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第0章 第0話「存在意義」


────圭吾!赤ちゃんできたよ!


私は圭吾との子共を身(ごも)った。


私たちは知識が無いながらも愛し合い、子孫を残した。


しかし、


────グサッ


「てめぇのせぇで幸子(さちこ)は死んだ!!!てめぇが感情なんか振りまくからだ!!全部てめぇのせいだ!!」


私は娘が自殺した父親に腹を刺された。


私は一命を取り留めたがお腹の中にいた赤ちゃんは死んだ。


そして、この時から私に対するみんなの様子がおかしくなった。


なにか、困惑したような。合理性に欠けるような。


恐怖するひともいた。


しかし、どうでもよかった。人類に感情を与え続けることしか考えていなかったからだ。


圭吾と、また「増える」ことをした。今度は産まれてくれた。


産まれてきた子を「幸奈」と名付けた。


そうしていくうちに、東北の全ての人に感情を与えていた。


いつからだろう。覚えていない、体が動かなくなった。


しかし、意識はずっとあった。


毎日が暗かった。たまにくる「花」という人の声と赤ちゃんの声を聴いて自我を(たも)っていた。


しかし、いつまでも自我を保てるわけではなかった。ある日を境に「花」という人物の声は聴こえなくなったからだ。


私はいつのまにか、「ある人」に感情を与え続ける機械と化していた。誰かは分からない。しかし、私の本能が言っている。


「全人類に感情を与えよ」


私はそれに従い、「ある人」に感情を与え続けた。


私には分からなかったが、それはとても微量だったらしい。しかし、「ある人」は少しづつ感情を取り戻していった。


「ある人」が感情を持ち始めた頃、私に話しかけてきた。


『おはよう』


私は確実にそう聞こえた。それから、自我が戻り始めた。


私は「ある人」を好きになった。その人の声は圭吾に似て、優しく落ち着いた声だった。


しかし、その声は最初で最後の声となる。


今度は男の人の声が聴こえる。


────ぷつっ。


ここで「私の感情を与え続ける行為(人生)」は終わった。


何故かは分からない。しかし、終わったのだ。


私の人生に意味はあったのだろうか。


感情がない人の人生に意味はあるのだろうか。


「感情を持つこと」に意味はあるのだろうか。


「増える」ことに意味はあるのだろうか。


もう、意識がなくなり死ぬだろう。


考えることが出来なくなる。怖い。


もし、私の人生を見た人がいるなら教えてほしい。


この世界に、感情に、人生に意味はあるの?



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