第55話 6月23日。水曜日。大安。
「わ、悪いね・・手伝ってもらって」
「気にしなくていいよ。
円が休んでるから1人で大変だろ?」
放課後。
僕は小林と一緒に教室の掃除をしていた。
「スマホが壊れた原因は
屋上で妻鳥と揉み合ってる時に
落としたからだろ?」
一通り掃除が終わったタイミングで
僕は小林の背中に向かって呼びかけた。
「お前は妻鳥を盗撮してた。
それがバレたから殺したのか?」
小林が箒を掃く手を止めて
僕の方を振り向いた。
その目が大きく見開かれていた。
「ち、違う!
ぼ、僕は殺してない!」
小林が叫んだ。
僕は小林に背を向けて
ゆっくりと窓際へ近づいた。
そして窓を開けた。
生温い風が教室に入り込んできた。
「わかってるよ。
妻鳥が転落した時。
小林はスマホを探してたんだよね」
僕は振り向いて小林に向き合った。
「ど、どうして・・。
そ、それを・・知ってるの?」
「前に僕に聞いてきただろ?
妻鳥は自殺したと思うかって?
それってさ。
小林は妻鳥が自殺したとは
思ってないってことだよね?
その理由を聞かせて欲しいんだ」
僕は小林の質問を受け流し、
逆に問い返した。
小林の表情に困惑の色が広がっていた。
僕は小林が話し出すのを待った。
「じ、実は・・あの時」
小林が躊躇いがちにぽつりと呟いた。
「ぼ、僕がスマホを探していたら、
と、突然大きな音がして。
そ、そうしたら。
つ、妻鳥さんが花壇に倒れてて・・。
そ、その時。
お、屋上の縁に人影が見えたんだ・・」
「えっ!」
予想外の言葉に僕は息を呑んだ。
僕はごくりと唾を飲み込んで
続く言葉を待った。
「は、はっきりとは見えなかったけど。
か、確実に誰かがいたんだ。
だ、誰かわからなかったけど・・。
で、でも今ならわかる。
ま、円響だと思う」
「円が?
どうしてそう思うんだ?
はっきりとは見えなかったんだろ?」
「う、うん。
み、見えなかったけど。
で、でも。
お、覚えてるかな?
と、冬至くんも聞いてたよね。
か、彼女は僕が妻鳥さんと、
お、屋上で会ってたことを知ってた。
き、きっとあの時。
か、彼女も屋上にいたんだよ!」
小林はそう言うと大きく息を吐き出した。
一方で。
僕は肩を落とした。
「小林の話はわかったよ。
最後に1つだけ。
正直に答えて欲しい。
『ミモザ』というハンドルネームで
盗撮した妻鳥の画像を
ネットに投稿してたよね?」
「え、えっ・・?」
小林の表情に
ふたたび困惑の色が広がった。
「た、確かに僕は妻鳥さんを・・。
で、でも・・。
ね、ネットに投稿なんてしてないし、
そ、そんなハンドルネームは、
し、知らない。
ほ、本当だよ!」
そして小林は肩で大きく息をした。




