第四話 ブラックパーティ(クラウス視点)
ダンジョンにたどり着いた『竜炎の血盟』パーティと俺。
パーティメンバーは無言でダンジョンを降りていき、戦闘をこなす。俺も無言でそれに従う。
めったに回復も来ない中、俺は盾役を無言でこなす。
――はっきり言って、絶望感しかない。
(前のパーティ――『星の守護者』にいたころのほうが、楽しかったな――)
みんな幼馴染で、毎日笑いあいながら、夢を追うように「冒険者」を続けていた日々。
――あの頃はよかった、と一週間ちょっとしか経ってないのにもかかわらず、そう思う。
(転職すればよかったんだよな。俺がパラディンの職なんかにしがみついてたから――)
「おい!何ボケっとしてる!戦闘に集中しろ、ダメろくに出せねークズが!!」
アーサリオからの罵声と共に、槍でぶっ叩かれる。
「――わかっています」
「返事はいい!貴様は黙って従ってろ!」
再び槍でぶっ叩かれる。
俺は目の前のブラックドラゴンを挑発し、タゲをとってこちらへひきつけ、全体炎攻撃を全て盾で受け止める。
灼熱の炎の熱さが、盾を通して伝わり、じわじわと俺の体力を削っていく。
――一応スキルとして「HP自然回復」はつけているが、限界に近い。
(はっきり言ってきついが、切り抜けるしか――)
渾身の力で盾で攻撃を防ぐ。体力はギリギリだが、回復魔法は来ない。
(――賢者ヴェインだったか。彼が回復役のはずだが――)
そう思った瞬間、やっと[ヒール]がくる。最初期の回復魔法。
(最低限の回復しかしないのか?こっちは、回復薬もないのに――)
☆ ☆ ☆
なんとかブラックドラゴン戦を切り抜け、その後も死線を切り抜けながらダンジョンの奥に進む。
――そのうち、妙なことに気付いた。
賢者ヴェイン――彼は他のパーティメンバーから、露骨な差別を受けていた。
「ひ弱なお荷物」「回復くらいしかしない雑魚」「役立たず」――そう言われながら反論もせず耐えている。
報酬や食べ物(?)にも露骨に差をつけられていた。
――もしかして、彼なら「話せる」のではないか、「理解してくれる」のではないか?
望みをかけて、俺はヴェインに話しかけてみた。
「ヴェインさん、もしかしてあなたはこのパーティで孤立しているのではないでしょうか?――俺でよかったら、相談に乗りますよ。――たとえば報酬がもらえないせいで、MP回復ポーションが買えず、ろくに回復することもできないとか――」
しかし、彼から返ってきたのは意外な言葉だった。
「貴様が入ったせいで、俺はあの脳筋どもを苦しめることができなくなったじゃないか」
――一瞬、俺は意味が分からなかった。しかし賢者ヴェインは言葉を続ける。
「殴ることしかしか知らない脳筋ども――奴らをギリギリまで回復させないことで苦しめることが俺のひそかな楽しみだ。――もちろん、その脳筋どもの中には貴様も入っているがな」
――くっくっく、とヴェインは不気味に嗤う。
――こいつ、サイコパスじゃねーか!!
(機会を見つけたら、俺はこのパーティを抜けよう)
俺はそう考え始めた。