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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第198話 魂で叫ぶ声

 アレキとその部下数名が操縦する小型飛空艇『コメットⅡ改』に乗せられて空の旅。 


 上空から見る景色はいつ見てもいいもので、狭い操縦室にある椅子に座っては全面にある窓を見る。


 他にする事ないし。


 中央にある操縦席を挟んで反対側に師匠がいて、その膝にセリーヌを乗せている。


 セリーヌは「人間ってすごいのね」と何度も言うので周りの大人に微笑ましい顔で見られているが、その正体を知っているアレキだけは騒ぎは起こすなよ。と緊張顔なのが面白い。


 さて……あの伝説のアイテム、ラストエリクサー! と、言っては見たが、ゲームプレイではその伝説は複数個手に入る。


 俺がプレイした時でも2個から4個。

 ランダムドロップもあるからしかたがないね、さらに言うとゲームでは全然使わない。


 効果のほうはパーティー全員にHP(ヒットポイント)MP(マジックポイント)。呪い。がフル回復し、同時に自動回復もつく。

 説明書きでは空腹も回復するが、ゲームでは空腹というシステムはない。


 ……うん。

 ゲーマーならわかると思うけど《《使わないのよね》》。

 もったいない。も勿論あるけど、必要ないのだ。


 だってパーティーにアリシアがいるし。

 ハイ・リザレクション(死者蘇生)すら唱えるアリシアだよ? MP回復アイテムなら個別にあるし、呪い装備もそこまで多くはない。

 別に装備しなければいいだけだし。


 HPの自動回復装備もあるし魔法もある。

 さらに効果は戦闘中の5ターンだけ。


 RPGあるあるで序盤で手に入れた回復アイテムがゴミになるのと一緒で、終盤にそんなアイテム貰っても結局使う暇がないし使い所がないのだ。

 じゃぁ売ればって思うが、売っても安いか買取拒否されるという。

 


「先ほどから無言で何を考えている。暇だったら操縦ぐらい変わるのが当たり前じゃないのか? オレは皇子でお前は狗だ。聞けば妹が言うには操縦は中々の物らしいじゃないか。オレほどではないと思うが――」



 長文で淡々とネチネチ攻撃してくるあたりやっぱりサンと兄妹って所だな。


 飛空艇の操縦って結構気を使うのよね。

 上下間違えたら物理的に落ちるし、遠回しに変わってほしいのだ。

 でも、俺も変わりたくはない。



「何。疲れたの?」

「っ!? 疲れてなどない」

「別に俺が操縦してもいいけど、やっぱアレキの方が操縦上手いよ。船酔いもないし」



 褒めちぎる。

 ほら、アレキの顔がまんざらでもない顔になった。



「ふ。オレを誰と思っている帝国の皇子だ。これぐらい造作もない」

「そうだよね。じゃぁ頑張って」

「ああっ!」



 窓の外を見るのにも飽きたので、師匠のそばに行く。

 セリーヌを膝にのせた師匠は露骨に嫌な顔で俺を見て来た。



「酷くない? その顔……」

「誰だってミミズのように床を張って来たら誰でもこうなるのじゃ。一瞬船なら落とそうと提案する所じゃったのじゃ。で……要件はなんじゃ?」

「師匠の横に居たいだけですけど」



 師匠がスーっと息を吐いて何かを言おうとする。

 窓の外を見ていたセリーヌが突然に俺を見た。



「メルママ。人間のオスって思ったよりも気持ち悪いのね。生きていていいのかしら?」

「生きるからねっ!?」



 俺は急いで立ち上がると壁に寄り掛かった。



「セリーヌよ。気持ち悪いのはドアホウだけじゃ」

「そうなの!?」

「俺がそうだよ。って言っていいか謎だけど、俺だってこういう事スルの師匠だけだよ」

「ふーん……セリーヌよくわからないわ」



 俺と師匠がキャッキャしてると、大きな咳払いが聞こえた。

 振り向くと操縦桿を握っているアレキだ。



「何?」

「…………気が散る。少し黙っておけ、出なければお前だけでも船から落とす」



 もてない男の妬み。か……今回の場合に限っては俺は要らないもんな。


 師匠1人入れば話はスムーズにいく。

 それにアレキだったら本当に俺を落とすだろう。

 仕方がなくお口チェックマンとなり静かに師匠の横に座る事にした。


 師匠は思いっきり嫌そうな顔をしたけど、俺が何もしないとなると、聞こえるようにため息をついてセリーヌと喋りだす。



 途中休憩をはさみながら4日。

 聖都タルタンが見えて来た、上空から見るとアリシアの実家も見え少し懐かしい気持ちが出てくる。


 街の入り口に飛空艇を着陸させると、前にあった時よりも少しお腹の大きくなったアンジェリカが出迎えてくれた、その顔はすごい嫌そうである。ってか嫌なんだろうな。



「もう。遠くからでも見えたわよ……誰が乗っている思えば……また貴方達なの……っと、これはこれは皇子様。このような聖都にどのような御用でしょうか? 帝都の地下だけでは飽き足らず聖都も取るつもりで? 悪いですけど要請がない以上、入国許可はおりないかも……最低でも友達の指名手配を解いてくれるまでは」



 友達というのは俺と師匠の事だろうか?

 挑発を受けたアレキ皇子をみると、こっちも眉間にしわを寄せている。



「ふん。田舎の騎士め」



 前回が前回だ。

 仲悪いのが当たり前だよなぁ。



「まぁまぁアンジェリカ。この皇子はここで帰るから……」

「じゃぁ早く帰ってください」

「ちっ……魔女! そして狗よ。絶対に手に入れてこい」



 捨て台詞を吐くとアレキは『コメットⅡ改』に乗り込むと聖都タルタルから出て行った。


 その姿が見えなくなった所で、アンジェリカが息をすうっと吐く。

 声色が変わり俺と師匠にハグをして来た。



「メル様。クロウベル君、久しぶりってわけじゃないけど、久しぶり? 連絡してくれれば迎えを寄こしたのに。今度はどうしたの? 帝国と取引するぐらいなら部隊いくらでも貸すわ」

「懐かしい匂いのするお友達ね」



 セリーヌはアンジェリカの前にいくと青いワンピースを摘まんで可愛らしい挨拶をする。



「え? 可愛い……メル様のお子様ですか? え、って事は君、変態すぎて振られたの?」

「振られてないからね!?」

「ワラワの子でもないからなのじゃ!」



 俺と師匠が同時アンジェリカ言うとアンジェリカが困り顔になる。



「セリーヌ。メルママに捨てられちゃった」

「え、でも……」

「ワラワの事をママと呼ぶ…………ええっとじゃな。ああそうなのじゃ。ナイと血を分けた妹じゃ」

「ナイ君の!?」



 アンジェリカが驚くとセリーヌは可愛らしい笑みを浮かべ、第3の眼を開いてはアンジェリカを見た。



「なんだぁ、ナイお兄ちゃんの匂いだったのね。あまりにも美味しそうな匂いをしていたのに……ねぇ、セリーヌに美味しい物を食べさせてくれる?」

「よ、よろこんで……」



 アンジェリカが返事をするとセリーヌの第3の眼はタトゥーに戻る。

 普通の可愛らしい女の子になったセリーヌはアンジェリカの腰に抱きついた。



「クロウベル君って本当厄介事もってくるよね」

「別に俺のせいではないよ。本気で……」

「世話になるのじゃ。聖王に会いたいのじゃが面会はできるなのじゃ?」

「えっ!? いませんよ?」



 アンジェリカが出鼻をくじく一言を突き付けた。



「うううううああああああああああああああああああああああ!!!」



 俺は思わず叫ぶ。

 アンジェリカがびっくりして、セリーヌが力を入れたのが見えた。

 師匠は俺から距離を置くし、アンジェリカと一緒について来た聖騎士隊数名は武器を構える。



「ド、ドアホウ……!?」

「あああ………………ふう。いや、まだお使いか……と思うと思わず叫びたく」



 と、言うか叫んだ。

 ゲームみたいに10分。20分。で行けるイベントじゃないんだよ!

 聖都に着くまでだって数日かかっているんだから、俺だって切れるよ!?



「何かごめんね。聖王様は忙しいんだよ……今頃はゴールタンの闘技大会じゃないかな。本来であれば私が出ているんだけど今年は無理だし、若い隊員が一緒に行っているよ」

「アンジェリカよ。謝る必要は無いのじゃ、どれ馬車の手配を」

「馬車ぐらい私の方で手配するわ。今夜ぐらいは屋敷で疲れをとっていって、それにナイ君の妹だったらなおさら歓迎したいし」



 アンジェリカが提案すると、セリーヌが笑顔になる。



「それは嬉しいわ。でもセリーヌ、サンドイッチ以外のものが食べたいの。もう何も無いのであればネズミでもいいわ」

「クロウベル君普段何食べさせてるの?」

「普通の物だよ普通の!」



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