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異端者達のメメント・モリ ~冬の始まり  作者: Mr.M
二章

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13/114

第13話 Dゲーム①

朝のホームルームが終わり、

担任の田村が教室を出ていくと、

クラス委員長の

安心院正義あじむ まさよし

が代わって教壇に立った。


祖父は裁判官、

両親は弁護士という法曹一家で育ち、

本人も「将来は弁護士になる」

と豪語していた。

所謂がり勉で休み時間も

机に向かって参考書を広げていた。

そんな努力の甲斐もあってか

成績はクラスで2番目。

生活態度も真面目で、

教師からの信頼も厚かった。

性格はやや傲慢。

そのせいか、

男子の中でも若干浮いた存在で、

女子からの人気もイマイチだった。

天然パーマでやや髪が薄かったために、

円のグループからは

『ピカりん』

と呼ばれて揶揄われていたが、

本人は

「見かけで人を判断する

 愚か者の言葉など痛くも痒くもない」

とどこ吹く風だった。

薄い眉毛の下の小さな目は、

丸眼鏡の奥でいっそう小さく見えた。

やや上向きの鼻にへの字口。

身長はクラスの男子の中で一番低かった。

安心院よりも

1センチほど背が高い圭太は、

しばしばそのことで、

優越感に浸っていた。


「早速だが。

 先週決まった通り、

 現在空席になっている

 女子の奴隷を決めるため、

 これから『Dゲーム』を行う」

安心院は右手の人差し指で、

丸眼鏡のブリッジをクイッと持ち上げて、

そう宣言した。

「小林くん、

 投票用紙を配ってくれ給え」

そして安心院は廊下側から2番目、

一番前の席の小林に、

8枚の投票用紙を渡した。


小林大樹。

今月の奴隷。

静かで大人しく影のような存在。

良く言えば無害。

男にしてはやや長めの

ストレートの黒髪は、

黒縁眼鏡にかかっていて、

視界は悪そうだった。

決して不真面目ではなかったが、

なぜか成績は悪く、

クラスでも最下位だった。


「転校生の望月さんに説明するとだね。

 『Dゲーム』というのは・・」

安心院が幻夜のために

『Dゲーム』の説明を始めた。

幻夜は時折頷きながら、

この前僕が彼女に話したのと

まったく同じ内容の説明を、

素直に聞いていた。

そんな幻夜を横目で見ながら、

僕は小さく溜息を吐いた。

『能ある鷹は爪を隠す』

いや・・違う。

『綺麗な薔薇には棘がある』

それも違う。

『羊の皮を被った狼』

これが一番しっくりくる。


「望月さんはまだ日が浅く、

 誰を選んでいいのか

 迷うかもしれないが、

 これはゲームだから

 深く考える必要はない。

 選ばれ易いという

 不利な点はあるかもしれないが、

 来月になれば、

 また新たな『Dゲーム』が開催される。

 つまり。

 今日選ばれたとしても、

 奴隷の期間はあと半月だけ。

 それに。

 クラスの雑用係を経験することは、

 この学校を知る

 良い機会になるだろう」

「・・1ついいですか?」

その時。

幻夜が恐る恐る手を挙げた。

「あの・・私。

 まだ皆さんの顔と名前を

 覚えていなくて・・。

 できればここに

 フルネームを書いてくれませんか?」

幻夜は鞄から黒革の手帳を取り出すと、

前の席の久瑠の机にその手帳を広げた。

久瑠がシャーペンで書き込むと、

幻夜は「ありがとう」

と久瑠の目を真っ直ぐに見て頭を下げた。

続いて幻夜は、

その前の雲泥の席に移動した。

同じように幻夜は、

他の5人の席を回ってから

自分の席に戻った。


「さあ。

 授業まで時間がない。

 各自、

 奴隷に指名したい者の名前を

 投票用紙に書き給え。

 書き終わったら、

 4つ折りにして机の上に置き給え」

それから安心院は

室内をさっと見回してから、

僕と目が合うと頷いた。

「冬至くん。

 申し訳ないが

 投票用紙を回収してくれないか?」

「う、うん。

 いいけど」

そう言って僕は立ち上がった。

その時。

隣の席の幻夜の手元が一瞬見えた。

紙に書かれた

「安武マリア」

という文字を見て、

僕はハッと息を呑んだ。

幻夜が投票用紙を折って机に置くと、

僕は無言でそれを手に取った。


すべての投票用紙を回収した後、

僕は教壇の安心院にそれを渡した。

「冬至くん、

 もう少しだけ手伝ってもらえるかね?

 私が読み上げるから、

 ホワイトボードに

 板書をお願いしたい」

そして安心院は

1枚目の投票用紙を広げた。

次の瞬間。

安心院の体が固まった。

それから。

安心院は僕の方に戸惑いの視線を向けた。

「うん?」

「あ、ああ・・す、すまない」

安心院は一度咳払いをしてから、

教壇に手をついた。

それから右手の人差し指で、

丸眼鏡のブリッジをクイッと持ち上げた。

「あ、安武マリア・・」

安心院の口から出たその名前に、

教室が騒ついた。

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