第102話 凱旋と次の予定
カンザの街、そこにある冒険者ギルドの3階特別室。
俺はそこにいて目の前には先ほどギルド員が持って来た水を飲む。
この世界、珈琲や紅茶、当然お茶もあるのに水である。
これははよ帰れの合図なのか? でも呼ばれたのは俺だしなぁ。
酒とは言わないけどせめて味のある飲み物を出して欲しい。
扉が開くと剛腕のウェンディが入って来た。
タンクトップでブラ内蔵なのか大事な所は飛びでてない、腕の筋肉が凄い女性である。
「話は聞かせてもらったよ」
「いや、何も言ってないけど」
この部屋に来て最初の会話がこれだ。
そういえばゲームでもボスを倒した瞬間に街に戻ると街中の人間が知ってる摩訶不思議な事の事か?
それであればあのヴァンパイアに特殊なチップが付いていて倒すと消えるとかかもしれない。
剛腕のウェンディはテーブルをはさんで俺の前に座る。
「だから話は聞かせてもらったよ」
「だからまだ何も言ってない」
「あのね。別にあんたから話を聞かなくてフーロンとエール。それとシアから聞いたよ」
あっなるほど。
そう言われると俺だけが説明してないだけで他の奴から聞くことも出来たか。
ってか、それならそういえ。この筋肉女。
「何か言ったかい?」
「今日も筋肉が美しいですね」
「そうだろ? そこらの男には負けない筋肉さ」
機嫌が良さそうでなによりだ。
「まっ特別依頼っても、あんたの強さならエールの遺品でも持ってこれる。と思って頼んだけど、まさかヴァンパイアの王を倒してくるとはね……しばらくはあのダンジョンは封鎖されると思うよ」
「へぇ……ボスって復活する?」
「場所によるとしか、それも含めてあのダンジョンは冒険者ギルドで禁止を出しとくよ、それでも行く馬鹿はこっちの管轄外。で少ない金額だけど依頼料」
テーブルの上に金貨が5枚並べられた。
「すくな!」
「……だから少ないって言っただろ? あんたも男ならこれで発散できるんじゃないかなって」
「発散?」
「こっちのほうだよ」
剛腕のウェンディは指で丸を作って人差し指を出し入れする。
ああ。そっちね……別に今はいいかな。
「美味い飯でも食う事にするよ……マジックボックスも貰ったし、宿も豪華だった」
「最後の宿になったら困るからね、少し奮発したよ所で行く当てはあるのかい?」
「あるよ……出発前に頼んだけど俺の師匠の足取りを知りたい」
「冒険者登録はしてないのに自称魔法使いメルって人だね。ここ最近でそんな人は来てないね」
まぁそうだろうな。
王国と帝国じゃ距離が遠すぎる。
「まぁだろうなって思っていたし、しばらくは帝都のほうにいくから……あそこ学園の分館もあるし」
「珍しいね、そんなに馬鹿なのかい?」
「調べもの」
「そうかい、予定がないならカンザの冒険者ギルド専属の特別冒険者にならないか? って誘いだったんだけどね。ランクは特Aを用意したんだけど」
「辞めとくよ」
専属冒険者は何もしなくてもギルドから多額のお金が払われる本当に特別冒険者の事だ。
ギルドの運営にも文句も言える、その反面ギルドが出す特別任務に積極的に参加しなければならないし。
新人冒険者を教えたり導いたりと会社員勤めの冒険者みたいなもんだ。
「残念。じゃっ話はそれだけさ」
「なんだ別に上に来るほどの話でも……」
「まぁいいじゃない。英雄の顔を拝んでおこうとおもってね」
「英雄ではない」
「あら。褒めてるのに」
ほめ言葉相手が気持ちよければほめ言葉になるだろう。
「やなんだよ英雄とか、英雄って言葉に縛られたくない。別に困ってる人間を全員助けられるわけじゃないし」
「…………そうだね」
剛腕のウェンディが立ち上がるので俺も立ち上がる。
お互いに握手をして俺は先に部屋を出た。
1階に降りて他のメンバーを探すもいないみたいだ、カウンターのはじに子供……じゃなくフーロンがいるのでそのカウンター前に行く。
「よ!」
「読めない本があれば鑑定料金と共に」
「いや、今はいいや……それより不機嫌そうだな」
「ギルドに黙ってエールを助けに行ったからね、物凄い怒られたし財宝も9割没収された……」
「あー……どんまい。他の3人は?」
フーロンは首を振った。
と、言う事はもうギルドを後にしたのだろう。
まぁ俺も別れの挨拶ぐらいの用だ。
クウガには早くアリシアの所が、子供を産んだシスターフレイの所に戻るのか? と聞きたい所だったかいないなら仕方がない。
冒険者ギルドを出ていくつかの骨董品屋でくすねた財宝を少し売る。こういう所のほうが高く買い取ってくれるのだ。
少し高めのホテルに泊まる事にした、部屋の鍵をもらって中に入る。動きやすい恰好にしてベッドに座るとマジックボックスから大量の本を取り出した。
「さてさて……」
適当に読めそうな本を一冊読んでみる。
裸の女性が、顔のない男性に襲われてる絵が多い本だ。
あっこれピンクの本だ。
そっと閉じて俺は寝る事にした。
――
――――
宿を出て帝都行きの馬車に乗る。
乗客は少なく、帽子を深めに被った男と俺だけだ。
カンザの街からしばらく離れると、帽子を深めに被った男が帽子をとった。
「クロウベルさん!」
「……クウガ? あれ、なんでここに。エールやシアはどうした? 一緒のパーティーだったんだろ?」
「ええっと……その幼馴染を置いて子供を作ったのがばれたら、私達とは遊びだったね。と色々ありまして、こうして隠れていたんですけど……もう街を抜けたので」
「…………久しぶりにあったらクウガかわったな」
以前はハーレムの呪いに悩まされて苦悩してそれでも呪いを解くべくいたのに。
俺がちょっと蜃気楼の城に行ってる間にチャラオになっちゃって……。
「ハーレムの呪いとうまく付き合おうと思って奮闘していたんですけど、なんでこうなるんですかね……」
「俺に聞かれてもな……」
「話は変わってクロウベルさん!」
「やだ」
クウガの頼みは聞きたくないのだ。
英雄なんだから自分で出来るだろ、そう俺は器がちっちゃいのだ。
「まだ何もいってませんけど」
「何か変な頼み事だったらやだってやつだ。旅の資金も財宝があるだろ? じゃぁ当然変な事だろ」
「いえ……メルさんの事です」
「話を聞こうか?」
俺はクウガに向き直る。
周りには客はいなく俺とクウガだけ。
御者のおっさんに話は聞かれるがクウガも小さい声で喋るので大丈夫だろう。
「メルさんでしたらフェーン山脈に帰ると」
「あ、それは知ってる」
役に立たないクウガである。
「でしたら、魔の森に行くという話は?」
「魔の森か……それは知らないな、なんで?」
「クロウベルさんが行方不明になって1年後に帰ってきたのは昨日聞きましたけど、行方不明の時にメルさんが「このまま帰ってこなかったら魔の森にいくのじゃ。と」
何の用だろう。
魔の森。
迷いの森で特に何もない。




