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裏切りの婚約  作者: もも
7/8

7 魔獣

 「黒曜石は魔石だったのですね。思いがけず私が手に入れられて助かって有り難いですわ。他の石に巡り合った方にも幸運がありますよう祈りたいです」


「昔お前と同じような境遇の令嬢を救っていたとは思わなかったが、凄いな」


「そちらが元の持ち主ですものね。幸せになられたと信じたいです。私も膨大な資料を調べてくださった魔術師様にお礼が言いたいです、駄目でしょうか」


「二人で会わせる訳にはいかないが、私も一緒なら良いよ。まあ彼が良いといえばだが」


「ではご都合をお聞きしてくださいね。お礼は何がよろしいでしょうか」


「食事がいいだろう。ステーキの美味しい店に行こうか」


「まあ、楽しみです。是非お誘いしてくださいね。ハロルド様もお誘いしたいです」


「勿論だ。三人で行ったと知れば拗ねて大変だろうから」


「何かおっしゃいましたか?」


「いや何でもないよ。食事会が楽しみだ」




四人の食事会は思いの外楽しかった。ダニエルとミレーヌの兄妹の掛け合いがほのぼのとして始終笑いが絶えなかった。


「カイン様この度はお力添えをいただきましてありがとうございました」


「いえ、貴女のような素晴らしい方が不幸にならなくて何よりでした」


「自分の世間知らずが恥ずかしいです。甘い言葉にまんまと騙されるところだったのですから」


「貴族の令嬢は異性関係に初心ですから、守ってくださったお兄様と協力された婚約者の方の誠意に感謝されることです」


「はい、夢なのに直ぐに信じて貰えてとても嬉しかったですわ」


隣の席のハロルドがテーブルの下で手を握って来た。まるで「当たり前じゃないか」という言葉のようでミレーヌは心が温かくなっていた。







★★★




国境の辺りに魔獣が出はじめたという知らせが入ったのはそれから半年後のことだった。何十年と魔物の話が無かったので消滅したのだと国全体でのんびり構えていたのだった。

国の騎士団と魔術師が討伐に向かうことになった。


伝わってきた話によれば弱い物から中くらいの規模の物らしく、一月もかからずに撲滅して帰って来た。一人の犠牲者も出さなかった。魔獣の死体からは魔石が取れ魔術師団が使えることになったそうだ。

これで又研究に打ち込めると喜んだのは仕方がないことだった。



働きが認められた魔術師団は地位を確保し研究環境の改善を望み魔術研究所を願い出た。

騎士団は剣の向上に磨きをかけることを胸に誓い更なる待遇向上を願った。戦いは命がけなので充分な補償があれば士気も上がろうというものだ。


国王は働きに応じた待遇の改善を約束した。



魔獣は国境の山で発生していた。近隣国に迷惑をかけないよう結界を張ることになり、国中から大きな魔石が集められた。それを依代に魔術を張っていくのだ。魔石は誰にも分からないよう地中深く埋められた。

体力が削られる大変な作業だが戦争になるより良い。



時々出てくる魔獣は騎士達が殺してくれた。

魔術師達の調べによると何十年にもよる人の悪意が溜まって瘴気となり山の獣を魔獣化したらしい。


国は麓の村に教会を建てて山の神様の安寧を祈ることにした。





ある日の夜ダニエルはカインと食事をしながら久しぶりに話をしていた。勿論個室で防音魔法が張ってあった。

「この度のご活躍おめでとうございます。待遇が改善されて何よりです」


「ありがとう、おかげさまでいい環境で仕事が出来るようになった。掌返しが凄くて笑ってしまうよ」


「そういう奴はそういう付き合いをすればいいだけです。私としてはカイン様の真価が認められてこれ程嬉しいことはありませんから」


「あれから妹殿は予知夢を見るのだろうか」


「いえ、幸せそうにしているので見ていないと思います。後半年で結婚式なので是非出席してやってください」


「ありがとう、そうさせて貰おう」


「もう魔獣は出ないのでしょうか」


「国全体とあの山全体に結界が張ってあるから数十年は大丈夫だろう。あまりに平和に慣れていたから警告だったと思うようにしている。騎士団の方も鍛錬に拍車がかかっているようだ」


「人に被害が出なくて良かったです」


「全くだ。一層の研鑽を積まなくてはいざという時に役に立たないと痛感した。この度は中型が主だったが大型がもし現れていたらもっと命がけの戦いになっていただろうから」



「カイン様は結婚されているのですか?」


「昔していた。病気で亡くなってしまったが」


「不躾なことを聞いてしまいました、お許しください」


「大丈夫だ、心のなかで生きているから」


「私も唯一の人を見つけたいです。跡取りなので夢になるかもしれませんが」


「ダニエル殿は誠実だからきっといい人が見つかるよ。そうだ、お守りをあげよう。魔石で作ったから効果は保証する」


カインが取り出したのは小さな青いピアスだった。

「ありがとうございます。大事にします」


「恋愛と幸福の加護が付いている。努力も大切だから忘れないようにして欲しい」


「約束します」


ダニエルはこの優しい友人が幸せであるようにワインで乾杯をすることにした。





読んでくださりありがとうございます。誤字報告ありがとうございます。

面白かったと思っていただけたら下にあります★★★★★を押してくださると嬉しいです。

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