第179話 ハッスルハッスル
結局受ける事になってしまった。
強制イベントを吹っ飛ばすことなんて出来なかった。
いやまて! まだ吹っ飛ばすチャンスはある。
別に依頼が嫌。じゃなくて強制がいやなのだ、それに俺が動かなくても話し合いで解決できるならその方が一番いい。
無駄に危険をおかす事は無い。
簡単にアイテム取ってこい。系のお使いイベントであろうが、こっちは命がかかっている。
命が要らないような所にあるなら、このハッスルオーナーがもう取りに言ってるだろう。
詳しい話を聞いているとスターニャが飲み物とケーキを出してくる。
「お店のサービスです」
「食べたら後戻りできないような。って師匠食べてるし!」
「サービスと言うなら大丈夫じゃろ。話を聞くだけなのじゃ」
「そうですけど……じゃぁハッスルさん話の続きを」
「ハッスルハッスル!」
謎の掛け声を出してハッスルおっさんは続きを喋る。
途中で何度も姉のスターシャが補足説明を入れる話で、余計に頭に入らない。
全部を聞いた所で、解った事を確認した。
「って事は。若い時のハッスルさんが、あのチンピラの親父と約束した証文。それを逆手に取って脅してるってわけか」
「そうなのだ。やっとわかって貰ったか」
やっとも何も説明は今受けたのが最初だ。
「そんな凄いアミュレットなどあるはずがない。いや。ある。と口論が始まりいずれ店をかけてになってしまったのだ」
なんで?
なんでそこから店と従業員をかけるだ。
「もちろん。若い時の冗談と思う将来店持った時に……らしい」
「らしいって自分の事だろ?」
「それがさっぱり酔っていてな。いきなり証文を出されて困っていたのだよはっはのハッスス」
全然困っているように見えない。
「じゃぁもう引っ越せば?」
最大の解決案だ。
聞けば金もある。女性もいる。この街には店を乗っ取りたい男がいる。
全部捨てて新天地でいいじゃん。
ようは地上げ屋に土地と女が取られそう。って話だよこれ。
「ドアホウ、それは鬼じゃな」
「私も鬼畜と思います」
「マスター……本当にこの人に頼むの?」
「こんなのでも、頼むしかないだろう!」
あの。全部聞こえてますからね?
そこまで言う? 割といい考えなんだけど師匠からの信頼度も下がったようだ。
「軽い冗談だって」
自分で言っていても駄目と思ったよ。
慣れている土地を離れるのは最終手段だ。
でもさぁ、今が最終手段なんじゃないの?
「ちなみに、そのパーティーってのは何時?」
「10日後」
「ちっか!? え、10日しかないのにまだここなの!? 早く取りに行ったほうがいいよ。冒険者でもなんでもいるでしょ?」
「申し訳ございません。ハッスルオーナーが調べた所、目的のアミュレットは立ち入り禁止迷宮にあるらしく、明日にでもハッスルオーナーが取りに行く準備をしていた所です」
姉のスターシャが深々と頭を下げてその谷間を見せつける。
…………見せつけたわけじゃないか、でも俺だって男だ師匠が好きでも自然に目が行くからね。
「……頭を上げて。じゃぁ師匠行きますか……」
「ドアホウ頼んじゃぞ」
「え? 一緒じゃないの?」
「どこの世界に、その呪いとやらで力が無くなった女性を立ち入り禁止地域に連れて行くなのじゃ?」
もっともである。
今の師匠は、元魔女で元聖女だった大魔法使いメルじゃなくて、押し倒したら押し倒されるままの一般人メルなのだ。
「忘れてた」
「この女性の事なら守る! ぜひこの店にいて欲しい」
「ハッスルさんさ。もし俺が戻って来なかったら師匠は?」
「なに。逃がすつもりでいるが、ドスケッベルに取られるだろうなはっはっは!」
「駄目でしょ!?」
最悪店を取られても、ハッスルが路頭に迷っても、この美人姉妹が夜の店に身売りされて俺が客としていく興奮展開も我慢しよう。
でもだ。
師匠が取られるのは困る。
「師匠ちょっとこっちに」
俺は師匠の手を取って3人から離れる。
「な、なんじゃ。そんなに強く引っ張るなのじゃ」
「思ったよりも細いですね。じゃなくて……逃げません?」
「む!?」
正直面倒だ。
何度も言うが俺は冒険がしたいわけじゃなくて、師匠とイチャラブをしたいんだ。
でもなぜか依頼されるし、依頼が残ったままではイチャラブも出来ないって事でこなして行くんだけど、その前に命の方が落ちそうである。
あっ今は師匠と同じ不老っぽい可能性もあるんだっけ。
本当にそうなのかは生きてみないと駄目だし、再生能力も傷がないと駄目だ。
酷い話、首を斬られて生きていれば大丈夫、死んだらごめんね。
システム的にクソすぎる。
この辺はどこかで占いとかステータス確認できそうな人を探すしかない。
「とはケーキも食べたしなのじゃ」
「思いっきり買収されてる」
「それに危険なのはワラワじゃないし」
「本音はそこ!?」
「ドアホウなら死なないなのじゃ」
この説得力がまったくない師匠の言葉に逆に安心する。
「別に師匠は良いですよ、黙っていればケーキ食べれるんですし。いいんですか? 俺がわざとに失敗したって……その場合は師匠は身売りされて売られエッチなゲームみたいにされた後に投げ売りされた師匠を買って持ち帰っても」
「ほう。そういう事言うかドアホウは」
師匠がキレだしたけど俺としては別にそれでもいい。
ただ師匠を不幸にしたドスケッベルだけは殺すけど。
「だって下手したら死ぬかもなんですよ? 何かご褒美が欲しいです」
そう。
これが俺が師匠をはじに寄せた本当の理由。
このイベントが強制イベントだった場合、回避するのは難しい。
俺があれほど色んな代案を出したのに全部潰されていく。
だったらだ!
俺にも何かメリットが欲しい。
「金なのじゃ?」
「お金は別に師匠といますし」
「…………何が欲しいなのじゃ?」
さすが師匠話が早い。
「師匠の下着……とか」
師匠の眉が八の字になる。
思いっきり不機嫌な顔だ、踏み込み過ぎたか? でもまぁ俺も命をかけるんだしそれぐらいは欲しいきがする。
師匠がマジックボックスからブラジャーを取り出して俺に手渡して来た。
全然崩れてない推定Eカップのブラジャーを俺は手にする。
「まさかの前金!」
「風呂や裸見てるくせに布に興味あるとか……いやむしろ布にしか興味ないのじゃ?」
「え? ああ……それは別腹です、額に入れて飾ります」
「…………やめろなのじゃ」
思いっきり嫌悪顔だ。
別に布だけに興奮するような俺ではない。
「別に誰にも見せませんし」
「見せてたまるなのじゃ!」
「もう1個」
「却下なのじゃ。どうせ下も欲しいとか言うんじゃろ?」
「いや。デートしません?」
俺の提案に師匠の小言が止まる。
周りが静かになった。
あれ? 俺変な事言ったつもりは無いが。
「…………本気で言ってるなのじゃ?」
「え、本気と書いてマジですけど」
「ドアホウ、順番間違えてると思わんのじゃ?」
それはそのしょうがない。
俺としては下着が欲しい。師匠が断る、じゃぁデートしませんか? って流れの予定だったのに。
下着が先に来るとは思ってなかったからだ。
「若干……」
「ふう……まぁええじゃろ。言うておくが変な期待はするななのじゃ」
「ありがとうございます!!」
「土下座はええのじゃ」
師匠はハッスルの方に戻るので俺も土下座を辞めて戻る。
椅子に座るとスターシャ&スターニャ姉妹がひそひそと話しているのが見えた。
「あの……これで何とか」
テーブルの上にはブラジャーとパンツがおかれた。
「はい?」
「姉さんやっぱり恥ずかしい」
「我慢よスターニャ。この人は下着マニアなのよ」
「違うからね!?」
俺が否定するとハッスルおっさんが勢いよく立つ。
「スターシャ。スターニャ。甘いぞ。これが欲しいんだろ? 脱ぎたてを」
ハッスルおっさんはテーブルの上に赤いブーメランパンツを置く。
ちょっと湯気があるんですけど!?
「違うからね!?」
同じ言葉をもう一度俺は叫んだ。




