第九十九話 殿下とわたしの今世でのファーストキス
殿下が、前世のことを思い出してくれている。
なんと素敵なことだろう。
わたしとの結婚の約束も思い出してくれた。
うれしいことだ。
喜びをかみしめていると、殿下は、
「わたしはリンデフィーヌさんに謝らなければなりません」
と言って頭を下げてきた。
「殿下、頭をおあげください。わたしは殿下に謝られるようなことはされていません」
「いや、謝らなければならないのです。わたしは前世と同じく、あなたと幼馴染として生まれ、ずっと一緒に生きていきたかったです。しかし、わたしのあなたへの想いが足りなかったばかりに、生まれたところが離れ離れになってしまいました。しかも、あなたは、婚約を破棄され、公爵家も追放されてしまいました、わたしの想いがもう少し強くなっていれば、あなたにこういう苦労をさせることもなかっただろうと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「そんなことはないです。わたしの殿下への想いも足りなかったのだと思います。わたしの方こそ謝らなければなりません」
わたしはそう言って、殿下に頭を下げた。
そして、
「でもこうして殿下と出会うことができました。これから二人で一緒に幸せになっていければいいと思います」
と言った。
わたしは言った後で、少し言い過ぎたかも、と思った。
「二人で幸せになる」
いくら前世で約束したとはいっても、わたしたちは今日出会ったばかり。
付き合ってもいないのに、そういうことを言ってよかったのだろうか?
嫌われないまでも、ちょっと嫌な思いはするかもしれない……。
そう思っていると、殿下は、
「リンデフィーヌさん、そう言っていただきまして、ありがとうございます」
と言ってくれた。
そして、
「わたしはこれから、全力であなたを幸せにしていきます。あなたは、前世でも今世でも理想の女性です。今まで会うことができなかった分、一生懸命あなたに尽くし、愛していきたいと思っています」
と恥ずかしそうに言った。
「殿下……」
わたしもだんだん恥ずかしくなってくる。
「わたしはあなたのことが大好きです。愛しています。婚約して、結婚したいです。婚約を受け入れていただけますでしょうか?」
殿下は恥ずかしがりながら、しかし、強い気持ちの入った口調で言う。
プロポーズ。
わたしの目から涙がこぼれ始めた。
前世の時の記憶がよみがえってくる。
あの時もこうして力強い口調でプロポーズされたのだった。
うれしくてしょうがない。
「殿下、ありがとうございます。前世でも今世でもプロポーズしていただいて、わたしは幸せものでございます。わたしも殿下のことが大好きです。そして、愛しています。つつしんで婚約をお受けしたいと思います」
「ありがとうございます。とてもうれしいです」
殿下も涙を流し始める。
そして、殿下の手からは、これまでよりも多くのやさしさが流れ込んできた。
「婚約した後は、結婚です。前世ではできなかった結婚をいたしましょう」
「わたしは前世でも殿下と結婚することが最大の夢でした。そうおっしゃってくださって、ありがたい気持ちでいっぱいです」
「わたしは前世では体があまり丈夫ではなく、あなたがあの世に行った後、半年ほどしか生きることができませんでした。しかし、今世ではあなたと一緒に長生きをしていきたいと思っています。そして、あなたを幸せにしたいと強く思っています」
「わたしも殿下を幸せにできるように、一生懸命努力いたします。殿下の為に尽くしていきたいと思います」
「リンデフィーヌさん、大好きです」
「わたしも殿下が大好きです」
殿下はわたしを抱きしめた。
恥ずかしい気持ちでいっぱいになるけれど、とても心地いい。
そして、唇と唇を重ね合う。
わたしにとっての今世でのファーストキス。
わたしたちは幸せを味わい始めていた。
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