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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第14話 どれクロウベルの本気を見せる時が来たようだな

 俺が仕方がなく試合を承諾すると、アリシアがすでに地面にマルを書き終わっていた。


 懐かしい5年前になんどもやった一般的な試合方式だ。

 円の中から出たら負け、急所に貼った風船を割られたら負け。そういうやつ。


 クウガが木剣を数回ふりふりして真ん中に立つ。

 やる気十分すぎる、俺下手したら今日死ぬんじゃない?



「待った!」

「いまさら怖気ついたのですか?」



 こいつは……良く俺もこんなキャラを主人公として操作してたよな。

 まぁゲームでは基本無言でプレイヤーの意志で動くんだけどさ。



「アンジュ……は身重だから、ええっとカール爺さんを呼んできてくれ。執事であり立会人。あと試合はするにいたって証文も書いてもらう。それで」



 証文と聞いて、クウガの顔が不機嫌になった。

 おいおいおい、俺と試合したいって言うから調整してるのに、もうそんな子はオジサン知りませんよ! と、心の中だけで言う。



「僕が負けたら、3人のうちだれか奪う。とかじゃないですよね……誰も渡しません!」

「いらねーよ!」



 思わず乱暴な言葉で即答で返事をしてしまった。

 なぜかクウガの仲間であるアリシア、ミーティア、クィル達3人からにらまれた。

 なんで?



「いらないとかクウ兄ちゃんぼっこぼこにやっつけて!」

「外れあつかいキライ」

「クロウ君、私少しショックだよ。私達は誰を選んでも優秀だよ」



 悲しい、この世の中に俺の味方はいないのか。



「ええっと……君たちねぇそんな文句言うけど俺が勝ったら俺の手下になりたいの? 俺が紳士だから良かったけど紳士じゃなかったらあんな事やそんな事されるんだよ?」

「……誰がド変態の下なんかに、クウ兄ちゃん絶対勝て」

「呪ウ……」

「うーん……どうしてもって言うなら」



 1人だけ反応がおかしいけど、やっぱり俺が勝ってもしょうがないしなぁ。


 嫌って人を仲間にいれても何時殺されるかわからないし。

 ああ、師匠成分が足りない。



「…………わかりました。呼んできますので、逃げないでくださいね。あと、3人には手を出さないでください」

「だから出さないって」



 クウガが俺に確認すると、執事を呼びに行った。

 女性達3人が適当に座ると、俺も近くの石に腰を落ち着かせる、うーんボッチだ。


 クウガがカール爺さんを連れてきた。

 スタン家でアンジュの次に権力を持っていると言われてる執事で、今年で70歳以上とかなんとか。



「カール。証文と審判を。『この試合の結果に問わず、一試合だけである』と」



 カールは「わかりましたクロウベル坊ちゃま」と言うとさらされと魔法紙に書いていく。


 二枚の紙に書くと俺とクウガはそれぞれに名前と指をつけ指紋を残す。日本のように印鑑というのがないので、母印と名前のサインだ。


 役に立たないようで役に立つ。

 魔法紙といって魔力の通った紙に魔力を通したインクなのだ、燃やそうか水につけようが安心安全な品物。


 その代わりめちゃくちゃ高い。



「ねぇアリ姉ちゃん、あの証文って見た事ないんだけど高い?」

「うーん。教会で使う場合は金貨30枚いるらしいけど」

「げっ……え、クウ兄ちゃんだ、大丈夫だよね」

「うーん、クロウ君強いからどうかなー」



 一人のほほんとしているアリシアと、少し焦るミーティア、話の輪に入らないクィル。



「ずいぶんと余裕なんですね」



 そして挑発的なクウガである。

 いや、本当、なんでかなぁ……。


 俺とクウガは頭と心臓部分に紙風船をつけた、片方が潰れれば負け。場外でも負け、それ以外は何でもありのシンプルルール。


 カール爺が「試合を開始しますのじゃ」とふがふが言うと『のじゃ』の部分で少しだけ師匠の事を思い出す。



「こい! クロウベルの本気を見せてやる!!」

「い、いきます!」



 カール爺さんが手を振り下げ瞬間クウガが走り出し距離を詰めてくる、そして上段に構えた木剣を俺に振り下ろしてきた。



「であああああああああああああああああああああああ!!」



 俺は《《一歩引いて》》クウガの剣の軌道に《《合せる》》。

 ぽんっと音が鳴ると俺の頭の紙風船が潰れ、尻もちをつく。


 空振りに近いクウガの小さな一撃が俺の紙風船をポフっと音を立てて潰れた。



「え?」

「はい、お終い。いやああクウガさんだっけ。めちゃくちゃ強かった。俺なんて一振りも無理だったよ、それにこんな美人3人も引き連れていやぁ羨ましいなぁ。俺には絶対無理な事だ、スゴウベル当主代理に地下下水の許可書を申請したんだっけ? ぜひに頑張って、いい経験になると思うし、もしかしたら隠し宝箱もあるかも。俺が後で怪しい所を丸付けとくから調べたらいいかも」



 俺は立ち上がって、クウガをめてめて、めまくって拍手する。


 口を開けてポカーンとしているクウガの手を握手して直ぐに立ち去ろうと歩く。



「カール! 俺は負けって書いて」

「え。ですが坊ちゃま……」

「いいからいいから、いやぁクウガ、君は本当に強い。ささ、カール」



 カールは俺の言うとおりに勝敗を紙に書いた。



 よしOKだ。

 長居をすればするほど何を言われるかわからない、約束は約束。

 破らないといいんだけど今のうちに逃げる。


 俺がアリシア達の前を通ると「ほんっと意地悪なんだね」とアリシアのため息交じりの声が聞こえた。



――

――――



 屋敷に戻り顔を洗う、練習の時間が台無しである。

 軽く汗をかいたので部屋で着替えをすると控えめなノックの音が聞こえた。



「どうぞ」

「お休みの所申し訳ありません、アンジュです」



 アンジュは丁寧に礼をして俺の部屋に入って……は来ない。



「別にアンジュなら好きに入っていいよ、休んでないし。で、用事は?」

「やってくれましたねクロウベル様」

「な、何の事かな?」



 アンジュはため息をつく。

 もう俺はため息つかされるのがデフォなのか?



「試合の事です」

「いやぁ、負けちゃった。てへへ」



 これでもお互いに怪我をしない、俺がクウガに負けるイベントの消化、現在いるメインヒロイン達である、アリシア、ミーティア、クィルの好感度を下げる、全部満たしたはずなんだけど。


 アンジュの好感度まで下げたつもりはない。



「練習試合とはいえ全力で戦う。と、言う事を教えたはずですが?」

「…………誰に聞いたの?」

「カールにです」



 俺に証文を突き付けて来た。

 先ほどの証文、その最後に『クロウベル=スタン。クウガ。試合をし勝者はクウガ』と文字が付けたされている。



「いやぁ、彼は強かった!!」

「…………本気で言っていますか? 他にもアリシア様に勝負の内容を既に聞き及んであります」



 妊婦のアンジュの周りの空気が変わった、空気と言うよりも魔力というのか。


 ヤバイ、目が本気だ。

 なんだったら殺気を混ぜている。



「アンジュ、お腹の子に影響あるよ?」

「っ……卑怯ですね。私はクロウベル様をそのような剣士に育てた覚えはないです」



 殺気は何とか消えたが、まだ怒っている。



「一応魔法も使えるので、魔法剣士って所かな」



 俺とアンジュがお互いに無言になった。



「はぁ……わかりました。で……どうするのです? この証文がある限りスタン家の3男は一般の冒険者に負けた。と言いふらされますよ」

「だろうね」

「だろうねって……」



 一応これでも貴族で、貴族の世界は外見を気にするのが多い。

 スタン家はちょっと特殊だけど、腕自慢の貴族が誰かに負けた。などになると一気に結婚の話がなくなる。



「元からないんだけどさ!!」

「ど、どうなされました」

「いや、別に一般人と結婚するきはないし、それはいいんだけど……別に3男だよ? スタン家のプライド? そんなのは無いだろうし、誰も怪我をしないのが一番だよ」

「ですが……」



 アンジュはそれでも俺に文句を言いたいらしい。

 わかる、わかるよ。アンジュは元剣星だもんね正々堂々と戦うタイプよね。

 俺は悪役貴族らしい立ち回りのほうが好む。



「それに……アンジュに先に言うけどスタン家を出ようと思っているんだ」



 逆にだ。

 これで出て行きやすくなった、この辺はクウガに感謝しなければならない。



「……本気ですか?」

「3男以下はごく潰しだからね、スゴウ兄もそろそろ結婚でしょ。まぁそのために5年間訓練したからね」

「もしかしてメル様の事を諦めきれない。と」



 う。聞かれたくない事をずばっと言う。



「いやぁ……まぁ……そのね。推しは推せる時に推す、って名言があって」

「気持ちはわかりますが5年も放置しておいて今さら会いに行くなど女性側すれば馬鹿にしてるかと」

「そうなの!?」

「……少なくとも私はそうでしたけど」



 それは困る。

 かっこつけて師匠の顔に泥をぬらないように修行するんじゃなくて、あの時アリシアの提案飲んだほうが良かったかなぁ。



「でもアンジュだって、何年もたってもこうして好きな人と子供できるわけだし」

「…………この子の父は不明です」



 アンジュのそこだけは引かないという姿勢。

 前にも言ったけど全員が父サンドベルとの子だって知ってるんだけどなぁ。

 アンジュの当時の仲間。つまりは俺とスゴウベルの母親の顔を立ててるというか。



「アンジュがいいならそれでいいけどさ」

「…………わかりました、出発の日は?」

「もうしばらく、アリシア達が出発したらって所かな」

「試合の事はわかりました。私からは以上です……しかし、いえ屋敷から出ると寂しくなりますね、メイドを代表しますが別にこの家にずっといていいと思います。昔と違って兄弟仲もいいですし」



 そうはいうが。



「50過ぎて屋敷にいても困るでしょ」

「その頃にはスゴウベル様もお子様がいるでしょう、たとえ1人でもいい叔父になると思いますよ」



 アンジュがお腹をさすりながら俺を説得してるが、気持ちは動かない。



「…………では失礼いたします」



 アンジュは静かに礼をすると部屋から出て行った。

 俺はそっと扉をしめて息を吐く。



「ふう……もっと怒られるかと思ったけどセーフ! いやぁアンジュ久々に激オコだったな、身重じゃなかったら殺されていたかもしれない」



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