第158話 出発前夜
「それにしても、見事に子供ができたね」
「あっありがとうございます」
俺達は今は城の談話室にいる。
そこで邪竜がアンジェリカのお腹を見て嬉しそうに話しかけたのだ。
俺は邪竜の目を人差し指と中指で突いた。
「うお!? 君ねぇ突然斬りかかったり目をついたりして自分は何かしたかい?」
「アンジェリカへの目がやらしかった」
「………………君がメルギナスに向ける目よりもいいと思うけど!?」
「クロウベル君、ナイ様は別に普通の感じだよ。辞めてよね」
うぐ。
邪竜が「やーい」といってはアンジェリカの影に回り込む。
くそが!
師匠も「少しは大人しくなのじゃ」と、言って来たので本題に入る事にしよう。
「仕方がないか。ええっと現在の城はイフ近くの砂漠の上です」
「妥当な所じゃの」
「で、アンジェリカが裏アーカスの事を調べたいって言ってまして…………」
「…………一緒についてきた時点でそうじゃろな。って思っておったのじゃ……」
てへ。
直ぐに師匠から「可愛くない」と言われてしまう。
そこまで言わなくてもいいじゃないか。
「メル様。ナイ様。古代遺跡なんですけど、ここ最近私と同じ顔の人間……でいいのでしょうか目撃されているんです。古代遺跡に入ろうとした人間を排除しては追いかけてこない。噂話に聖騎士を動かす事も出来ませんので、表向きは観光。という形でイフの街に来てます」
「それはいいのじゃが……妊婦なんじゃろ。無理をした所でなのじゃ」
やっぱり師匠もそう言うよね。
普通に危ないもん。
やだよ、何が問題あってお腹の子がもしもって展開だけは絶対に避けたい。
「じゃぁ自分が守ろうか。メルギナスはこの弟子の世話でせいいっぱいだろ? 自分だったら彼女の護衛ぐらいはできる」
すました顔の邪竜が手を上げてきた。
「ナイ様がですか!?」
「そう、友達だからね」
自信満々なのが余計に腹が立つ。
「絶対に大丈夫なんだろうな。アンジェリカがちょっとでも怪我してみろ、焼き鳥にするぞ」
「火属性の魔法使えないくせに……」
「別に魔法じゃなくてもいいだろ。じゃぁ切り刻んで傷にワサビぬってやる!」
「地味に痛いから辞めて、問題はちょっと距離があるから力は下がるけどまぁ大丈夫と思うよ」
何となくの話は決まった。
後は決行するだけだ。
「って問題なんですけど、その裏アーカスが意思の疎通が出来たとしてどうするんです?」
「帝国が攻めてくる。と助言と奴らの存在なのじゃ、何をしたいのか」
「大昔はどうだったんです?」
俺が師匠に尋ねるとなぜか邪竜のナイが得意げな顔だ。
「自分達にかかれば敵じゃなかったね」
「一定の場所から敵意なかっただけなのじゃ。ドアホウこそ《《もし何か知っていれば》》今のうちに話すのじゃ」
実はとっておきの話が。
と言いたい所なんだけど、俺の認識でも古代都市はボスがいるだけの場所、アイテムが旨い。
「なぜか英雄の名前を持つボスがいるぐらいしか知りませんね」
アンジェリカが小さく手を上げた。
「どうぞ」
「裏アーカス……ってその話が本当ならそれもおかしいわ。確かに祖先は英雄アーカスなんだけど、記録にはちゃんと大往生してるわよ」
そうなんだよねぇ。
影である裏アーカスはそのままだ。
「それも含めて調査なのじゃ、ドアホウ他のボスは?」
「それがさっぱり」
「思ったよりも使えん奴じゃったの」
「酷い、師匠は全く使えないのに」
あまりにもひどいので涙をふく。
「んなっ! ドアホウお主はワラワを使えないと!?」
「メルギナスと君の漫才は面白いね」
「「違う!」」
俺と師匠が異議の声を出した所で作戦はお開きになった。
城を出るのは明日の昼。
どうせ城の中で1日過ぎても現実世界では数分程度なのだ急いでも仕方がない。
風呂に入りすっきりした所で部屋に戻る。
窓際に師匠と邪竜が座っていたので、邪竜のほうを思いっきり窓の外に落としてみた。
「のわっ!?」
まぬけな叫び声を上げて地上4階ぐらいから下に落ちた。
俺は邪竜のいた椅子に座って師匠の顔を見る。
あれ? 引いてる?
「もしかして引いてます?」
「もしかしなくても引いてるのじゃ……落とすか普通なのじゃ」
「斬るよりいいかなって、所で何の話を」
「他愛もない雑談じゃよ……あまりナイを困らすななのじゃ」
がびーん!
師匠がクソ邪竜の肩を持った。
「あれですか、新しい男よりも古い男のほうがいいとか!?」
「何の話なのじゃ」
「ですから、俺よりも邪竜の方が古くから付き合いあるからって俺の事捨てるんですよね!?」
「…………どっちも捨てたいなのじゃ」
片方残しましょう。と提案する前に談話室に邪竜が戻って来た。
「君はいよいよ本気で戦わないといけない」
「望むところだ」
俺がアンジュの剣を手に取ると、師匠が頭を叩いて来た。
「ドアホウ、明日いくのに剣で勝負する馬鹿がいるのじゃ……これを使えなのじゃ」
「トランプ……ですか?」
「そう、そしてワラワの仇を打ってくれなのじゃ……」
「は!? もしや……」
俺は邪竜を見る。
邪竜の方は勝ち誇った顔だ。
「そう。自分とメルギナスは暇すぎてトランプをしたんだ、最初は何もかけてなかったんだけど段々と賭けるようになってね。最後にはメルギナスがこの城で一日メイド服を着るという」
「何それ楽しそう」
「そうだろ!? 君ならわかってくれると思ってた! ……でも男2人でするのかい?」
俺と邪竜がメイド服を着る勝負? 何か間違っているような気もする。
「話は聞かせてもらったわ!」
「その声は!?」
「クロウベル君盛り上げありがとう。メル様私達も参加しましょうよ、人数多い方が楽しいですって」
「………………ワラワもか?」
アンジェリカが師匠の近くに来ると笑顔で頷く。
最初はやる気のなかった師匠だけど、アンジェリカがテーブルに四つの手山を作る。
「ポーカーでいいかしら。交換回数は1回、先に20勝したほうが勝ち」
「いいだろう。邪竜と師匠は?」
「自分のトランプだし当然するよ」
「仕方がないワラワだけ負けなければいいのじゃ」
師匠、それは一番の負けフラグ。
白熱するカードバトル。
最初は邪竜が連続で勝っていたが3戦目にしてアンジェリカが勝った。
4回目は師匠が勝って5回目はアンジェリカがさらに勝ちを重ねる。
「で、最終的に君が負けたわけだ……」
「インチキだ! 50戦して俺が1回しか勝てないっておかしくない!?」
「ワラワより弱い奴がいたとはなのじゃ……」
「じゃっクロウベル君諦めるんだ、負けは負けよ」
うーうっうー!
手渡されたメイド服。
「どうせなら師匠が着た洗ってないメイド奴を」
師匠とアンジェリカが汚物を見るような目で俺を見て来た。
邪竜だけは笑っている。
「君のそういう素直な所面白くてすきだよ」
「新品じゃさっさと罰ゲームするのじゃ」
「うい」
部屋で新品のメイド服を着て談話室に戻ってくる。
スカートが新鮮ですーすーする。
パンツ1枚でいるみたいだ。
メイドっていつもこんなスカート1枚なわけ!?
やばいな。
「メイド肩をもむのじゃ」
「はっはっはっは。男がメイド! 男がメイド! ねぇメイドくん。自分も揉んでもらっていいかな」
俺は邪竜の首に両手を当てて力いっぱい揉んでやる。
ぐっ硬い! 硬すぎて揉めない。
「そう来ると思って強化魔法かけておいたよ」
「くそがっ!」
「ドアホウ、ナイ相手になるとちょいちょい口悪いのじゃ」




