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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第135話 英雄と皇女

 ぐったりしたアレックス。

 一応は名前で言ってみたが、このクソ指揮官を何とか盾にする。

 手足を縛り芋虫? いやちょっとしたハムみたいな状態だ。背中に持ちやすいように紐で取っ手もつけた。


 当然動きにくいし、兵士だって1人じゃないから続々と出てきた俺と師匠の周りが囲まれた。

 その数ざっと数十人。

 角を曲がった先にもいるとして狭い飛空艇の中で乱戦は避けたい。



「控え控え控え! このぐったりしたアレックスがみえないのかぁーしずまれえ!」



 夕方流れていた時代劇みたいな口調で言うと、周りがシーンとなる。

 うん、外したらしい……。


 そうだよね。

 だって『マナ・ワールド』に時代劇ないし、元ネタがわからないのであれば俺が変な口調で喋ってるにしか聞こえない。




「ドアホウ少し落ち着くのじゃ」

「いやぁ気合入って……」



 そもそも俺がここまで気合が入ったのは、学生時代演劇部の友人の代わりに代役で出た熊の役を思い出したからだ。

 あの時も気合が入り講演後に「がんばったな」とほめ言葉を貰った。


 翌日講演からは怪我をした友人が無理やり出ていたけど……俺に任せてくれてもよかったのに。



「師匠。コレ……受け取って貰えます? 俺は一応剣出したいし」

「寄こすのじゃ」



 ぐったりしてるアレックスを師匠に渡すと師匠は嫌な顔をして服の首部分を掴んだ。

 よく言えば、キャリーバックのように引きずっている。

 悪く言ったら触りたくない雑巾のように。


 集まった兵士たちの中から1人の男が出てきた。



「アレックス指揮官は無事なのか!?」



 ちらっとみると、息はしてる。

 実はさっきまで本気で危なくて息が止まってた、俺が回復魔法を5回ほどかけた。

 『瀕死』と『死んだ』では似てるようで全然違う。



「たぶん」



 俺がそういうと「ちっ生きてるのか」とその兵士は小さい声で吐き捨てる。

 こいつの人気ないのな。




「全員アレックス指揮官は賊につかまり飛空艇を乗っ取られた。これから姫の奪還を行う。突撃体制に、指揮官の命は帝国騎士団として胸に秘めろ」

「サーー!!!」



 一歩前に出てきた兵士がそういうと、武器を下げていた兵士たちが剣を槍の様に構え腰を落とした。


 え、まじでいってるの?



「おやめなさい。ルーバント」



 俺たちの背後から聞こえるのは、先ほど拘束されたふりをした皇女サンとメーリスの2人。

 今は拘束も解いていて簡単に出れる部屋の中に『閉じ込められていた』という設定だったんだけど……勝手に出て来てる。



「サン様!」

「こんな男でも貴方達の指揮官ですわ……」

「ご無事で! 直ぐにこちらに、賊は我々が何とかします。おのれ……サン様のご友人と思ったがサン様も人質にとるとは……」

「取ってないからね!?」



 よく見て欲しい。

 人質を取ってるのは今は師匠で雑巾のようなアレックスの頭目掛け魔石銃の標準を欠伸をしながらつけている。

 俺のほうはだってアンジュの剣を持ってるだけである。



「ええい賊め! いいか絶対にアレックス指揮官を盾にするな。俺達だってあてたくない。いいか絶対にあてるなよ絶対に……いや多少の事故であればアレックス指揮官だって許して――」

「………………もしかして。こいつの事全員嫌ってる?」



 魔力は感じても空気までは感じ取れない俺でも、周りの空気がガラっと変わった気がした。


 前に飛び出て号令をしかけたルーバントっていう男は下を向く。

 周りの兵士も俺から支線を外し始めた。



「もしかして、この騒動でコイツが死んでもいいと思ってる?」



 周りが、そんな事は……。殉職なら……などか弱い声が。

 俺は皇女サンを見ると俺と目が合った。



「アレックスはこう見えても皇帝の親戚ですの……言い換えれば従兄という所でしょうか」

「あー…………」



 これと言った我がままだけで地位が上がったタイプかぁ、そりゃ嫌われる。



「ドアホウ……未来の皇帝候補様とやらが目が覚めたみたいなのじゃ」

「な、なんだここは!? う、うごけん!?」



 床の方がから声がしてみると、全員から嫌われてるアレックスが目が覚めた。

 縛られているのに元気な奴だ。

 ってか流石に指揮官って所か、いくら回復魔法かけたからといって、あれだけ銃を撃ったのに元気そうである。



「師匠ー面倒でしょうけど立たせてもらえます? いや、そんな顔しないで」

「しょうがないのじゃ」

「離せ! このクソ女触るなっ! この俺は指揮官だぞ!」



 師匠はアレックスの衣服から手を離した。

 芋虫のようになったアレックスはそのまま床におち頭を打つ。



「ぬおおお!?」



 痛いのだろう体をくねくねと動かした。

 うん。

 周りの兵士さん達さ、俺も師匠も人質から手を離したんだし今突撃したほうがいいのに。



「ぶっころしてやる!」

「口だけは達者なのじゃ。どれ」



 師匠がクソアレックスの頭だけ持ち上げると、師匠に唾を飛ばした。

 師匠の顔にクソアレックスの唾が付く。


 師匠が動く前に俺は動いていた。



 俺はクソを蹴り飛ばす、唸った気がしたが当たり前だ死なない程度に本気で蹴ったからな。

 壁にぶっ飛ぶ芋虫みたいなやつの腹を数回。

 さらに顔を左右にけりアンジュの剣を肩に突き刺す。

 叫び声が聞こえた所でさらに剣をぐりんと回転させた。



「安心しろ、両方同じようにするから」



 剣を引き抜き足で転がす。

 反対側を突き刺そうとした所で俺は背後から抑えられた。



「ついでに舌も落とす――――あっまっーい……匂い」



 熟れた桃みたいな甘い匂い。

 師匠おおおおおおおおおおおおおおお!

 振り向きその大きな胸に鼻をこすりつけるも頭を抑えられた。



「お、落ちつくのじゃ!」

「ほえ? 何がです」

「下じゃ下!」



 俺は足元を見ると、けいれんし視点があってないクソ指揮官アレックスを見下ろす。



「うわ、死にそうじゃん!? うええ誰っすかこんなにしたの!?」

「ドアホウ…………」

「え、あ。俺? ええっと、そう言われるとそんなような違うような」



 冒険者経験もあるメーリスがけいれんしてるクソ指揮官アレックスの近くに寄ってきた。



「た、大変息してないよ!?」



 周りの兵士から、殺した? やったか? なども一緒に耳に入る。

 最後に「全員待機」と何やら命令らしい言葉も一緒だ。


 そんな事よりだ。



「やってない! ちょっと待って!? 『癒しの水』!『癒しの水』ああ、もう上位回復魔法覚えて置けばよかった! 『癒しの水』から『癒しの水』で『癒しの水』なの『癒しのっ――」

「普通にかけろなのじゃ」

「はい」



 怒られた。

 とにかく回復魔法をかけまくり息をしたのを確認すると、メーリスが少し離れた。



「起きるみたいよ?」

「え、そうなの!?」



 クソ指揮官は人形のように突然目を開けると周りを見る、当然手足はしばったままだ。


 止血もしたし回復魔法もかけまくったので痛みはないとは思うが……無いとは思うけど。



「む、お前らは賊だな! 姫様を盾にして飛空艇を乗っ取るとは! どうした!? このアレックスを見て怖気着いたか! 今なら賠償金で見逃してやる、さぁ縄を……む! なんだこの血の跡は。貴様このアレックスの体に何をした!? ど、どうした……全員なぜだまる? そこにいるのはルーバントだな、早く助けろ! このさい姫の怪我は目をつむる。が、このアレックスに傷をつける事は許さん。何をぼーっと立っている。命令だ! このアレックスを無傷で助けろ!」



 ええっと……。

 俺はちらっと師匠を見る。

 師匠も複雑な顔だ、拘束されてない皇女サンが前に出た。



「記憶が飛んだようですわね……」

「む。姫様!? なるほどわかったぞ! ルーバント。この姫! いやサンが首謀者だ。ひっとらえ牢に入れろ」



 なんでこんなに強気なんだこいつは。

 ……………………原作改変される前の俺みたい。

 凄い恥ずかしい。



「もう一度言いますわ。アレックス記憶が飛んだようですわね」

「記憶?」

「ええ……貴方は縛られている私達を見て、交換条件として自ら人質になったのです。それはまるで『英雄』のようでした」

「そ、そうなのか……英雄……このアレックスが……」



 皇女サンが静かに、透き通る声で言うと俺達を囲んでいる兵士達も静かになった。

 一番うるさいクソ指揮官アレックスすら静かになっていく。



「そうですわ。この2人はわたくしの友でありますが。気が焦り残してきた友の場所に一刻も早く行きたい。と、《《行って一目街を見るだけでいい》》」



 それはあってる。

 師匠曰く、『馬車よりは早く着きたいのじゃ』との事。



「わたくしは思いました。友のために偽の人質になりましょう。と。ええ……《《街を見るだけですもの》》」

「姫、ご報告はさせてもらいますぞ。飛空艇の私物化……」



 私物化。というか元々皇女サン私物だろ。



「ですが、その話聞いたアレックス。貴方は『このアレックスが代役になろう。血の付いた服を着れば副指令官も騙せる』と先ほど」

「この俺、アレックスがですが!?」

「ええ、衣服に血もついてますが痛い所はありますか?」

「な……ないな」

「わたくしは父にアレックスは『英雄』でした。と報告するもりです。ですが作戦を知らないいえ、《《妬んだ》》副指令ルーバントが友人を囲むのです」



 皇女サンが一歩後ろに引いた。

 周りがざわざわする。



「ふっふっふっふこの俺が英雄。英雄か……『英雄アレックスが命じる! 道を開けろ』」



 英雄予定のアレックスの高笑いが聞こえ始めた。



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