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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第118話 時間ぎりぎりじゃん!

「で、なんですのこの人型タヌキは……こっちに座りなさい」

「タヌ!」



 皇女サンがタヌを見て呆れた声をだすも自分の所に超させようと誘いだした、案外可愛い物が好きなのかもしれない。


 その呼ばれたタヌのほうは怯えている。

 うん、皇女サンの目つき鋭いもんな「殺されるタヌ」と言うとギースの背後に隠れた。

 あっ、そこはお金出した俺じゃないのね……いいけどさ。


 タヌを呼んだ皇女サンが少しだけシュンとなる。



「と、言っても男に挟まれるのも絵的にまずいだろうし女性陣の所にいってこい」

「食われるタヌ!」

「……たべませんけど、もしかして亜人のお肉はおいしいのかしら」


 タヌの耳がペタンと倒れブルブルと震えている。



「あっちのメーリスの横にいっとけ」

「わかっタヌ」

「ふっふサンの冗談だよ。ええっとタヌちゃん。こちらがサンで私が紹介されたメーリス。あっちの無言なのがギースで、タヌちゃんを保護したのがクロウベル、わかった?」

「はいタヌ!」



 調書もかねて皇女サンが鍋をわけると食事の合図となる。

 今日の夕飯がタヌキ汁じゃなくて本当によかった。ってか亜人って色々いるけど食事でかぶったりしないのかな。


 ウシ型の亜人がハンバーガーを食べるとかさ……深く考えるのは辞めておくか。

 

 俺も汁物を少し胃にいれタヌにも「好きに食え」と、言っておく。



「いいタヌか?」

「いいたぬよっと。色々聞きたいけど…まずは何で無銭飲食?」

「騙されたタヌ。一泊金貨1枚ていうから泊まったタヌ。ごはん別聞いてないタヌ」

「何泊した?」


 タヌは指を数えはじめる。



「1ポン2ポン3ポン4ポン――――」



 ポンなのか。



「9ポン10本! 7泊タヌ」

「8から10数える必要あったか!?」

「食事は30回以上あったタヌよ」



 ああ、そうですか……駄目だ微妙に会話になってない。



「じゃぁ次だ。タヌ……」

「はいタヌ?」

「たぬって邪竜のいけにえじゃないの?」

「!?」



 タフは食べていた豆腐を口から飛ばして、俺にあてると急いで部屋の隅に逃げて行った。



「ってかあっちいい!」

「戻りたくないタヌ! 見つからなかったタヌ!? クィル助けてタヌタヌ!」

「あっち、あっちい『癒しの水』! ねぇギースここみて、火傷なってない!?」

「近寄るな。なってない」



 これが戦いなら回避したり盾で受け止めるもあるけど、飯食ってる時に目の前の席から豆腐が飛んでくるとか回避不可能だよ!



「あら貴方、回復魔法も使えたのですね」

「初歩だけどね……」

「どういう事ですの、クロウベルさん。あの可愛らしい喋るタヌキがいけにえ?」



 喋るタヌキじゃなくてタヌキ型の亜人ね。

 皇女サンもわかってると思うので訂正はしない。



「邪竜の里ではいけにえを崖から落とす風習があるんだけど、そこのいけにえがタヌだった気がする」

「その風習は知ってますけど、イケニエの順番まで何で知ってますの?」



 そうなんだよなぁ。

 思わず口走ったけど。



「クィルから聞いたような?」

「クィルはお姉さんタヌ。人間連れて来たタヌ」



 部屋の隅で口をもごもごしながらタヌがしゃべりだす。

 よく見るとミーティアがお椀をタヌに渡していた。



「あーもしかしてクィルの里帰りみたいなやつ? 他にアリシアとミーティアとシアもいたでしょ?」

「タヌ?」



 里帰りの意味がわからんか。

 ゲームでは街があったら入るって事で帰る理由はあんまりないのよね。

 なるほど、里帰りなら何となくだけと納得もいく。



「貴方……」

「何?」

「いえ貴方の知り合いは女性ばかりなんですね。と思いまして」

「…………正式に言うと俺じゃなくてクウガね。探してる聖女アリシアだけど、他に格闘家ミーティア。弓師クィル。その辺は全部クウガがパーティー」



 シアは違うので名前は出さない。



「1人足りませんね。そのシアさんというのは?」

「……それは俺の知り合い。とうか誰が知り合いでも……っと話の途中か。タヌ、合ってる?」

「あってるタヌ! 何ものタヌ!?」



 神様です。とここでギャグを言いたいが、とんでもない事になりそうなので普通に「知り合いだよ」とだけ答えておく。



「ほら、そんな隅で食べなくても、怖くないですからこちらに来なさい」



 皇女サンが舌を小さく鳴らすと、タヌは恐る恐る戻ってくる。

 野生の猫かお前は。



「タヌ……と言ったな。聖女は里にいるんだな、いつまでいる」

「もう死ぬタヌ、間に合わなかったタヌよ……」



 ギースの言葉にタヌは変な事を言った。



「なんで? あれだろ? いけにえの交換だろ……でも崖の下でキャッチする仲間がいてそういう風習なだけだろ」



 ゲームイベントでは女装したクウガが身代わりになるが、ここで死にかけているのでアリシアかだれかだろう。



「今年はいないタヌ」

「ん?」

「受け止め役のキツが逃げたタヌ」



 タヌキと言えばキツネである。

 そのキツネのキツとはタヌの恋人で後に一緒に帝都にて店を開くはずなんだけど……。



「タヌにキツを探してこいっていったタヌ」

「なんだが童話みたいな話ですわね、全然頭に入ってきませんわ」



 まったくだ。


「ええっと、タヌの代わりにアリシアがいけにえで。助けるキツはいない。タヌはそのキツをこっそり探す旅?」

「あってるタヌ!」



 タヌが俺に拍手をしてくれると皇女サンとメーリスも拍手をしてくれる。1人拍手しないのはギースだ。



「え、やばくない?」

「やばいタヌ……なのに旅費はなくなるタヌし。ギルドに知られると強制送還タヌよ」

「仕方がない……俺達もキツを探すか……次の祭りまで何日だ」



 だんだんとアリシア達から離れているような気がするがこれも仕方がない。



「次の月のないよるタヌ」

「となると明後日の夜か……ええっとキツがいそうな場所は……は?」



 鍋がコトコトと煮える音だけになった。

 誰も声を出さない。

 いや考えているのだ。



「おかしいですわね、あそこのお祭りは後2週ほど月の無い日と思いましたけれど、そうなるともう少し後ですわよ」

「人間……それも沢山の女性を落とすことになって早くなったタヌ」



 亜人は人間嫌いだもんな。



「つまりだ。亜人の里は人間の事をよく思ってない、そこで何らかの事情でイケニエ役になった聖女達はその役をやる。本来助かるはずなんだけど助ける役の亜人が行方不明で、それを探しに来たけども馬に合わなくて途方に暮れてた。あってる?」

「あってるタヌ! すごいタヌ! 天才タヌ!!」



 いやぁ。てれるなぁ……って。



「もおおおおおおおおお少し早くいってくれないいいい!?」

「た、タヌ!?」



 俺が立ち上がると皇女サン達も立ち上がった。



「先に『コメット』にいる」

「わかりましたわ、着替えた後にすぐに」

「貴様! 大丈夫だっていってたいただろ!」

「そういう文句は……いや今はいい走るぞ」



 俺とギースは走ってコメットまでつくと魔石のエンジンをかける。

 少し浮いた所で作業着に着替えた皇女サンとメーリスが走って来たのがみえた。あとなぜかタヌも一緒だ。



「え、なんでタヌも?」

「あそこに置いていけと?」

「タヌ……捨てられるタヌ……恩を返すタヌ!」



 そういえばアレも財布をすられて立て替えただけで命を張るような亜人だったな。



「まぁいいか。最初だけ少し揺れる」



 急上昇して船体がかなり揺れる、いい具合に上空にいくとアクセルペダルを一気に踏み込んだ。



 ――

 ――――



 とまぁ、いい感じに緊張感があったんだけど。

 人間って集中力とか緊張した時間は長く持たないよ、もうおれは5時間ほどペダルを踏みこんでる。

 その間、トイレや食事一切なし。


 皇女サンとメーリスは既にやる事がなくなり、ソファーでうつらうつらしてる。

 タヌは既に寝ていて、起きているのはギースぐらいだ。


 でも、ギースは無言で話し相手にはなってくれない。



「どれぐらいで着くのだ?」



 うお、話し相手になってくれたよ。



「さっき王国のはじっこ見えたから、あと半日ぐらい……でも魔石を休ませるのに途中休憩いれないとだから……結局はぎりぎりかもしれん」

「間に合うのか?」



 ギースの圧が凄い。

 そりゃそうか、ギースは最初から『邪竜の里に行くべきだ!』 って言ってたのにイフとか寄り道したから怒っているのだ。



「でもイフによったぐらいでそんな怒ること無くない?」

「…………何の話だ?」

「え、イフによったから怒っているのでは」

「…………温泉は俺も入った、乗り込む前に怒ったが……自分も考えた。それにイフに行かなければどのみち急いで行かなかったのだろう結果はもっと遅かったに違いない。自分は貴様に間に合うのか? とだけ聞いているのだ」

「正直。無理かも」



 クウガなら絶対に『間に合う』っていうだろうが。



「ふ……アイツなら『間に合う』とでもいうのだろう。貴様らしくていい答えだ。どんな結果でももう何も言うまい」



 嘘だ! 絶対に文句を言うくせに。

 文句ならまだいいよ。

 最悪、時を止めて俺を殺せるんだろ……。



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