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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第177話 スターニャ。スターシャ。

 偽造血痕。

 声に出して言うと結婚詐欺みたいな、今回は扉の外で偽物の血だまりを作っていた事を言っている。



「で。おっさんなんなの? 部屋に入れたけど、もう一度2階から落とす? ってか完璧に落ちたと思ったのに受け身うまいな」

「はっはっは。これでも昔は冒険者をしていてね」

「へぇ、それはすごい」



 師匠が咳払いをして来た。



「ドアホウなごむな。なんの用なのじゃ? ワラワの耳を見て長寿族と言ってくるあたりろくな事ではないと思うがの」

「ああ。そうだった! スターシャ説明を頼む」



 おっさんが『スターシャ』って人に説明を求むが周りにはおっさんしかいない。



「ぬおお! しまった急いでいたのでスターシャを置いて来た。直ぐに連れてくるので、また!」



 おっさんは部屋から出ていく。

 あけ放たれた扉はそのままだ。


 暫くすると宿の主人が来て扉を閉めていく。



「………………なんなんだ」

「………………なんなんじゃ」

「どうします?」



 どうします? と、いうのはこのまま変なおっさんを待つかどうかの話だ。

 見た感じ俺ではなく師匠に用がありそうなので師匠に聞くのが一番だろう。



「戻ってくる前に宿を変えるのじゃ」

「了解」



 急いでチェックアウトすると、別の宿に向かう。

 店主が何か言いたそうだったけど、ちゃんと宿泊費一泊分を払ってあるので問題もないだろう。


 あまりにも近い宿はまた変なのが来そうなので少しだけ遠くに行く。

 途中で酒場が見えたので宿より先に腹ごしらえにしたい。



「師匠……お腹が減ってます」

「子供かっ! ワラワは寝たいのじゃが……小腹もへってるのじゃ」

「ですよね! って事でそこの酒場いきませんか?」



 帝都にある酒場「竜のしっぽ」よりも大きめの酒場が見えた。

 中が見えると込んではいるが空いている所もある。

 給仕の女性が数人忙しそうに走り回っている。



「まっここであれば不味い事もなさそうじゃな」

「そう。人がいるし客層も旅人が多い」



 冒険者は金の次に食事にこだわる。

 こだわりポイントは安さと美味さ、この酒場みたいに冒険者や商人が多く繁盛している。と言う事は値段も安めで美味い店が多いのだ。


 俺が店に入ると適当に空いている席に座る。



「へぇ……師匠見てください」

「なんじゃ?」



 そっと目線で合図すると給仕の女性。その女性の耳が少し長い。

 小柄で少し銀髪のはいったオレンジ色の髪。

 背は低く可愛いが動いてる。



「珍しいなのじゃ」



 俺としては師匠で3人目だ。

 亜人で耳の長いのは何人もみたが、顔が美形で耳だけ長いと師匠と同じ種族の可能性が高い。


 その耳の長い給仕が俺達の席に寄って来た。



「あら、お客さん珍しい耳。ご注文は決まった? 本日のおすすめは、これとこれ」



 見せて貰ったメニューは本当に安い。

 師匠をちらっと見ると、メニュー表とにらめっこしてる。どっちが子供だ。

 金貨を4枚ほど出して3枚は酒と料理。1枚はチップと言う事で手渡す。



「ふとっぱらー。じゃっ頼んでくるね」



 給仕の女性が離れていくと、師匠が顔を上げた。



「よし! これとこのケーキを……うお!? いないのじゃ」

「そう言うと思って頼んであります」

「ほう。抜かりは無さそうなのじゃ」



 運ばれてきた料理は、牛肉のステーキセットにパン。ちょっといい酒を数本。あと師匠のケーキでガトーショコラとアップルパイ。


 肉は少し硬いが十分いける。

 セットのスープを飲みながら食べていると入口が音を立てて開けられた。


 いかにもチンピラくさい男達は店内をぐるっと見回す。

 耳の長い給仕の子を見ると顔の動きが止まった。



「おうおうおう。スターニャ今日も可愛いなぁ」

「お客様。店内はナンパの店ではありません返ってください」



 耳の長い給仕さんは感情をなくした声で淡々と男達に伝えた。

 男の後ろにいるチンピラのさらに子分みたいな男が「なんだとこのクソアマ!」と吼える。



「よせ。可愛い妹は愛を持っていってるのさ」



 あれほど騒がしい店内がシーンとし始めてる。



「どの口が……お客様。いえ注文をしないのであれば帰ってください」

「あー帰るさ。今日はお前の顔を見に来ただけだからな。約束を守るようにオーナーに伝えておきな。期日までに無理だったら、この店と給仕全部。ドスケッベルの物だ! とな」

「ぶっは」



 あまりにも酷い名前で思わず吹き出してしまった。

 どすけべって、もうチンピラでさらにスケベってのがわかりきってしまう。



「てめえ! なんだアニキの名前を聞いて笑いやがって」

「まてまてまて、いい女を連れているじゃないか」



 ドスケッベルと呼ばれた男は師匠の前に歩いてくる。



「なんだ。お前も耳が長いのか? あの姉妹の知り合いか?」

「ただの客なのじゃ」



 師匠はそれ以下もそれ以上も言わずにケーキを食べている。



「ひゅー。オレ様の名はドス・ケッベル。この街でファミリーをしてるものだ。どうだ? 不自由はさせねえ、オレの所に来ないか?」



 こいつは俺が見えてないのか?

 俺の目の前で師匠がナンパされている。

 よし。殺すか。


 俺がマジックボックスに手を動かすと給仕が走って来た。



「他のお客様にご迷惑です! あなた達は出禁にしたはずです! これ以上いるのであれば街兵を呼びます。と言うか呼んでます!」

「っと……そいつはいけねえ。じゃぁなスターニャ、お前の体は良い商品になる綺麗にしとけよ」



 スターニャと呼ばれた給仕がプルプルと震えている。

 うんうん。そうだろう……ああいうのはよくない、こっそり砂に埋めたほうがいい人種だ。


 ドスケベ……いやドスケッベル? と子分がバーから出ていくとちらほらとお客も帰っていく。

 そりゃこの騒ぎがあったら食事所じゃないよね。


 師匠はケーキを食べ終わると上品にハンカチで口を拭く。

 すぐにスターニャの方を見ると、スターニャが持っていたカタログを素早く取り広げて見せた。


「口直しに、このケーキとこの野菜サンド。後こっちのスープを頼むのじゃ」

「お、お客さん。帰らないんですか!?」

「なぜなのじゃ?」

「いやだって、街でも悪評のケッベル家ににらまれて平然というか」



 スターニャが呆れた声を出す。



「別になぁ」

「別にねぇ」



 師匠が俺に聞くので俺も頷き返す。

 この街に住むわけじゃないし、そりゃ揉め事は大きくしたくないがさっさと街から出るつもりだ。


 扉が大きく開くと、数時間前に見たおっさんが入って来た。

 おっさんは俺達の方……というかスターニャを見てる。

 その背後には背の高い、これまたオレンジ色の長い髪で少し銀髪の入ってる女性が松葉杖を使いながら入って来た。



「大丈夫がスターニャ! 騒ぎと聞いて街兵に知らせた所だ! あとすまん。替え玉になりそうな女性に逃げられて――いるじゃないか!」



 ずかずかと足音を叩ては近づいてくる。

 直ぐに師匠の手を取って膝を落とした。



「依頼も聞かずに引き受けてくれるとは、女神か何かかな。ではさっそく踊ってきてくれ」



 まったくもって意味が分からない。

 意味も分かりたくない。

 松葉杖を使って女性が歩いてくると給仕から「スターシャ姉さん」と呼ばれている。



「よっと。マスターちょっと悪い所でてますよ」



 松葉杖を大きく上げて、おっさんの頭の上へ振り落とす。

 おっさんが笑いながら「なんの!」と白羽取りの構えをし、見事失敗して床に倒れた。



 師匠が小さい声で「ワラワはケーキが食べたいだけなんじゃ」と言ったのを俺だけが聞こえた。



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