第204話 君、男の子だよね……?
誰もいない廊下を歩きそっと扉を開けた。
部屋の中は意外に明るく魔石の照明を使っては本を読んでいる聖王ことバルチダンが本を閉じて俺達の方を見てくる。
透明マントでばれるはずないんだけど……。
扉を閉めると聖王はゆっくりと話しかけて来た。
「こんな夜更けにどなたかな?」
「あっやっぱり見えます?」
俺は透明マントを頭からとると聖王はにこやかな笑顔になる。
「感じる。と言ったほうがいいでしょう。これは悪い魔法使いさんのご友人であるクロウベルさん。という事はもう一つの魔力は悪い魔法使いさんかな?」
「さすがは聖王というやつじゃな。ワラワじゃ」
師匠もマントを脱ぐと顔を表した。
俺は思わず聖王の腰に抱きついた。
「おや? どうなされました?」
「聞いて下さいよ! 俺が聖王様の宿を知らないって言ったら師匠がぶちきれて、そこから聖王様の宿を探す事5件目。もしかして宿じゃなくて屋敷? と思って、やっとそれらしい屋敷を見つけ魔力の罠があるから気をつけてるのじゃ。って俺に忠告した師匠が、落とし穴にはまったりして警備に追われるし」
「な、あれはドアホウがワラワの尻を触っただからじゃろが!」
「俺は胸かと思って触ったんです! だからノーカン」
「なわけあるかなのじゃ!」
「所で2人の漫才をみせにきたのかい? 今度巡礼で行く教会に2人が出てくれると助かるのだが」
おっと、話がそれた。
「聖王よ。白の書の解除キーを教えるのじゃ」
「…………はは、何ゆえに?」
うわっ聖王のバルチダンが笑顔で答えているが目が怖い。
「どこかの皇帝が呪いか何かで死にそうらしいからのう。成り行きで助ける事に」
「ああ……しかし参りましたな。公務が続いていけませんな」
「だからワラワが行くのじゃが?」
「うーむ。困りましたな……いくら悪い魔法使いさんの頼みでも、おいそれと……」
元聖女でも駄目なのか。
「師匠の消費期限切れてるから、教えれないって事です?」
「ドアホウ……魔力が完全に戻ったら覚えておけ」
「わお。冗談ですって」
師匠の髪はまだ黒い部分が多く魔力は全部じゃない。
ちょっとからかったら本気の怒りが飛んでくる。
「いや、俺は消費期限気にしませんし。ちょっと腐りかけてもいけますから」
「ドアホウ……」
「聖王様!」
俺と師匠が入って来た扉が大きく開くと、《《フォック君》》が剣を持って入って来た。
俺と師匠をみると、いきなり剣を振って来た。
早い!
軽くジャンプしての見事な一刀両断の振り落とし。
俺はフォック君の顔を右手で押さえ、余った左手を股間を掴んでベッドに投げ飛ばす。
「ふきゃ」
フォック君は女の子みたいな悲鳴を上げて聖王が使うはずのベッドにちょこんと座った。
「寝かせようと思って黙って来たのについて来たか」
「ななななな! 聖王様! 痴漢です! 痴漢!!」
「股間を触ったぐらいで、風呂場で俺の奴をジロジロ見ていた癖に」
「み。見てません!!!」
「おや、そうなのですが? アメリン」
え? 誰!?
俺は聖王を見てから、ベッドの上で内またになってぶるぶる震えているフォック君…………と思う人間を見る。
「どうみてもフォック君だけど?」
「フォックはあたしの兄!!」
「いや。男でしょ? 胸ないし」
「っ!?」
隣から「ドアホウ……」と師匠の何か諦めた声が聞こえて来た。
「む、胸なら胸を見せれば女だってわかるんだから!!」
自称フォック君の妹は服を脱ぎだす。
まな板のような胸はちゃんとブラジャーをつけていた。
よく見るとだいぶ混乱してるらしい。
「仕方ありません……スリープ」
聖王が小さく魔法を唱えると自称フォック君の妹はパタンと横に倒れた。
ブラジャー姿で寝ている子に聖王はゆっくりと毛布を掛けていく。
「紛れもない女性ですよ。なるほどフォックをご存じでしたか。彼女はフォックの双子の妹でアメリンといいます」
「そうなの!?」
「はい」
俺は慌てて師匠を見た。
師匠はまだ手をおでこにあてている。
「女性だってわかるじゃろうに……ワラワでさえすぐ分かったなのじゃ」
「さいで……でも同じ顔ついているんですし……」
「彼女には夢でも見た。と伝えておきますか……仕方がありません。これを」
聖王バルチダンは首飾りを外して俺に手渡してくれた。
「これは?」
「宝物室の鍵です……何代も前の《《聖女様》》が作った鍵ですね」
聖王は師匠の方を見る。
流れ的に師匠にネックレスを渡した。
「俺からのプレゼントです」
「殺すぞ」
「冗談です」
師匠に似合うと思うし、場を和ませようと思ったのに、この仕打ち。
「もう壊れたかと思っていたのじゃが……まだあったのじゃ」
「ええ。基本の術式は解読されてませんからね」
「用が終わったらアンジェリカに渡しておくのじゃ」
「お願いします」
聖王が師匠に礼を言う。
何か歴史的な瞬間をみているのでは?
ネックレスを首に付けた師匠。
そのネックレスの先端にあるブローチが師匠の胸の谷間に埋まった。
「さ。帰るのじゃ」
「………………そうですね」
もっと見ていたいが、流石に帰らないと俺も眠い。
もう一度透明になる布を頭からかぶってゆっくりと豪華すぎる大きな屋敷を後にした。
俺と師匠が宿に戻るために街を歩くと、朝から仕事などに行く人々が増え多くなっていく。
「後は帰るだけなのじゃ」
「運転はフォック君に任せるとして少し仮眠してから戻ります?」
「いや、早めに戻った方がいいのじゃ……ワラワはこのまま馬車屋にいって車とやらを手配してくるのじゃ。後で街の入り口でなのじゃ」
「了解」
宿に戻ってとりあえずはソファーに座り込む。
寝ているフォック君とセリーヌを起こし師匠と合流するだけだ。
さすがに欠伸が出る。
別に徹夜が苦手とかじゃなくて普通に眠いからね。
突然に背後の扉が開いた。
「先生! おはようございます! 良い朝ですね」
「先生じゃないからね…………フォック君ちょっとこっちに」
15歳という可愛らしい顔をした少年フォック君は俺の前に歩いてくる。
うーん。
双子と言っていたし似てるな。
俺の身間違いって事はないだろうし、もう一度確認しておきたい。
俺はフォック君のズボンを手前に引っ張りパンツの中のフォック君を確認する。
俺のと違って少し小ぶりであるがフォック君が『やぁ』としていた。
「っ!? 先生!!??」
「あっやっぱ男か」
俺は手を離すと、座っていた俺の顔の横。そこにセリーヌの顔が見えた。
「うお!? セ、セリーヌ!?」
「あら、姿隠しをしていたはずなのにセリーヌばれたみたい。セリーヌ男同士でするまぐわいに興味があるの。メルママもいないって事は見せてくれるって事よね?」
「せ、先生!? そ、その優しく……」
「しないから!!」
「じゃぁ激しくなのね。セリーヌ興奮」
「ただの確認、確認だし! さて用事は済んだし帰るぞ帰る!」
俺は慌てて廊下に出る。
フォック君が走ってきて「聖王様に会いに行かなくていいんですか!?」と効いて来たので「要件は終わった」と短く言う。
別に透明マントで忍び込んで密会した。は今言わなくても車の中で言えばいいだろうし。




