないはずなんだけど?」

「聖王に聞いた……」

「へぇ……」

「せ。聖王に……」

「ぷっ……! もういいわよ。そういう事にしておいてあげる! メルさんの予想通りだわ。メルさんが言うには『ドアホウにダンジョンの名前だけ伝えてみるのじゃ。きっと面白い答えが出るのじゃ』って」



 た、助かったのか。

 そりゃ過去の聖王が迷宮ボスにいるってばれたら色々大変だもんな。

 だってゲームではそうだったんだもん。


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