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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第110話 ぼったくりじゃねえか!

「俺は帰ってきたぞおおおおおおおおお!」



 道の真ん中で叫ぶと、帝都の出入り口にいる人間が俺を見る。

 ひそひそと何かを呟き遠巻きに歩くのを見ると、俺は立ち上がり土埃を払う。


 さて、いくか。

 帝国首都グランバールの街を守る兵士に入場料を払う。

 ぶっちゃけ何万人住んでいるか知らないこの街で1人の冒険者を探すとなると不可能に近い。


 そのために冒険者ギルドがあるんだけど、あそこは探偵みたいな事もしてる。


 まぁまずはそこか。

 と歩くと「ぼったくりよ!」と大きい声が聞こえた。


 帝都は基本物価が高いからなぁ。

 それでも王国とそんな大差はない、あるとすれば武器や防具。回復アイテムなどが王国の数十倍したりする。


 ぼったくり。というのは何かの製品を買うとか、そんな所だろう。

 店のマークはスパナのマーク……ん。



「もう一度いうわぼったくりよ!」



 うーん。

 聞き覚えのある声がする。

 野次馬が立っているので少し話をする事に、これがメーリスだったら助けるし、違ったら素通りしよう。

 クウガじゃないんだし女の子が困っていたとしても全部助ける事もない。



 ………………自分で言って置いてなんだけど、全部助けてるような。



「騒いでるのって誰?」

「あーおのぼりさんだな」



 おのぼりさん。別に人の名前ではなくて観光客って意味だったような。



「作業服姿でよ、青い髪で田舎娘だったのか? 金はある! って叫びながら工具店にはいったんだが……すぐにぼったくりよ! ってな。都会の物を買おうしてだろうな。言っておくがここは割と良心的だぜ」

「もしかして、胸は小さい? 目つきはちょっときつめで20代後半あたりとか?」

「なんだ兄ちゃん知り合いか? その通りだよ」



 仕方がない、たぶんメーリスだろう。

 店の中に入るか……店内は大小さまざまなスパナ。車輪のついた鉄製の荷台。装飾が付いた手袋……これは魔力がながれてるな、俺でもわかる高そうだ。



「いらっしゃい、わりい今取り込んでるんだ、少し待ってくれ。なっこっちも客がいるんだ姉ちゃん悪いけど『ぼったくり』じゃねえ正規の値段だ。それに値段交渉はいいと思うが希望じゃなかったら出てけ」

「買う! 買うからまけてって言ってるの! マジックグロープの試作型なんて初めてみたのよ!」

「だったら足りない分を何とかしろ、客が来てるんだ客が」



 店主の言う事はもっともだ。

 それが諦めるしかない。



「こっちが先よ! ねぇ少しまって…………え? クロウベル?」

「よっメーリス」



 あっちこっちふらふらして、あったら軽くおでこを殴ってやろうかと思ったが、こうして会うと少し安心する。

 だってメーリスは鍛冶師、弱いんだよ?

 はぐれゴブリンすら倒せないし戦闘に関しては伝令ぐらいしか出来ない。


 その伝令も出来るかはしらないけど。



「良い所に! 足りない分は彼が出すわ!」

「「そうなの!?」」



 俺と店主の声がかぶった。



「兄ちゃん、この客……じゃねえな冷やかしと知り合いかい?」

「まぁ知り合いではある」

「良い所であったわね。ねぇお願い払って足りない分だけでいいのよ。あの飾ってあるマジック手袋みた? つけるだけで鉄がふにゃっと飴細工のようになるのよ。もちろん人体には効果ない、素晴らしいと思わない」



 足りない分ぐらいは出してもいいか。



「だいたいぼったくりって言うほど高くはしてねえ」

「俺も店主の意見側だよ。諦めればいいのに」

「それよりも出してよ。貴方からもらった例の奴換金したんだけど、本当になにあれ」

「よかったろ?」

「あんな高価なものポイポイ上げる方がおかしいわ! おかけで豪遊できたじゃないの!」



 それは嬉しい限りだ。

 なんで怒られてるかわからない。



「ため込んでも死んだら終わりだし」

「そうなんだけど、だったら払って。ねっ触らせから」



 メーリスは胸を前にぐっと差し出す。



「触るほど無いだろ?」



 メーリスの表情が固まった。

 店主のほうもメーリスの胸を見る。



「触るほどないな」

「あんたたち! これでもあるのよ、見せようか!」

「まてまてまて」



 服を脱ごうとするメーリスを抑えて店主を見る。



「足りない分は頑張る。いくら足りない? 払える額なら」

「ざっと金貨2万枚だな」

「高すぎだろ!! ぼったくてんじゃねえ!」

「そうよ! 金貨300枚にして!」



 思わず叫ぶ。

 店主の方は涼しい顔だ。



「彼氏のほうも金がねえのかよ。ぼったくりじゃねえ、これは特別な技師用のマジックローブだ。高いのは当たり前だろ。それも量産型じゃなくて試作型だぞ……けえれけえれ! どこの世界に2万を300にする店があるんだよ! あっいやまだ帰るな」



 なんだこの店主。

 帰れといったり残れと言ったり。



「帰れって言われても帰らないわよ。ほしいって言ってるのじゃぁ予約! 予約」

「駄目だ! 予約して死んだらどうする、後味悪いしこっちだって売れにくいだろ。明日にでも金貨2万枚で買うって奴がいたらこっちは直ぐに売る」



 まぁそりゃそうだ。



「絶対欲しいのおお! クロウベル何とかして何とか!」

「無理だろ……強盗でもする?」

「する!」



 店主の前で何を言っているんだ。

 おっちゃんだって半笑いだ。



「ずいぶんと騒がしい事ですのね」



 高貴な声が背後から聞こえて来た。

 振り向くと逆光で見えにくい。作業着をきた……皇女サンか?



「…………サンか?」

「お帰りになったのですね、クロウベルさん」

「誰? あなたこの人が探していたメルさんってストーカー相手? 随分と職人気質な人なのね。クロウベルと付き合うの考えたほうがいいわよ?」



 メーリスが皇女サンを見て師匠と勘違いしてる。

 あと、俺の評価を下げないでくれ……いや一般人に下げて貰うのはいいが、本当に師匠相手であれば余計なお世話だ。



「ちがう。ええっと……メーリスに紹介したい人がいてその人がこの人なんだけど。どこから説明したらいいか」

「別に要らないわよ。あなたの女性問題にかかわりたくないし、それよりもこのマジックグローブの事よ。それが終わらない事には一歩も動かないから!」



 なんて強情な。



「所でサンって呼んでいいのかアレだけど、なんでここに?」

「何でもなにも、ひいきにしているお店に騒ぎがあれば様子見にきますわよ」



 本当に皇女なのか、自由すぎるだろ。

 本人は継承権なんて興味ないみたいだし、死んでも大丈夫って思ってる節はあるけど。



「そこの貴女、この銃を作ったのは貴女?」

「え、なに? あっそれ試作型のスタン銃。クロウベルにあげたのよね、なんで持ってるの?」

「頂きましたの」



 しれっと嘘を混ぜるので俺は訂正する。

 


「やってない。交換条件の一部だ一部」

「素晴らしい銃ですわね。取り扱いが面倒な火薬ではなく魔石……いえ魔水晶を使う事により魔石と同じ効果を。安全性を上げるとともに魔水晶に入った魔力を雷系の動力に変化。これを受けた一般人は数分のしびれを受けるでしょう。女性、子供にあたったら犯罪に巻き込まれる点が心配ですが、魔物退治。一部の兵士に持たせるぐらいなら役に立つことでしょう。連発式ですが重要なのは魔石のほうじゃなくて本体。魔石の方は交換すれば使えるようになってますわね」

「ふえ……」



 メーリスが立ち上がった。



「そこまでわかる!?」

「ええ。とてもいい武器です、問題は使う人の問題ですね」

「でしょ!? わたし鍛冶師メーリスって言うの普段は農具とかそっち系なんだけど昔から未知の道具に憧れていてね」

「わかります。何時までも魔法使いに! いえ……魔物に怯えるような世界は嫌ですし」

「わっかるー。魔力が生物にあるのはわかるわよ。でもほとんどの人がそんなの出せるわけじゃないでしょ――」

「そうですわね――」



 何か2人で意気投合し始めた。

 俺は飽きられた店主の横に座ると2人を眺める。

 下町の工場娘と社長令嬢技師みたいなものか。



「たまにな」

「ん? 何おっちゃん」

「いや、たまに変わった客が来るとああやって見に来るのよ。これほどうれしそうな姫ちゃんを見るのは久しぶりだな」

「…………アレの正体知ってるの?」

「お得意様だからな……あのマジックグローブあるだろ? あれを作ったの姫ちゃんよ」

「マッド同士気があうのかねぇ」



 美しい友情だ。

 俺なんて友達なんていないからな……クウガは違うし、アリシアとは友達というか、その上を行く戦友。

 師匠は思い人で、他に仲良さそうな奴は特に思い出せない。

 貴族世界なんてそんなもんよ。俺の家は違うが他家は腹の探り合いというか、剣振ってる方が面白いまである。


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