第20話 本質
「やっぱり。
妻鳥小絵の自殺の原因は
イジメだったのね」
ふいに幻夜が口を開いた。
「首謀者は円響。
彼女は自分に忠実な下僕を作るために
『Dゲーム』を始めた。
そして円響の狙い通り
1回目と2回目の奴隷に選ばれた
雲泥万里と久瑠凛は
彼女の軍門に降った。
でも。
妻鳥小絵は抵抗した。
だから。
妻鳥小絵が白旗を上げるまで
彼女を奴隷にし続けた。
8人しかいない女子の中で
3票を動かせる円響にしてみたら、
誰を奴隷するかなんて造作もないこと。
きっと。
浮動票を持っている
薬袋愛姫と三木美紀を抱き込んだのね」
幻夜の話に耳を傾けながら
僕は記憶の糸を手繰った。
入学した当初、
円響は浮いた存在だった。
裕福な家庭で育った円は
父が学園の理事長ということもあってか
その態度はどこか高慢で
他人を見下していた。
そのため皆が彼女から距離を置いていた。
そして。
彼女の我儘によって始まった
最初の『Dゲーム』の結果、
奴隷に選ばれたのは雲泥万里だった。
あの時なぜ雲泥が選ばれたのか、
今となってはわからない。
だが。
それ以来、
雲泥は円と連むようになった。
さらに。
次の『Dゲーム』で選ばれた久瑠凛も
同じく円の忠実な下僕となった。
「『Dゲーム』は単なる雑用係を
決めるだけのゲームじゃない。
その本質は
無意識のうちに差別を助長させ
スクールカーストを作り出すのが目的」
「お、大袈裟だな・・」
僕は反論したものの、
幻夜の言葉を
完全に否定することはできなかった。
実際に。
男子は当番制のように
奴隷を皆で回していたが、
その中には
九十
と
二ノ宮勇
は含まれていなかった。
無意識のうちに僕達は
彼ら2人を除いた6人で
奴隷を受け持つことに納得していた。
それは差別ではなく区別。
僕はそう理解していた。
この世に平等な世界など存在しない。
人は生まれながらにして不平等なのだ。
「兎に角。
4回も連続で
妻鳥小絵を奴隷に選んだことは
歴としたイジメよ。
彼女はそれを苦に自殺した・・」
幻夜が僕の目を正面から見つめていた。
イジメ・・。
それだけはあり得ない。
僕は小さく首を振った。
たしかに妻鳥はずっと奴隷だった。
でも。
妻鳥は皆から慕われていた。
普段から誰とでも明るく楽しそうに
話をしていたし、
特にマリアとは仲が良かった。
それに。
どちらかと言えば、
マリアよりも妻鳥の方が
皆から慕われていた。
入学した当初。
マリアは美しすぎる故、
円とは別の意味で近づき難い存在だった。
そんなマリアに
積極的に声をかけていたのが妻鳥だった。
妻鳥のおかげで
マリアはクラスに馴染むことができた。
僕はそう考えている。
そしてもう1つ。
『Dゲーム』が始まってから
女子の中に毎回1枚だけ
白紙の無効票があった。
一度、
僕はそのことについて
妻鳥に訊ねたことがあった。
彼女は笑って否定していたが、
あれは妻鳥のモノに違いない。
その証拠に。
今日の投票ではすべての投票用紙に
名前が書かれていた。
彼女はきっと・・。
「・・どうしたの?」
その声に僕は我に返った。
「い、いや・・何でもない。
それより。
彼女はイジメられるような
子じゃないよ。
それだけは断言できる」
僕はゆっくりとコップに口をつけた。
幻夜は僕の方を見て首を傾げていた。




