表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/137

第九十六話 前世でのわたし・想いが通じ合うわたしたち

 わたしの手を握る殿下の手から、殿下のやさしさが流れ込んでくる。


 苦しさの中でも心が沸き立ってきた。


 できればこのまま殿下の愛を受け取り続けていたい。


「殿下、そのお言葉だけで、わたしは幸せでございます。これで心おきなくこの世を去ることができます。生きてきてよかったと思います。ありがとうございます」


 わたしはなんとか殿下に言うことができた。


 それに対し、殿下は、


「そんなことは言わないでください。わたしはあなたと今世で結婚したいのです。来世で結婚することはもちろん約束します。でもわたしはあなたが大好きです。愛しています。来世があることは信じたいと思っていますが、それまで待つことはできないのです。あなたにはもっと生きてほしい。わたしと一緒に長生きをして、幸せになってほしい。それが、わたしの願いなのです」


 と涙を流しながら言った。


 気持ちはうれしい。


 わたしだって、できれば殿下と今世で幸せになりたかった。


 でもそれを殿下に伝えたくても、もう言葉にならなかった。


 体のつらさ、苦しさがいよいよ頂点を迎えようとしていた。


 せめて最後は、殿下に微笑みを届けたい。


 そして、最後の想いを伝えたい。


 だんだん意識が遠くなり始めているが、まだこの世を去るわけにはいかない。


 わたしは、一生懸命微笑もうとしていた。


 今まで部屋の中でも、わたしたちと少し離れたところにいた侍医が、もう持たないと思って、殿下の側近にお願いをしたのだろう。


 わたしのそばには、殿下だけではなく、国王陛下と王妃殿下と侍医、殿下の側近たちが集まってきていた。


 そして、王宮にやってきて別の部屋で待機していた、わたしのお父様もわたしのそばにきている。


 お父様は、わたしの容態が悪化したので、二日前から王宮に滞在していた。


 殿下が使者を出してくれたのだ。


 わたしの意識が戻った時に、お父様とは二人きりで少しだけ話すことができた。


 その時、お父様に感謝の思いを伝えているが、まだまだ足りないと思う。


 お父様に、もう一度感謝の思いを伝えたい。


 殿下にも、もう一度感謝の思いを伝えたい。


 そして、集まった人々に感謝の思いを伝えたい。


 しかしそれは、この体の苦しさからすると、とても困難なことだった。


 意識が朦朧としてきている。


 このままでは、意識を失ってしまう。


 それでもわたしは伝えたかった。


 伝えないまま意識を失いたくはなかった。


 そして、このままこの世を去りたくはなかった。


 伝えたいという気持ちが強く沸き立ち始めていた。


 その気持ちがいい方向に行ったのだと思う。


 意識が少しずつ戻り始めた。


 弱々しい声にはなってしまうと思うけれど、話すことはできそうだ。


 多分、一時的なものだと思うが、これでみんなに思いを伝えることができる。


 わたしは、弱々しくて涙声ではあったが、国王陛下と王妃殿下、そして集まった人々にそれぞれ感謝の思いを伝えることができた。


 そして、お父様にも、


「お父様、ありがとうございました。わたしはお父様の子供に生まれて幸せでした」


 と感謝の思いを改めて伝えることができた。


 皆、わたしの為に泣いてくださっている。


 ありがたいことだ。


 わたしも涙が止まらない。


 そして、殿下。


「殿下、今までどうもありがとうございました。来世で結婚することを約束していただいて、とてもうれしいです。来世が今から待ち遠しいです」


 わたしがそう言うと、


「リーゼアーヌさん、お礼を言わなければいけないのはこちらです。ありがとうございました。来世での結婚の約束をしていただいて、わたしの方こそうれしいです。でもわたしは、まだあなたと今世で結婚する望みを持っています。今世であなたと結婚するのが、幼い頃からの夢だったのです。その夢は今も変わりません。ですから、来世でも結婚しましょう、と言わせてください」


 と涙声で殿下は応えた。


 そして、


「わたしはリーゼアーヌさんが大好きなのです。愛しています。この愛は、来世でもそれ以降も持ち続けます!」


 と殿下は言ってくれた。


 これほどうれしい言葉はない。


「殿下に対するわたしの愛も、これからずっと持ち続けます。わたしも殿下が大好きです。愛しています」


 殿下に想いを伝えた言葉。


 その言葉が、わたしの前世での最後の言葉となった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


と思っていただきましたら、


下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。


ブックマークもいただけるとうれしいです。


よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ