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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第175話 2人が砂漠を歩くまで

 コメットの操縦は取り合えず俺がする。

 別に師匠がしてもいいんだけど、馬にすらまともに乗れないのに怖いじゃん。


 ペダルを踏んでは空の旅を楽しみ、ほどよく進んで休憩する。

 空には交通ルールはない! といっても慢心は怖いからね。


 ほど良く開けた場所に停泊し休憩をする。

 その後に出発と言う事を夕方まで繰り返した。

 師匠は操縦席で外を見ては俺と会話をしながらの旅だ。



 最終的には夜景が綺麗な砂漠地帯でコメットを停泊させた。


 もうこれデートだよね。


 若い……俺は若いんだし、その男女が一緒に旅をする。

 これはもう間違いが起きても仕方がない、普通なら。



「ドアホウ。顔がにやけてるのじゃ」

「っと、全然そんな事ないですからね」

「まぁこんな密室で襲われたらワラワは抵抗できないのじゃ」

「あの。誘ってます?」

「全然なのじゃ」



 判断が難しい。

 誘ってるようにも聞こえるし、拒絶してるようにも聞こえる。

 大学時代にサークルの女性メンバーから似たような事を言われた記憶がよみがえる。

 あの時は家飲みで……結局俺は手を出さなかった。

 その女性は後に別の男と結婚して、男の資産を持って海外に逃げた。

 踏みとどまった俺は神に感謝したもん。



「まぁ夜近いですし寝室は交互に使うという事で」

「夜営の基本じゃな。先に使っていいのじゃ……役に立たないワラワは見張りをするのじゃ」

「いや、俺が最初見張ってますよ」



 別に普通の会話だ。

 師匠と2人旅を何度もしてるが基本こんな感じ、男女の仲というまに仲間と言うのが先に来る。



「ん。じゃぁ頼むのじゃ」



 師匠が寝室に入ると狭い操縦席には俺一人。

 

 ここでクウガに謝りたい。


 ごめんクウガ、お前はこんな気持ちで冒険していたんだな。

 なんて言うか師匠がこうなる前は、俺が《《多少のセクハラ》》しても師匠は強いし、反撃もしてくるので笑って許されていたけど、師匠が普通の女性以下となると俺の行動1つで一線を越えてしまう。


 心の中の悪魔の俺が『超えちまえよ』とささやき。同じく心の中の天使が『超えたら?』と助言する。


 俺は床を思いっきり叩いて雑念を握りつぶした。


 やっぱ無理やりは良くない。

 無理やりから発展する恋もあるのかもしれないけど、俺は嫌いだし翌日からどんな顔していいかもわからない。


 知らない間に時間が過ぎていたのだろう、寝室の扉が開き師匠が眠そうな顔で俺を見てくる。



「問題はあったのじゃ?」

「…………おはようございます師匠。何もないですね、これだったら後3日もあればレイアランド諸島につきそうです」

「何もなければなのじゃ」

「何かあるんです?」

「この辺はワイバーンが良く飛んでいるのじゃ気をつけたほうがいいじゃろうな」



 人が空を制圧出来ない問題の一つ。

 サイズは色々で大きいのは人を簡単に丸のみ出来る。



「何かあったら起こしてください」

「当然なのじゃ」



 俺が寝室に入り欠伸をすると一気に目が覚めた。

 目の前には脱ぎ散らかしたブラの下着が落ちている。


 叫びたい。

 猛烈に叫びたい。



「すーはーすーはー」



 深呼吸して気持ちを落ち着かせた。



「変な気分になりそ。これが師匠が強いままなら俺も平気だったんだけどなぁ。師匠も力が無くても普段通りと言うか」



 ブラを摘まんでははじにある洗濯箱に入れて置く。

 仮眠をしなければとベットに倒れ込むと師匠の匂いが俺を包む。



「なんとう罠」



 あらがえ……俺の理性よ!

 も…………あっそうかすっきりすればいいのか。


 念のため窓を開けて寝る。

 空気の入れ替えって大事だ、少し寒いが師匠の匂いもこれで飛ぶだろう。



「おっと、扉の鍵も閉めないと」



 しずかーに鍵を閉める。

 俺が安心してベッドに倒れ込む。

 ……………………寝ていると突然扉の叩く音が聞こえた。



「ドアホウ! 起きるのじゃ! ん!? 鍵なんぞかけおって。ドアホウ!」

「はいはいはいはいはい、今開けますよってあれ……飛んでる!?」



 開け放たれた窓。

 一応風通しのためだけなのでそこから落ちる事はないんだけど上空の景色が見えた。


 慌てて扉を開けると、師匠が俺を見て寝室の中をぐるっと見まわした。



「なんじゃ空気の入れ替えしておったのじゃ? 少し寒くないのじゃ? それに変な匂……」

「え? 全然寒くないですけど!!! 何の話してます師匠!? すみません仮眠までお掛けですっきりしました」

「気のせいなのじゃ? ドアホウを頼りにしてるからなのじゃ」



 師匠が俺をベタ褒めである。

 何だろう、俺が成長した事を素直に受け取るべきなんだろうけど、先ほど慌てていた師匠と何かちぐはぐだ。



「気のせいです! で、師匠何が起きて」

「そ、そうじゃ! ワイバーンが襲ってきてるのじゃ!」

「え、浮いてるってこれ」

「持ち上げられたのじゃ、さっきから扉を叩いてるのにドアホウは」



 コメットの窓をワイバーンのくちばしが突きだす。

 その度にコメット全体が大きく揺れた。



「師匠! こっちに!」



 操縦席にいき、操縦桿を思いっきり動かす。

 くるくると操縦桿は回り、ペダルも踏むがワイバーンから逃げられない。



「あっだめかも」

「諦めるの早いのじゃ!」

「ですよね」



 コメットの操縦席が赤く光っている。

 危険信号の合図。



「武器は無いのじゃ!?」

「ありますとも! コメットについた最後の希望、一連砲が!」



 俺は赤いボタンを押す。

 以前に大きな盆地を作ったほどの武器だ。


 カチっと押しても何も起きない。



「おい」

「まぁ待ってくださいって」



 俺は赤いボタンを連打する。

 連打して思い出した。



「そういえば、以前にサンが俺に使わせると危ないからって武装は取ったって」

「ドアホウ!」



 師匠は転ばないように操縦席にある物を掴んでいるも、転びそう。

 ペダルを踏んでは緩めたり、操縦桿を前後左右に動かしまくる。


 ベキ。と、変な音が鳴った。



「…………ドアホウ」

「はい。ドアホウです」

「………………そこはせめて訂正しろなのじゃ、その今度は……今の音はなんじゃ?」



 俺は黙って師匠に操縦桿を見せた。

 壊れて取れている。



「おまっ! ドアホウ!!」

「だからドアホウですって言ってますって、師匠前! 前! 敵が来ます」

「ぬお! ライトニングフルバースト!!」



 モニターが割れ、ワイバーンのくちばしが操縦席に入るのと師匠が叫んだのがほぼ同時だ。


 両手を前に出した師匠から放たれた魔法はワイバーンのくちばしにヒットする! これでワイバーンも黒焦げだろう…………魔法が出ていれば。



「ぬおおお!?」

「まぁ出ませんよね。師匠飛びますよ!」



 ワイバーンのくちばしが師匠を掴む寸前に俺はもう走っていた。

 アンジュの剣でくちばしを斬ると、師匠を抱えて空中に飛んだ。


 地上まで数百から数千メートル。

 見渡す限りの砂漠地帯。


 俺達を囲うようなワイバーンに水槍・連を連打する。

 周りに来た奴らをドンドン串刺しにしては消えていく魔法。

 同時に水盾連を足元に唱え落下スピードを落としていく。


 最後の最後で魂の叫びで。



「水竜うううううううううううおおおおおおぼおおお」



 吐きそうになりながら唱えると俺と師匠は水竜の中に入り落下ダメージを抑えた。


 水竜の魔法を解き、空を見るとコメットをもったワイバーンが飛んでいくのが見えた、その後を追うように他のワイバーンも消えていく。


 師匠は俺に抱きついたままで、気づいたのか俺から離れた。

 俺も師匠も無言だ。



「星の位置から見るに……あっちに街があるはずじゃ。ストーム知っておるのじゃ?」



 マナ・ワールドの中で名前しか出て来てない場所だ。



「夜の街でしたっけ、名前だけなら」

「そこに行くしかなさ……いっ」



 立ち上がった師匠が足首を抑えてしゃがみ込んだ。

 大きく腫れているのがわかる。



「師匠! 『癒しの水』」

「むぅ、すまんなのじゃ」

「『癒しの水』『癒しの水』『癒しの水』『癒しの水』『癒しの』

「ドアホウ!?」



 っ!?

 頭に痛みが走って俺は詠唱が中断された。



「師匠まだ魔法唱えてますって」

「1回。良くて2回でいいのじゃ! 回復魔法かけすぎも良くはないのじゃ。ふむ……歩けそうじゃな」

「駄目です」

「駄目って……」

「背負います」

「断るのじゃ」

「背負います」

「あれじゃろ? ワラワは重いんじゃろ?」

「……………………」

「ドアホウ!」


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