第163話 開発室の作戦会議
師匠達が来る前にパソコンの中身をもっと見たい。
その前に喉が渇いた。
立ち上がり小さい冷蔵庫を開けてみるとエナジードリングがぎっしり。
日本にいた頃の現代社会の闇を見た感じをして閉めた。
世界も違うしあれからどうなっているかは知らないが、少しでもよくなって……ないだろうなぁ。
職種は違うが24時間戦えますか。が日本人の長所でもあり欠点。
椅子に戻って背もたれに体重をかける。
「とりあえず裏クロウベルって呼ぶけど、意思はあるのか?」
裏クロウベルは固まった後首を縦に振ってすぐに横に振る。
少しって事かな? 裏アーカスもそんな感じだもんな。
「少し?」
俺の問いに頷く。
言い方が厳しいが、だって俺だよ? 気にする事もないだろうし。
裏クロウベルはパソコンを操作するとメモ帳を開いた。
そこに文字を打ち込んでいく。
『師匠を守りたい』と。
「まぁそうか、俺だもんな。悪いけど師匠は俺の物だし」
俺が訪ねると裏クロウベルは、文字を打ち込んでいく。
「ええっと『お前の物でもない』いやそうなんだけど……そこは俺の気持ちも考えてよ……」
裏クロウベルがパソコンに打った文字は『任せる』その短い言葉だ。
中々に話のわかる奴だ。
まぁ俺なんだけど。
後はここの封印をしたいんだけど帝国や王国みたいに復活させられてもこれはこれで面倒だ。
今回は帝国が先に封印を解こうとしていたけど、イフの冒険者だってここの攻略を開始してるぐらいだ。
俺が考えていると裏クロウベルは文字を打ち込んでいく。
俺は黙ってその文字を見て裏クロウベルを見た。
「ドアホウ! なんじゃこの部屋は!?」
っ!?
俺は慌ててメモ帳を消して、パソコンの画面を暗くする。
「あっ師匠!」
「『あっ師匠!』じゃないのじゃ! 裏アーカスから手招きされてここまで来たのじゃ、いつからドアホウは敵と仲良くなったのじゃ……? その裏アーカスも今は消えたしなのじゃ」
師匠がそういうと他の邪竜とアンジェリカも部屋に入って来ては辺りを見回す。
「あれ1人かい? もう1つ気配を感じたようなんだけど」
裏クロウベルはいつの間にか消えていた。
便利な能力だな。
俺も欲しい、それがあれば除き放題だ。
「1人だよ。ここで皆を待ってた」
「何この部屋、何この材質。薄い鉄……魔力が感じられない」
「へぇ文献にもない作りだね、当然のように君は座っているけどその四角い板はなんだい?」
質問が多い。
絶対に『これがパソコンです』って言っても意味が解らないだろう。
「裏アーカスが言うには、とはいうか喋れないんだけど。ここは人が入っていい場所じゃないらしい」
「じゃぁ自分は大丈夫だ」
「このクソ邪竜そういう事をいってるんじゃなくてな」
「クロウベル君口調」
邪竜が変な事いうからアンジェリカから怒られた。
「ドアホウも色々とたまっているんじゃろ」
「メルギナス。彼の溜まっているのを出してあげたら?」
邪竜改めナイがとんでもない事を師匠に言うので親指を立てて笑顔を作る。
「ドアホウと一匹。後でお仕置きじゃな。で……下らない事を言ってないで何なのじゃ? ワラワ達だってここが誰に攻略されても文句は言えない、ワラワの所有物でもないしなのじゃ。じゃが帝国は面倒と言う事ぐらいじゃな」
下らない事を先に言ったのは師匠なのに……。
「封印は壊されると思うよ」
「メルギナスの封印がポンコツだからかな?」
「ナイ。一度封印されてみるのじゃ?」
「はっはっは。違うよ人間は欲深いからね……わかるだろ君も?」
俺抜きで漫才は辞めて欲しい。
「ってか。邪竜さぁ邪魔をしないでくれ」
「良いじゃないか、久々の外だよ? それも友人達とここが迷宮だったとしても楽しいよ」
俺は頭をかく。
純粋に楽しそうな顔を見ると文句も言えなくなる。
「まぁここが帝国に抑えられると王国も大変だし、俺の知り合いも危険が及ぶ……封印出来るなら封印したいですね」
「で……ドアホウやり方は?」
「何で俺に」
邪竜含め3人が黙って俺を見る。
「だから何で俺を見て……」
「ドアホウが一番知ってそうじゃしな」
「クロウベル君、君はこんな異質な部屋でも驚きもせず座ってる」
「自分も君が何を言うのか、ワクワクしてるよ」
俺に期待されても何もないんだけどね。
「封印なんて俺が知るはずがない、っても迷宮なら迷宮王? 裏アーカスがボスなんですけど」
まぁ時間で復活するしな。
「今さら倒せるとは思ってないなのじゃ」
「私も妊婦じゃなかった頑張るけど」
どうしたもんか。
「とりあえず、この迷宮の地図を確認出来たんですけど帝国側にいく道はありましたね」
「なるほど、その地図は何所なのじゃ」
「無いです」
変な間が生まれた。
「俺だって言ってる事がおかしいって思ってますよ!? MAP走ってるのにその地図はない! って矛盾ぐらい。途中の壁に貼ってあったんですよ……変な目で見ないでください」
本当はパソコンの中で見た話なんだけど、それを言っても意味がない。
「封印場所を見て帝国の状態を見に行きません?」
「うーん。今出来る事はそれぐらいになるのじゃ……」
逆にそれしかない。
俺達が廊下に出ると、全員が一歩引いた。
影の兵士が廊下に並ぶと、その一番前に裏アーカスが頭を下げて俺の前に膝をついているからだ。
周りを見ても裏クロウベルはいない。
「ドアホウもてもてなのじゃ」
「私がクロウベル君に敬意を持ってるみたいでちょっと嫌なんだけど」
「へぇ……自分達を苦しめた奴らが君にねぇ、どんな魔法を使ったんだい? チャームとか?」
「そんな魔法があるなら教えて欲しい」
「いいよ」
俺は慌てて邪竜を見た。
「ウソだろ!?」
「覚えれるか本人次第だよ? 古城に古文書があったはず」
「今まで邪竜って呼んでごめん」
俺とナイの肩に手が置かれた。
「ライトニング」
「うばばばばばばばば」
「うぎゃがあがががが」
俺とナイが電撃を食らって地面に倒れた。
「馬鹿な事やってないで早く案内せいなのじゃ、あとドアホウ一応言っておくがワラワにはその魔法効かないのじゃ」
「え、マジで?」
「はっはっはっはメルギナスには効かないね」
このクソ邪竜。




