第122話 覚醒クウガ
俺が門前に着くと街の兵士に止められた。
「もしかして、まさかの通行料金不足。いや駐車代の請求か1日金貨2枚!?」
「いや。お前あれだろ先ほどの皇女様の一行だろ? 料金は要らない」
「あっそうなの?」
いい事をすると神様は見てるもんでなんと入場無料になってしまった。
今後は代わりに貰ったメダルを見せるとタダになるらしい。
持つべきものは《《権力を持った友達》》である。
と、言う事で帝都に入って俺は直ぐにギースの肩を叩く。
「さて……ギース。後は任せた」
「何をだ?」
立ち去ろうとした俺の腕をギースがつかむ。
痛いんだけど?
「どこに行く」
「どこって……俺の用事は終わったし宿で休もうかなって……」
「クロウ君?」
「クロー兄さん……」
即席パーティーの中で堅物3人衆に呼び止められてしまった。
1位ギース、男で静かであるが熱血の男。
2位アリシア、聖女でありすーぐ俺に説教をしてくる。
3位ノラ、俺の事をしたってくれるが昔から怒ると怖い。師匠や俺はなんど怒られたか。
「いや、もうよくない? もう俺いなくてもクウガは生き返る……じゃない元に戻るんだし手数料も払ってあるし場所だってギースが知ってるよ」
「貴様それでも行くのか仲間だろ!」
「訂正するけど、俺はクウガの仲間じゃないし。その知り合いだってだけで」
「うん。クロウ君の言う事ももっともだね」
お。堅物2位のアリシアがわかってくれた。
「でも、クウガ君の居場所を隠していたのはなんでかな?」
「はい?」
「ギース君から聞いたけど、カンザの街でみかけたんだよね? 私達に冒険者ギルドを通じて手紙とか来なかったよ?」
うん。出してないし。
俺も男だ……そのクウガの境遇を考えると、いや! 変な男女間の争いに首を突っ込みたくないのだ。
なので見なかったふりをしていたんだけど、それがばれた。
「………………ほら手紙だと行き違いになるから」
「関係を得たら最後まで行くのが冒険者だよ?」
ここで正論で、俺は冒険者じゃないし。なんていおうなら俺はフルボッコにされるだろう。
「わかったよ。俺の出番なんてないと思うけどな」
「よろしい」
「クロウベル、アリシアに弱イ」
クィルが事実をいうが別に弱くは無く、その母親に怒られてる気分でバツが悪いというか。
冒険者ギルドにいってモブ顔のギルド員アンナを探す。
なかなか見つからないが端のほうでクエストをボードに貼ってるのがそうだろう。
声をかけると驚いていたが、俺とわかると安心したようだ。
「と、言うわけでクウガの引き取りに」
「…………クロウベルさん! 大変だったんですからね! 皇女の行方不明、関係していたと思われる男、邪竜の里での大爆発に現れる古城。皇女様からの連絡が遅かったらギルドだって」
そんな大事になっていたのか。
「それもこれも全部クウガが悪いから」
「そ、そうなんですか!?」
「考えてみろ、原因はクウガだ」
地味顔のアンナはそうなのかな。と納得しかける。
「まっとりあえず。その元凶を引き取りに来たから」
「わ……わかりましたけど。では地下の鍵貰ってきます」
アンナが直ぐに鍵を持ってきて俺達を案内する。
地下室の一室。
映画で吸血鬼が寝るためのような棺に入ったクウガがそこにあった。
表情は穏やかで胸の部分の衣服をめくると思いっきりえぐれてる。
相変わらずきもい。
「うわ……クウ兄ちゃん。しんで……ないよね?」
「この男は生きている!」
ミーティアが心配してるが、ギースが力強い宣言をした。
生きてるから連れて来たんだ。って言ったら怒るだろうな。
「クロウ君?」
「ま、まだ何も言ってません」
「……もしかしてまた変な事考えていた? 私が言いたいのはこの上からかけられてる魔法解除して欲しいって話なんだけど」
「ああ。それならギースだ」
ギースが一歩前に来るとアリシアの顔を見る。
「本当に大丈夫なんだろな」
「頑張っては見るよ?」
ここで絶対。と言わないのはアリシアの性格が出てる。
そう言いながら全力以上の力を出すのがアリシアだ。
「むう」
「ギースも心配だったら別な人探せば?」
「こら、クロウ君」
「貴様が怒るのはもっともだ。魔法を解除する頼む」
ギースが一歩後ろに下がると手を組み始めた。
小さく何か言うのは魔法だろう、俺の目には魔力の揺らめきが見えその大きさが増えていく。
ギースの魔力がすべてクウガに移ったようにみえ、ギースはそのまま膝をついた。
同時にクウガのほうに異変が起こりクウガの口が突然に開いた。
「ううううう! に、逃げるんだ……ア、アリシア……」
「ハイ・リザレクション!」
アリシアの詠唱が終わった。
何重にも見える複雑な魔法陣がアリシアの足元から消えては現れる。
その光が範囲に広がると心臓をえぐられたクウガを包み込んだ。
俺の目にも傷は消えていき……クウガは伸ばした手で何かをつかみ意識を失った。
誰も何も言わない沈黙が続く。
クウガ突然がばっと起きた、俺やアリシアを見るとどうやら意識は戻ったらしい。
「アリシア! その男から離れろ! 我が名に応えその輝きを与えん事を『ライトドラゴン』あまたの邪を退ける盾を『ライトシールド』」
狭い地下室で光竜とでもいうのか出すと一直線に俺に向かって攻撃を仕掛けて来た。
「クウガ!?」
「僕の名前を軽々しく言うな! この極悪貴族め! フユーンの民に代わり僕はお前を殺す!」
「え、フユーンの民って」
クウガは俺を光の盾で押しきろうとする、ってかせまい。
ギルドの地下からでるか、幸い建物から離れた場所にあるので地上はちょっとした庭になっており冒険者同士の練習場みたくなってる。
「逃がすか! アリシアに襲い掛かって!」
「かかってねえ!」
「嘘だ! 僕の前でキスをしたくせに!」
ちらっとアリシアを見ると、ぶんぶんぶんと横に首を振ってる。
そりゃそうだ。
ゲームと違って俺は何もしてない。
ゲームと違って……?
もしかしてクウガは原作の話してる。
ってか普通に強い。
「水盾!」
「ライトシールド!!」
お互いの魔法がぶつかり合う。
「ちっ!」
「おっ」
俺だってそこそこの自信はあるのにまさかの相殺。
これはあれか気迫の差かもしれない。
どうする、アンジュの剣は直ぐに出せる。
が、俺とてクウガの首は要らない。ってかこの状態でクウガ殺したら不味いだろ。
アリシア達が地下からでてきて『はいクウガの首ー』でもうそれは終わってる。
「落ち着けクウガ!」
「なれなれしく僕の名前を! いえ! アリシアをどうした!」
「どうしたって……どうもしない」
「口では言えない事を……殺す! 正義のために領主クロウベル貴方を生かしておく事は出来ない!」
階段を後ろ向きで何とか外にでた。
これで俺も魔法を唱えられる……が……。
クウガは近くにあった冒険者の剣を握ると魔法を唱える。
「エンチャントファイヤ」
冒険者の剣が燃えて一気に間合いを詰めて来た。
仕方がない俺もアンジュの剣を出しその剣を受け止める。
「なっ!?」
クウガの蹴りが来ると俺との間合いを強制的にずらされた、そこの炎の剣が来て首筋斬る。
俺の回避がちょっとでも遅かったら首と胴がいないいない婆。の状態だ。
「『癒しの水』」
「回復とか……そんなに強いのになぜ民を牛耳る!」
「牛耳ったことなんてない!」
今の俺は追放されてる身分だっちゅうに。
「僕のアリシアを襲ったくせに!」
「襲ってねえ! むしろお前だろ、聖都のアンジェリカと妹とにゃんにゃんしたのは!」
「聖都はこれから行く場所だなに…………あれ」
クウガの動きが止まった。
「にゃんにゃんしたんだろ? クリティカルヒットでクウガパパだもんな、養育費は要らないらしいからよかったな」
「え。いや……聖都はまだ行ってなくて……いった……あれクロウベルさん? ですよね?」
「今しがた殺されそうになったクロウベルだよ!」
俺が怒鳴るとクウガが糸の切れた人形のように倒れ込む。
いつの間にか地下から出て来たミーティアやクィル、アリシアまでもが俺を素通りしてクウガに寄っていった。
「ノラはいかないのか?」
「ボクはクウガさんと付き合いが短いからね……それよりも傷大丈夫? ボクとしてはクー兄さんに怪我を負わせたクウガさんの方が許せないんだけど……数日前にみたクー兄さんなら殺せたんじゃないの? 手加減した?」
「そりゃまぁするでしょ」
「相変わらず優しんだねクー兄さんは」
優しくないからな。
なるべく自分の有利に動こうと思ってるだけで。




