第103話 とある馬車での男会議
「クロウベルさんはムラムラしないんですか?」
そんな質問を受けたのは帝都行きのバス……じゃなかった馬車の中。
投げかけて来たのは知り合いのクウガ君22才。
すでに街を出発してから5日目の昼だ。
何度も宿場にいったり野宿ポイント、馬車を変えたりしてのまったりな旅。俺は読んでいた本を閉じてクウガを見る。
迷いの森に関して何か乗ってないか本を出して探している所だ。
攻略ページには王国の『忘れずの森』は載っていたが『迷いの森』は特に何もない。
正確な道を行かないと迷う帝国にある森の事だ。
ここからが本題というか。
迷いの森は確かに『あった』
あったというのは過去の話で、これまた人間ってすごいって話。
迷いの森の木々をはじから切っていく。
その結果森はだんだんと小さくなって最後には平原になったのだ。
もうこれで迷いの森何て迷わなくて済むね! って事、いや本当人間の知恵って恐ろしい。
その上に作られたのが帝国の学園都市ソニア。
実力主義の学園都市で帝国や共和国、東の国、王国なども共同出資で運営されている知の学園。
「あのクロウベルさん?」
「あっごめん。違う事考えていた……ムラムラか普通にあるよ」
ムラムラもしないのに師匠の乳や尻をさわっているのであれば、これはもう異常者だよ。
「じゃぁ! 僕の気持ちわかりますよね!」
「あれだろ? アリシアがいたけど、シスターフレイに誘われたからちょっと相手したらクリティカルヒットしたんでしょ? まぁでも1人だけの過ちなら……駄目とは思うがよく話し合って」
「…………1人だったらその」
ほわっ!?
え。このイケメン何人も異性行為働いてるってか?
さすがの主人公様である。
「他には?」
「あの男同士の友情って事で内緒にできますでしょうか?」
なぜ敬語。
俺とクウガに憎悪はあっても友情は無い、無いが聞いてみたいのでウソをつく。
あっ憎悪も俺からはもうそんなないけどね以前の俺だったらって話。
「内緒にするよ」
「アンジェリカ様……」
「は? いやだってアンジェリカは俺とあの城にいったんだぞ時系列おかしいだろ」
「ですから、出発前にです……シスターフレイさんからは『姉としたのをばらされたくなかったら……』と」
「そ、そう」
驚きの結果はCMの後で! の本当に驚きを食らった気分だ。
肉食姉妹か。
俺もシスターフレイにちょっと誘われたけど乗らなくてよかった。
色んな意味でクウガと兄弟になる可能性もあった、それ所がクウガが逃げた結果、貴方の子よ? と責められたら師匠に何て言えば……。
「いや、師匠は『やっとワラワ以外と』って喜びそうだな」
「僕、メルさんの話してましたか?」
「ちょっとした過程の話だ。それで?」
「そ、そうです! それをアリシアはあんな軽蔑の目でみるだなんて」
アリシアは軽蔑してこなさそうだけどなぁ。
たぶん、自信過剰では。
「勘違いなんじゃないの?」
「いえ……あの僕に何も関心しないような冷たい目……口を開けばクロウベルさんの心配、シスターフレイはその後も毎晩僕を求めてきて、それはクィルに見つかり……クィルも」
「は? おまクィルにも手を出したの!?」
「いえ……クィルはミーティアに相談して、ミーティアはアリシアに相談してバレました」
ああ。なるほど。
別に手を出したわけじゃないのか。
「僕はクロウベルさんじゃない!」
いきなりの逆切れだ。
後アリシアは俺に好意があったのは、いくら俺がボクニンジン……朴念仁でもわかるし、告白もされたので否定はしないが、キレイに終わってるよ。
俺にとっては良き友人であり姉弟子みたいなものだ。
少しばかり俺の責任もあるのかなぁ、ゲームの通りに俺が死んでいればアリシアはクロウベルにもっと見向きするわけで。
「……アリシアも一緒に誘えばよかったのに」
まぁ冗談だ。
場を和ませるというか。
「誘ったんですけど」
「誘ったのか!」
「アリシアは僕の事を『普通の幼馴染だよ』としか」
俺の知ってるアリシア、ゲーム情報でいうとクウガが浮気イベントしてもずっと待っていた正ヒロイン枠だったんだけどなぁ。
まだ帝都まで3日ほどあるんだよ、こんなきゅうくつな馬車の旅は辞めて欲しい。
少し元気つけるか。
「だったら特別な幼馴染になればいい!」
「特別……?」
「そうだ。各属性を使えるクウガは器用貧乏かもしれないが英雄の素質がある!」
「また適当な事をいってるんですよね?」
「…………なわけないだろ。マナワールドでお前は間違いなく主人公だよ」
実際そうだし。
「英雄って何をすればいいんでしょ……」
知らない。
「困ってる人を助けるとか……?」
「困ってる人を助けた結果こうなったわけです」
「困ってた女性の間違いでは」
「…………」
誰か助けてー!
今すぐにでも馬車を降りたい。
「呪いだったよな。解く方法なら一応知ってる」
「え…………な、なんでですか? それよりもどうして!」
「クウガの事が心配」
嘘である。
実際はゲームを攻略したから。
言われたクウガは肩を震わせている。
嘘がばれてしまったか。
「いやクウガ君」
「クウガで結構です! クロウベルさん僕はなんて……教えてください!」
「北極……じゃないか。まぁ北にある人の住めない氷の世界。そこの迷宮型ダンジョンの最奥に負の意思というかボスがいて、倒すことでクウガの呪いを吸い取るのかな。まぁそんな感じ」
「…………嘘はいってませんよね?」
「嘘は言ってない」
本当の事も言ってないけど。
ちなみに倒し方も何もやっぱりごり押ししたので正攻法があるのかは不明。
聖女の力で回復は楽だったのを覚えてる。
「わかり……ました……」
「行くのはいいけど、本気で行くならアリシアと連絡したほうがいいよ」
「え……なんででしょうか」
「いやだって回復困るでしょ」
クウガが回復か……と呟いてる、突然に俺を見た。
「ク――」
「やだよ」
「……まだ何もいってません」
「俺と一緒に来てくれませんか? って話でしょ? そりゃ俺は一応回復使えるけど自己流だし回復力も弱い。あと死にたくない」
「クロウベルさんなら死なないぐらい強いじゃないですか……」
死なないぐらい強い。んじゃなくて死なないように危険を回避してるの。
ヴァンパイアのダンジョンだって何か1人足りないだけで死んでいた可能性がある。やだよそんな毎回毎回危険起こすのは。
師匠と一緒に寝て。
揉んで吸って、朝起きて珈琲飲むような生活にダンジョンは要らないのだ。
「死んだら言う事出来ないし。話終わった?」
「え。ええ……まぁ……」
「じゃっ俺は本でも読むよ」
「冷たい」
20代の知り合い。
簡単に言えば同性の陰キャと陽キャだよ、話し合うわけないじゃん……。
「そういえば……クウガ良く帝国までこれたなぁ船乗った?」
「そういうクロウベルさんこそ1年行方不明からどうやってここまで」
しまったヤブヘビだ。
転移の門はクウガに知らせてないし教えるイベントは俺じゃない。
「ええっと……師匠の魔法が失敗して王国から帝国に飛ばされはぐれた。みたいな? クウガは?」
「僕は有名な占い師に遠くに行きたい。と相談したんですが、転移の門……そういう道具が世界にあると、それに魔力を込めて……とにかく遠くにと。僕が使ったのはゴールダン共同墓地でしたね」
ん?
「クウガ。死んでくれ!」
「何でですか!?」
「お前が転移の門に魔力を変にいれるから俺は師匠と離れ離れになったの!!」
「え、クロウベルさん転移の門の事知っていたんですか……いやでもさっきメルさんの魔法の失敗って」
「しょうがないだろ、あんな道具ほいほい人に教えたらだめに決まってるだろ!?」
クウガが反論してくるけど、当たりまえだ。
あんなのが世間に知られたら世界戦争待ったなし、だからこそ封印されてるし魔力を持った使い方になってる。
「仕方がないじゃないですか! アリシア達から遠くにいくには……遠くに行くには……僕だって遠くに行きたくていったんじゃ……」
「やばい。な、泣くなクウガ。そう俺が悪かった……良く考えれば転移の門の異常も見抜けなかった師匠が悪い。そうクウガは悪くない」
もうこの主人公情緒不安定すぎるー早く帝都にいって絶対にわかれてやる。




