第11話 『Dゲーム』
『Dゲーム』が始まったのは1年生の3学期。
ゲームを提案したのは円響。
彼女は学園の理事長、
円卓の娘であり、
スクールカーストの頂点に君臨していた。
実際に彼女のことを
「女王様」と呼ぶ生徒も少なくない。
その外見も女王たる者に相応しく
派手で華麗。
肩まで伸びた杜若色の髪は
毛先が緩く巻かれていて、
細い眉にやや吊り上がった二重の目は
美しさと力強さを兼ね備えていた。
細く高い鼻に
至極色の紅が塗られた薄い唇。
クラスの女子の中では2番目に背が高く、
そのスタイルの良さとも相まって
将来はモデルかと噂されていた。
「モデルには大きい胸は邪魔だからな」
と圭太は陰口を叩いていたが、
それは日頃からことあるごとに「チビ」
と揶揄われていた腹いせからだった。
月初めに行われる『Dゲーム』は
男子と女子から
それぞれ1人ずつ奴隷を選ぶゲームだ。
選出方法は無記名による投票。
男子は男子の中で投票し、
女子は女子の中で投票する。
そして
選ばれた2人の奴隷が文字通り1か月の間、
奴隷となる。
「ふうん。
それで?
奴隷になった人間はどうなるの?」
「えっ・・と。
クラスの雑用係・・かな?
給食の配膳とか、
放課後の教室掃除とか。
あとは・・
花壇の水やり?
まぁ文字通り雑用係だよ」
「はぁ?
それだけ?」
ポカンと口を開けた幻夜が
目を丸くしていた。
「そ、そうだけど・・」
「靴を隠されたり、
教科書に落書きされたり、
皆から無視されたり。
イジメの標的になるんじゃないの?」
「そ、そんなことするわけないだろ。
でも・・」
僕はそこで口を噤んだ。
「でも?」
幻夜が真っすぐに僕の目を見ていた。
その瞳が赤く光ったような気がした。
心臓がドクンと跳ねた。
僕は動揺を悟られないように
コップに口をつけた。
「・・先週。
奴隷になった女の子が
亡くなったんだ・・」
僕の口から無意識のうちに言葉が出た。
「彼女の名前は妻鳥小絵。
君の席は元々は彼女の席だった。
実際に昨日までは
机の上に花瓶が置かれてたんだ。
警察は自殺として結論付けたけど・・」
そこまで話したところで
僕は慌てて口に手を当てた。
少女が腕を抱えて小さく震えていた。
「こ、怖がらせるつもりはなかったんだ。
と、兎に角。
今、奴隷は男子の
小林大樹
だけなんだ。
今月はまだ半分以上残ってるから
来週には女子から新しい奴隷を出す、
昨日そう決まったんだ。
そうなると。
転校してきたばかりの君は不利だろ?」
僕は気まずさを誤魔化すように
アイスコーヒーを流し込んだ。




