第21話 2人
「ねぇ。
女子の中に問題がなかったのなら、
原因は男子にあったんじゃないの?
思春期の雄は発情期の犬と同じだから」
幻夜の矛先はついに
男子全体へと向けられた。
「ちょ、ちょっと待てよ!
犬と一緒にするなんて酷いだろ!」
まるで自分が責められているような
気がして僕はすぐさま反論した。
「そんなにムキにならなくても
いいでしょ?
私は単に一般論を話してるの。
それとも。
何か思い当たる節でもあるのかしら?
そういえばこの前。
慌ててパソコンの画面を
隠してたわね?」
「なっ・・!」
幻夜の指摘に僕は二の句が継げなかった。
「冗談よ。
でもいるじゃない?
男子の中にもワルそう子が」
幻夜が誰のことを言っているのかは
すぐにわかった。
九十
この学園の問題児。
素行不良で教師達も煙たがっていた。
母子家庭で
母親は仕事をしていなかったが、
不思議と家計には余裕があるようだった。
その理由として。
九は小石川記念病院の院長の隠し子である
というまことしやかな噂が囁かれていた。
五分刈りの坊主頭に細く剃った眉。
蛇のような一重の目は睨んだ者を
一瞬で黙らせるほどの迫力があった。
背も高く、
肥満気味の良司とは違って、
引き締まった筋肉質な体をしていた。
それは幼少期から続けている
空手と柔道の賜物でもあった。
強面で不愛想なために、
女子は恐れて
誰も近づくことすらしなかった。
「・・それと、もう1人」
そう言って幻夜は人差し指を立てた。
「もう1人?」
「二ノ宮勇」
「えっ?」
幻夜の口から出た名前に
僕は目を丸くした。
二ノ宮勇。
この学園の異端児。
ツーブロックに刈られた
栗色のミディアムヘアには
緩いパーマがかけられていた。
二重瞼のくるりとした目に
高い反り鼻と薄い唇。
その中性的な顔立ちは
男から見ても
惚れ惚れするような優男だった。
スラリとした細身の体は
明らかに足が長かった。
おまけに。
あの桐壺亭グループの本家である
三ノ宮家の分家にあたる二ノ宮家の
三男であり、
その血統も申し分なかった。
成績はクラスでトップだったが、
安心院のようながり勉タイプでもなく、
成績が良いことを
鼻にかけることもなかった。
かと言って真面目というわけでもなく、
授業中でも平気で居眠りをしたり、
漫画を読んでいることもあった。
その癖先生に問題を振られると
的確に答えを述べていた。
いわゆる天才肌。
「あいつは
転生して2度目の人生を送ってるんだ。
おまけにリセマラして
親ガチャにも成功してる。
俺達とは棲む世界が違うんだよ」
それが圭太の二ノ宮評だったが、
それを完全に否定するだけの
科学的知識が僕にはなかった。
普段の二ノ宮は物静かで大人しく、
自分からは
他人に話しかけることはなかった。
その点は九と同じだったが、
女子からの人気という点では
天と地ほどの開きがあった。
一見何を考えているか
わからないところがあったが、
そんなミステリアスなところも
二ノ宮の魅力の1つだった。




