第七話 リリアの回想2 〜冒険者ギルド〜(リリア視点)
冒険者ギルドについた私は、係の人に受付に案内された。
「アマテル王国王立冒険者ギルドへようこそ〜。新規のご登録の方ですか?」
エプロンドレス姿の受付嬢が歌うように言う。
「そうだ」
私が短く答えると、受付嬢が歌うように案内を続ける。
「まず年齢をお聞きしますが、12歳以上の方ですか?」
「オレは13だ」
短く私が答えると、受付嬢は微笑みながらうなずく。
「では冒険者登録カード作成しますので、まずここに名前を書いてもらえます?」
「名前か? オレはリオン」
「えーっと、そうではなくてですね……自分の名前を書いて欲しいのですが?」
戸惑った様子の受付嬢。
「じゃあねぇちゃん、代わりに書いてくれ」
私が言うと、受付嬢はますます困り果てた様子で言った。
「ご自分で書いてもらえないと、登録できないのですが……」
困り果てたのは私のほうだった。師匠からは字の読み書きは全く教わっていなかった。
「……オレ、字を見たこと無いから書けないし読めない」
「えっ……」
困り果てる受付嬢。
「そうだ!ねぇちゃんオレに字を教えてくれ!名前の書き方だけでもいい。オレ、冒険者になるため旅してきたんだ!」
私の熱意に負けたのか、受付嬢は名前の読み書きを教えてくれた。
「リオン!オレの名前書けたぞ!」
受付嬢もニコニコした顔で喜んでくれる。
「性別は……男性で間違いないですよね?」
「そうだ、オレは――男だ」
私の姿を見て、受付嬢すら全く疑わなかったが、その時の私にとっては好都合だった。
「では冒険者カードをお渡ししますので、しばらくお待ちください」
受付嬢に言われるがまま、私はしばらく待つ。
しばらくして。
「お待たせしましたー」
歌うように言う受付嬢から、銀色の手のひらに収まる程度の大きさのカードを渡される。
カードにはこう刻まれていた。
「リオン」ーー私の、偽りの名前が。
――これで、強くなれる。
その時の私は、それしか思わなかった。
「ただ、強くなりたい」
――そうギルドの受付嬢に言った私が紹介されたパーティが、「竜炎の血盟」だった。
”竜を狩りし者”竜騎士・アーサリオ。
”闇を狩る者”忍者・ジン。
”破滅の剣聖”ソードマスター・レイザーク。
”邪智の魔導士”賢者ヴェイン。
誰もが二つ名を持つほど、名が知れていて強いという。
そのパーティに入ることに、私は決めた。
”戦神の傭兵”バトルマスター・リオンとしてーー