第3話「いつも通りから」
────黒い鉄でできた天井、格子状の窓。いつもの寝室だ。
「幸奈が起きたよ」
いつもはお母さんが寝ているところに璃がいた。その下にお母さんの黒ずんだ死骸がある。
────うっ…
唐突に吐き気が込み上げてくる。
あいつが殺したんだ。あの男がお母さんを殺した。許せない。
「どうしたの?」
璃はお母さん死骸の上でいつも通り美しく、無機質な顔を覗かせた。
「幸奈、体調が悪いみたい。」
「もうすぐ私のお母さんがくるからそれまで安静にしていてね」
海棠璃の母-海棠花がくるらしい。
「ここから出ていって」
お母さんの上に乗るな。気持ち悪い。
これが「気持ち悪い」か。
「なんで?」
いつも通り美しく、無機質な声が響く。
「チッ…」
苛立ちを覚え、舌が勝手に動く。
「風邪がうつっちゃうでしょ」
今の自分にできる精一杯のいつも通りの声を出した。
「そっか」
璃はそう言うと少し頭を痛そうにしながら外にでた。
────幸奈が出たと同時に口に白い布を口に付けた花さんが入ってきた。
「花さん、聞いてたでしょ?ここから出ていって欲しいんだけど」
苛立ちを隠すのに頭がおかしくなりそう。
「大丈夫だよ。私はマスクをつけてるから。この部屋の掃除をしに来たの。そのゴミは早く片付けないと腐ってしまうわ」
一瞬なんのことか理解出来なかった。
「ゴミ?そんなモノどこにもありませんよ」
言ってから気づく。この女はお母さんの死骸をゴミと言ったのだ。
また、目から水がでてきた。
花さんが何か言っているようだったけど私の耳は意味の理解を拒んだ。
我慢しようとしても限度があった。しかし、今回は相手に飛びつくことはなかった。もうなんでもいい。こんな気持ち悪い世界が嫌になった。布団の中に篭もり、大声を出し続けた。目の中の水は枯れ、声が出なくなってようやく布団から顔を出した。
丁度花さんのゴミ捨てが終わったところだった。
「狂犬病にでもかかってしまったのかしら」
そう言って頭を痛そうにしながら私の家から出ていった。
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