第147話 封印場所にいる奴ら
「君さぁ……自分に恨みでもあるの?」
顔を抑えナイは起き上がった。
その顔には俺の付けた足跡がくっきりと残っている。
恨みか、その問いに俺は即答で「ある」と、答えた。
師匠がどういう魔法でナイを呼んだか聞いてないけど、ナイは師匠の呼びかけにこうして来たのだ。
それだけでも腹が立つ。
この俺に頼るよりもナイを頼ったんだ。
それ所が俺を杖で吹き飛ばして置いていこう。とした事も腹立つ。
この怒りは師匠じゃなくてナイにぶつけるべきだ。
「久しいの」
「何百年ぶりだろうね。何か困った事があったら呼んでね? って言ったけど、まさか何百年も放置されるとは思ってなかったよ。まだ持っていたんだね呼び鈴。壊れたのかと思っていたよ。むしろメルギナスの事だから無くしたとか」
「あーーー!」
俺は突然叫ぶと2人がこっちを見た。
「…………なんでもない」
「おかしな奴じゃの。呼ぶ必要は無かったからなのじゃ。とにかく礼を言う。ほれドアホウも…………珍しいなのじゃ。そんな顔」
あの城で師匠が投げた小瓶。
思い出した師匠の家を整理してた時にカビの生えたコートから出て来た奴だ。
「まっ礼に一つでも言っておくのじゃ」
「嫌ですからね、こればっかりは師匠の頼みでも」
見たくもない顔で俺を見てくるナイは小さくクックックと笑い出す。
「まぁ下界の事は詳しくは知らない。なにお茶でも出すよ。で……セリーヌは元気そうだった?」
「誰だ?」
「誰って……君に依頼したよね。薬届けてくれって……え。まだなの? 別に期限は決めてないけど、もう終わったんじゃないの?」
「っせえ! こっちもこっちの事情があるの!」
そもそも受けたくもない依頼だ。
「依頼をこなそうと努力してるだけ感謝してほしいわ!」
「見事な逆切れを見てるよ……メルギナスも苦労するねぇ」
「まぁの、これでド変態なのじゃ」
「じゃぁメルギナスにとってご褒美だ」
師匠がナイの頭を触ると閃光が光った。
ライトニングバーストだ。
ナイの体が吹き飛び全身が赤黒く火傷になる。グロ……。
すぐに皮膚の色が人間の様に戻っていった。
「危ないんだけど……いやぁ弟子が師と似るというか、師が弟子にるというか。君達2人好戦的すぎるよ? 死ぬからね普通」
死んでいて欲しい。
いや待てよ?
「そのまま死んで、この城をくれ」
「自分が死ぬとこの城も消えるけど? まぁお茶でも出すよ勇気ある人間…………人間? 君達を人間とカウントしていいのか疑問になってくる」
「どういう意味だ」
「メルギナスはともかく、君の方……何か変わった? 前よりも魔力の質が変化したというか……まぁいいか。退屈していたんだ」
ナイはそう言うと軽いスキップで城の中を歩きだす。
ガラス無い窓からは外が見えカイザーアイなどレベルの高い魔物が小さい森の中をふよふよと浮いている。
アンジェリカ達と来たのがもはや懐かしい思い出だ。
「あああ! 師匠早くでないと。この城で1日もたてば外では1年ですよ! ………………いやもういっその事1年ほどここにいて1000年ぐらい過ぎたほうがいいか、その頃には人類は滅亡してるでしょうし」
そうすれば師匠と俺の二人っきりの世界だ。
「怖すぎるなのじゃ」
「うん。その発想は怖い、残念だけと今は逆かな。こっちの空間で1年過ぎても外の世界は10日ほどと思うよ」
精神と時の部屋か。
有名な漫画であった特別な人だけが入れる部屋。
中の1年は外の1日だったはず、修行するのに便利で1人2回ぐらいしか入れない。だったようなきがした。
「まぁそう言う訳だからゆっくりして行きなよ」
「ゆっくりか……いいのか? 依頼」
俺はまだ邪竜から受けた依頼を完了してない。
さきほど「まだ?」と催促されてるのに。
「200年ぐらいの間であれば……もし君が駄目ならメルギナスに頼むからね」
邪竜ナイは適当な部屋に俺達を招待すると、小走りに部屋から出ていくと食べ物を持ってくる。
果物にワイン。水の入った瓶などをテーブルに並べては細かく動く。
仮にもこの城の王だろうに、せっせと働く姿は小さく見える。
「隣に冷蔵箱があるからね、腐ってはいないよ。貢物で貰うんだけど自分は食べなくても平気だから余るんだ。調理器具も隣の食堂にあるから好きに使って……さて飲み物は全員にいきわたったようだね。では友人との再会に乾杯」
「乾杯なのじゃ」
「しね」
俺は師匠とグラスをカチンと鳴らし、邪竜ナイの方もカチンと鳴らす。
「乾杯の挨拶が1人だけ違うのは外の世界では挨拶がかわったのかな? メルギナスも注意してよ。酷いんだよクロウベル君は……どうやら自分の顔が嫌いらしくて、直ぐに斬って来るんだ、いやぁ人間の努力って見ていて面白いね。うん、今まで命乞いをする人間は腐るほど見てるけど、クロウベル君は面白いし仲良くしたいんだ」
「俺はしたくない」
師匠を中心に右に邪竜ナイがいて左に俺がいる。
「くだらん……お主らが一番子供なのじゃ……」
「そういう態度も変わらないね。これでアーカスやステリアもいればいい同窓会になるんだけど」
ん?
俺は邪竜ナイを見る。
俺の視線に気づいた……というか、こいつわざと過去の英雄の名前を出したな。
アーカス。
二刀流の女性剣士でその逸話は多い……俺もなぜか配置されていた裏アーカスというボスと手合わせをした。
その相方であるステリア。
こっちも英雄でこちらは男性。
アーカスの英雄譚に出てくるんだけど……名前だけでてその活躍した話がない。
一説にはアーカスとステリアは恋人同士だったのでは? と言われてるぐらいだ。
「おやおやおやー聞きたいのかなー?」
「き、聞きたくないし!」
くっそほど聞きたい。
いや他の英雄はともかく、師匠がそこにいたってのを知りたい。
「どうしてもって言うなら話してあげてもいいけど」
「だから聞きたくないって言ってるだろ! 条件はなんだ!」
歯を食いしばって土下座する。
「師匠の所だけでいいから」
「よし! じゃぁメルギナスがおもらしした話から」
「なんと!」
俺の頭が何かに掴まれた。
前にいる邪竜ナイの胸ぐらも掴まれている。
っ!? こ、殺される。
「メルギナス……冗談だよ……その、離して」
「悪いのはあっちで俺は悪くないような」
「あまり変な事言うと2人とも本気で潰すのじゃ」
師匠は悪態をつきながらソファーに座りなおす。
「ナイよ。帝国は地下の封印を解くそうじゃ」
「うえ……どうするの?」
ナイのほうも先ほど雰囲気と違いソファーに座っては師匠を見ている。
「ワラワは別に、どうもしない……というかなぁなのじゃ」
「同じく、そうなんだよね」
「…………話が見えないけど地下にある隠し扉の先に何あるんです? ボスとか? 魔王?」
黒い塊は北部の迷宮ダンジョンにあって、それを倒してクウガの呪いが解ける。
「似たようなもんじゃが……まぁボスというかなのじゃ」
「死なないんだよ……思考というか影の民だね。あまりにも死なないからアーカスを中心に扉を封印したんだ」
なにそれめっちゃ面白そう。
得に死なないが興味ある。
「はいはいはーい! 俺ちょっと興味があります」
「どこぞの皇子すら勝てない奴が見に行っても死ぬなのじゃ」
「え。なに君負けたの!? ウケル。本気出せば自分の体も貫くのに、そんな皇子に負けるの?」
「負けてない! 勝ちを譲っただけだ!!」
俺だって本気で皇子を殺そうと思えば殺せたよ! たぶん。
「じゃぁ師匠強くしてください」
「よし自分が――」
「俺は師匠に言ってるの! シッシッシ」
邪竜と訓練なんて死んでも嫌だ。




