第101話 三流の戦い方です。いやだってねぇ勝てばいいし
とまぁカッコつけたわけだが。
普通に考えて銀髪ヴァンパイアの血が全部出るのと俺が窒息するのを考えると俺の方が早い。
水の檻とでも名付けようかと思ってる魔法の外ではヴァンパイア眷属のクウガ、シア、エール、フーロンが攻撃をしてくるがそんな攻撃で破れはしない。
破れたら俺死ぬし。
さて…………マジックボックスからホースを取り出し口にくわえる。
目のまえで水の中で髪を逆立てた牙を俺に突き刺そうとしている銀髪ヴァンパイアの目が見開いた。
ホースの先は上空の方から外に出てる。
あー息が出来るって素晴らしい。
何か文句を言っているみたいだが直ぐに口を閉じた。
なるほど、食事は血でもやっぱ酸素がないとだめなんだな、すっごい苦しそう。
俺の視界も血のまざった魔力の水でにごっていく。
しばらく押さえつけていたら、大量の蝙蝠になったりしていたけど、その中の数匹を捕まえてぎゅっとすると元の人型に戻った。
「ほほがほほないはら」
俺はホースを加えながら『逃がさないから』と伝える。
おーおー必死の形相で……でも悪いのはあんただ。
そうこうしてるうちに周りで何か倒れる音が聞こえた、視界が悪いけど眷属となった4人みたい。
もうちょっとかな。
魔力水は直ぐに消える、消えるけど上にあるウォーターボールから延々と出しているんだ。
実はこの技は大草原で遭難した時に飲み水がない! って事で出した苦肉の魔法。
その場では役に立たなかったけど結果的に今につながるとは遭難して見るもんだな。
あっ銀髪ヴァンパイアが背中を見せて水中の壁を叩く、まぁ破れないわけで……天井を目指すも上から大量の水が流れてきて上がれないでいる。
知らないかもしれないが、《《滝壺》》とよばれる滝のすぐ下。そこに落ちた物は真横に行かない限り這い上がれない。
学校で習う事なんだけど学校は無いし、たとえ言っていたとしても知らない人が多いのよね。
すげえ苦しそうだなーって見ていると銀髪ヴァンパイアの体が溶けて消えた。
表現か少しおかしいかもしれないが、粉のようになって溶けて消え魔力の水にまざった……なんかきもい。
一秒でも早く俺は水浴びをしたいが、ここは我慢。
魔法解いた瞬間に復活したら困るし。
しばらくそうしてると俺の魔法の外から声が聞こえる。
「クロウさん! 駄目だ聞こえない……」
声からしてエールか。
聞こえてるよ? 返事しないだけで。
「鑑定! 水の檻の魔法ですね。クロウベルさんを中心に4本の水柱が建ち上から魔力の水を入れる事で生物を殺す魔法のようです。弱点は本人も水の中に入る事……なんですけどこのホースで息してますね」
これはフーロンか。
「だめ。このシア姉さんの斧でも壊れない」
両手斧使いのシア。
うん、壊さないでね。
「クロウベルさん……僕のために」
クウガの懐かしい声だ。
いや、別にクウガのせいではない、なんだったら諦めていたし。
よし全員襲ってくるわけじゃないな。水の檻の魔法を解く。
魔力の水が一気に床に流れ、しばらくしてから消えていった。
「よっ!」
「クロウベルさん!」
クウガが抱きついて来そうなので、ひょいっとよけた。
クウガはそのまま転ぶので俺は無視してエールの方へ行く。
「回復魔法打てる?」
「え。はっはい! そりゃもう、後遺症でしょうか魔力があふれまくって……」
「鑑定の結果、私達はヴァンパイアアーサーの眷属から解放され、一時的ですが魔力の底上げがされています。今後この力が残るかは不明です」
エールが。俺にハイ・ヒールをかけてくれる。
あちこち打撲や骨折していたのが治って来たのが実感できる。
自分でも回復魔法打てるけどさ、かけてもらったほうがいいじゃん……女の子に。
「ひどいです。クロウベルさん……かわすとか」
クウガがひどく落ち込んだ声で俺に文句を言うので俺もここは一つ仕返しで言う。
「酷いのはお前だろ……アリシア達から逃げて……」
「っ!?」
クウガは口をパクパクして次の言葉が出て来てない。
「えークウ君。アリシアさんってだーれー?」
「え、いや。ええっと……だ、だれだっけかなぁ……」
エールが凄い棒読みでクウガに詰めよってる。
クウガはとぼけているが、アリシア達いるのにこの女性にも粉をかけていたか。
なるほど、クウガらしいといえばクウガだな。
逃げて来た事全然伝えてないのか。
ってか、よくここまでクウガこれたな、1年でここまで来れるのは普通に凄い。
どんなルートで来たか今度教えて貰うか。
俺の目の間に両手斧使いの女性が立ち尽くす。
シアだ。
「パーティーでリーダーをしている……いやしていた、シア。こっちは操られていた時の事は薄っすら覚えてるよ」
「ん。愛の伝道師クロウベル。もしくは負け人生まっしぐらなクロウベル」
「…………変わった二つ名だね」
シアから握手を求められたので握手を返す。
何時までの地下ダンジョンの礼拝堂にいてもしょうがない。
4人に声をかけて臨時の5人パーティー。
礼拝堂の出入り口から上に上がる長い螺旋階段があったのでそれを上るとヴァンパイアの城の中。
俺が走った部屋もありいくつかの部屋を通るんだけど……。
「クロウさん……これどうします?」
エールが俺に意見を聞いてくるんだけどリーダーは俺じゃない。
「リーダーはシア。もしくはクウガか? その二人の意見は?」
「いや、どうしよう」
「どうしましょうか」
「鑑定します!」
と1人超元気な鑑定娘フーロン。
なんでこんなに元気というと、目の前にお宝の山があるからだ。
多分いままでヴァンパイアに負けた人物の宝だろう……溶けた金や宝石とか無造作に山になっている。
「これも本物ですね。300年前に出来た首飾りです装備できるのは全員。売ると金貨2万枚とおもいますが買い取る店があるかどうか。こっちの金塊は溶けてますが鑑定の結果これも本物です……溶けたのはたぶんヴァンパイアの胃液でしょうか、これも鑑定しま――いたっ! なんでチョップするんですか!」
「いや、少しうるさくて……」
「酷い……皆のために鑑定を」
鑑定しまくれて凄い嬉しそうに見えるだけなんだけど。
「どうしよう全部は持てない……」
「もてる分だけでいいでしょ。ここまで戻ってくるのも無理に近いしマジックボックスもってるんでしょ?」
「少量のですけど」
「4人で別けれる分持ち運んで。俺は宝石少しと……あっちの部屋にある奴を貰う」
4人が金塊あるのに何いってるんだ? って顔してるが目先の宝よりも隣の書庫のほうが俺は気になる。
「うわぁ……隣は書庫。鑑定しま――いたっ」
「ロマンがないよフーロンちゃん。鑑定はいらない……俺の直観で選ぶから。あと長居はしない方がいいと思う……仕組みはわからないけど迷宮型のボスって復活する場合あるんだよね」
「そうですね……」
じゃっ各自5分後に撤収って事で。と説明した後俺は書庫にいき適当に本をマジックボックスに入れる。
俺の小さいマジックボックスなら50冊ぐらいは入るだろう……書庫には何千冊も本見えるけど。
一冊を手に取ると中身が読めない。
まぁ師匠に読んでもらうか、たぶん師匠なら読めるだろうって事であれもこれもいれて宝物室に戻って来た。
4人の顔は疲れていそうだけど元気だ。
「じゃっ帰る」
「ですね」
帰りは急いで帰った。
だって本当に復活したら困るし地下3層あたりに来た時に、埋もれた古城のほうから雄たけびが聞こえたような聞こえなかったようなって事で。
迷宮ダンジョンから外にでてやっと一安心。
俺の馬に俺とシア。
フーロンが乗って来た馬にフーロンとエールを乗せて……クウガは走る。
「いや。イジメじゃなんだし俺の前に乗るか?」
「何を僕なんて役に立たないですし走るしか能がないですし……だ、大丈夫です。今なら眷属となっていた力がありますので」
「そう? じゃ……そのがんばって」
馬の速度に走ってついてくるクウガはちょっときもかった。




