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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第129話 特権チケットを奪え

 酒場竜の尻尾での小さい宴会の後、いつもの宿に泊まる。

 偶然、偶然一部屋しかなかったので師匠と同じ部屋に泊まることになった。


 うーん、偶然だからね。

 うわーい興奮するねやったねクロウベル。



「って思うんだけど。眠い」

「独り言が怖いのじゃ。ワラワもじゃ……飲み過ぎじゃし、そもそも転移の門で魔力の消費があったのを忘れ……魔力を何で同じ部屋とかどうでもよいぐらいに眠いのじゃ。触ったら殺すのじゃが……先に寝るのじゃ」

「し、師匠もっとそっち詰めて……何だったら《《俺の触ってもいいですし》》」

「ぬかっせ……」



 俺と師匠はベッドに倒れ込むと意識が……眠気と戦う。

 今起きれば師匠の事を触り放題だ……。


 別に睡眠プレイとかそういうの……。



「まけるかあああああああああ!」



 俺は叫んで起きるとベッドの上で上半身を起こした。

 周りを見ると師匠がいないし、なんだったら部屋の中は明るい。

 …………寝てたのか。


 睡魔との勝負に負け寝ている師匠を眺めると言う遊びはどうやら失敗に終わった。

 体の屈伸を軽くしていつの間にか脱いだらしい細かい衣服をもう一度着る。

 俺が着替え終わると扉が開き、師匠が入って来た。



「起きたようじゃな……」

「起きましけど、昼すぎてます?」

「のようじゃな。ほれっ」



 マジックボックスから師匠は肉の串焼きを数本出すと俺に恵んでくれた。

 朝から食べる物じゃないようなきもするが、ありがたく頂こう。


 乾いた口の中に濃い肉汁があふれだし唾が大量に出る。

 軽く租借して飲み物で流し込むと胃の中に広がる感覚が大きくわかった。

 肉の香りが部屋に充満し、窓を開けた。




「俺は一攫千金を狙うぞおおおおおおおおお!!!」




 野太い声がうるさくて耳をふさぐ。

 窓を閉めた。



「うるさっ!」

「なんじゃ……突然に叫んだ男はなのじゃ」

「春には遠いですけど」



 …………そういえば四季がないので何月なのかわかりにくい。

 暦では10月の半ば。

 ゲームのマナ・ワールドの中では画面のはじっこに月と日数が簡易表示されていたのを思い出す。


 素人の俺でもわかる。

 物理的にあり得ない地形をしてるこの星。


 だって砂漠の街があったとしたら、半月ほど離れた場所では農作物育ててるとか。

 地下には迷宮型ダンジョンや天然ダンジョン。

 森があったとしたら隣は海。とかさ……。



「何か叫びたそうな顔をしてどうしたのじゃ?」

「いえ世界について考えてました」

「今考える必要な場面あったのじゃ? ワラワとドアホウは外のうるさい男の事の話してたのじゃ?」

「駆除します?」

「出来るのじゃ?」



 出来ると言えば出来る。

 もう一度窓を開け、筋肉マッチョマンの頭上から声をかける事にする。



「そこ、うるさいんだけど」

「なんだと!? てめえ、このバンバン様に――」

「水槍」



 頭上からウォータージャベリンを飛ばす。

 マッチョマンは斧を使ってその槍を斬る。



「ほう……水盾」



 ウォーターシールドを唱え、板の様に落とした。



「なんのおおおお!」



 マッチョマンが叫ぶと腕をクロスして盾を受け止める。

 馬鹿でよかった。

 ってかあの体制になったらもう何も出来ないだろう、正解は盾が落ちる前に路地から逃げないと。

 落ちてくるのを受け止めてどうする。



「水盾・連」

「このジャイドンがこんな魔法使いにまけ――」




 複数枚のウォーターシールドが板のように重ねて落ちて行った。

 窓をしめ師匠に向き直る。



「はい、静かになりました」



 さて、これでゆっくり師匠と会話ができる。



「じゃ、今後の事を考えるのじゃ…………ワラワは先に帰ってドアホウが2年かけて竜の血をレイアランド諸島にいる少女に届けにいくってのはどうじゃ?」

「却下! 却下! 却下!! ああああああ」



 なんてことを言うんだこの魔女は。

 一番師匠に効率良くて最適な答えを俺に言い放つとか。



「師匠あの負けたんですよ。ジャンケンに! 一緒に行くって言ったじゃないですか!? 不老なんですよね? 時間余ってるんですよね? 家に帰ってもゴミ屋敷になるだけなんだし、少し外でましょうよ!? ね? あと諸島なんですから俺どの島に行くのか知らないんですけど!?」

「必死過ぎて逆に怖いのじゃ……」



 必死にもなる。

 さぁ師匠と一緒編だ! って1日で終了とかインチキすぎる。



「負けたのは事実じゃしのう。まぁ仕方がないのじゃ。で、どうするのじゃ?」

「一番いいのはクウガ達が帰ってくるまで待つのがいいかも、ここで豪遊三昧、師匠だって豪遊したいでしょ……あっ」

「なんじゃ」

「帰ってこないかも」



 師匠が黙るので俺は覚えてる限りの事を伝える。



「西の盆地って確か迷宮型ダンジョンが崩壊した場所なんですよね。盆地そのものをダンジョンに使用とする感じなのかな? で、帝国側は底を切り開きたい。一次は制空権の問題で負けて……これは終わったのかな。今回は二次、なんやかんやあって成功するとは思うんですけど……飛空艇手に入れたクウガはそのまま北の大地を目指すかも」

「凍り付く北の大地。原始のダンジョン……なのじゃ」



 名前は違ったような気もしないでもないが、その場所だ。

 自宅に帰ればメモあるんだけど旅に不要だから置いて来たんだよね。

 万が一の事考えて日本語で書いたメモだから最悪燃やされてるかもしれない。



「アリシア曰く全滅するよ。って言っていたけどちょっとだけ、先っちょだけ様子見にいくかもしれないし、なんだったらちょっと中にいくかも」

「バースト」

「あばばばばばばばばばば!?」



 俺の体が突然にしびれた。



「な、なにを!?」

「ドアホウ……わざとなんじゃ?」

「…………偶然です」

「……まぁあの小僧ならあり得るのじゃ」

「でしょ……」



 あぶな。

 偶然に下ネタみたくなって、後半はわざと言ったけど何とか許された。


 廊下からどたばたと音がして宿屋のおっさんの悲鳴が聞こえた。

 俺と師匠が会話を中段して廊下を見ると声が大きくなる。



「てめええええ!!」


 いきなり開け放たた扉の前に筋肉マッチョマン、その後ろではよちよち歩く宿屋の店主。

 蹴られたのだろう腰を抑えている。



「ライトニングバースト」



 師匠が何も言わないで魔法を放った。

 白い電撃がマッチョ男にあたると全身が空気を失った魚のように跳ねて廊下に倒れた。


 こわ。



「ドアホウ。主人の手当てなのじゃ」

「あっそうですよね。『癒しの水』」



 うめき声を上げている宿屋の主人を回復させる。

 小さい声で「またあなた達ですか……」って文句を言うけど金貨を握らせたら笑顔になった。

 この店主には死にかけのクウガを預かってもらう時もお世話になったしな。



「お客様。どうがお静かに。では」



 しびれたマッチョマンを置いて宿屋の店主が戻ると師匠は扉を閉めようとする。

 その扉をガシっと掴むのは、死んだはずのマッチョマン。

 いや、死んでないか。



「なんじゃ……むさくるしいのじゃ」

「てめぇ」

「ライト――」

「ま、まってくれ! 勝てないのは分かった! 分かったから弁償だけしてくれ」



 マッチョマンは俺達に壊れた斧を見せつけてくる。



「安物を使ったのが悪かったって事で」



 俺は扉を閉めようとすると、案外力が強いのが思いっきり抵抗してくる。



「こ、これから西の大地いくのに武器無しじゃ死にいくようなもんだ」

「西の大地?」

「てめえも知ってるだろ。例の特例だ」



 特権?



「討伐隊の抽選があたったんだよ。これで功績あげれば金も地位も手に入る、今は西の大地は立ち入り禁止だろ? 良い金になるんだよ。競争率も高いチケットで……」



 普通にいくと西の大地は立ち入り禁止なのか。

 チケットがいる……と。

 じゃぁチケットを手に入れるしかないか。



「くれ」

「おい聞いていたか? このチケットは競争率も高くて……」



 俺はマッチョ男の前にしゃがむ。



「くれ」

「いや……あのな……俺は武器を治す金さえ弁償してくれれば……」

「くれ」



 マッチョ男は師匠の方に助けを求め顔を向けた。



「迎えに行くのじゃ?」



 師匠は俺に聞いてくる。



「まぁだって立ち入り禁止で帰ってくるもわからないなら行ったほうが早いかなって。で、最終的に捕まえて北の大地行く前に降ろしてもらえばいいかなって……ダメですかね?」

「妥当なのじゃ……じゃお主。チケット出すのじゃ」



 筋肉マッチョマンの顔が蒼白になっていく。

 俺も鬼じゃない。



「仕方がない……金貨1000枚で買う。武器の弁償もそれでいいか?」

「なっ1000枚!? ま、まぁいいだろう……もしかして金持ちなのか?」

「そこそこ持ってるよ。攻撃した謝罪も込めてだ」



 俺の誠意というやつだ。

 マッチョ男は立ち上がって俺にチケットを見せた。

 俺が受け取ろうとすると手をすっと上にあげた。



 イラつきと50%突破である。



 相場はしらないが価値的には1000万以上だぞ。

 こんな弱い筋肉マッチョマンが1000万も持ってるわけがない。

 壊れた斧だってそんな高そうにみえなかったし。



「1000じゃうれねえな2000枚なら売る!」



 ほう……この俺に吹っ掛けて来たか。

 イラつき度120%だ。



「金貨500枚」

「馬鹿野郎! ほしくないのか!? なんで半額になるんだよ!? 2000枚だ2000枚」



 ふむ。



「ご縁がなかったという事で。師匠部屋に戻りましょう」

「そうじゃな。馬鹿な男なのじゃ」



 扉を閉めて鍵まで閉める。

 俺が椅子に座ると扉が何度も叩かれた。



「1000でもいい! か、買ってくれ」



 扉越しに聞こえる声。

 さっき半額の500だっていうのに、なんで最初の1000にもどしてるんだよ。



「じゃぁ300」

「は? 3000じゃなくて300!?」

「はい、いま200になりました」

「馬鹿野郎! 表でろ! ぶっころしてやる!」



 扉越しに怖わーい。



「って事で師匠。ちょっといってきますんで」

「…………ほどほどになのじゃ」



 俺は扉を開けてよくわからんマッチョ男を吹っ飛ばした。


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