第九十話 前世でのわたし・わたしを救ってくれた殿下
殿下は忙しいというのに、わたしのもとに来てくれたのだ。
わたしは殿下を迎えに行く。
すると、殿下とルッセソワ殿下が対峙していた。
殿下は、ルッセソワ殿下に、
「リーゼアーヌさんは、あなたが迫ってくることを嫌がっています。リーゼアーヌさんは、やがてわたしの婚約者になる方です。もうリーゼアーヌさんの嫌がることはしないでください」
と柔らかい口調ではあるが、厳しく言った。
「何を言っていやがる!」
ルッセソワ殿下は、殿下に対して、今にも斬りかかろうとする態勢になる。
しかし、殿下の剣術は近隣諸国にも聞こえるほどの優れた腕前。
本気で戦ったら勝てる相手ではない。
ルッセソワ殿下も、それは理解をしているのだろう。
斬りかかることはできなかった。
ルッセソワ殿下は怒りを抑えながら、
「お前が相手では仕方がない」
と言った後、
「あきらめるしかないな。悔しい。いや、腹が立つ。今度俺が生まれ変わった時は、生まれ変わったリーゼアーヌを婚約者にした後、その婚約を破棄してやるつもりだ。お前をうれしがらせた後、絶望のドン底につき落としてやるつもりだ!」
と言い捨てて屋敷を去っていった。
「殿下、ありがとうございます」
わたしは殿下に頭を下げる。
「あなたがご無事でなによりです」
殿下はそう言って微笑んだ。
しかし、ルッセソワ殿下の言った言葉が気になっていた。
なんという執念なのだろう。
そこまでわたしに執着する理由はわからない。
わたしを愛しているところから来ているとは到底思えなかった。
そういう方であれば、今まで十人以上の女性を捨てたりはしないだろう。
来世があるかどうかはわからない、
しかし、こういう憎しみに満ちたことを言われると、心配な気持ちにはどうしてもなってきてしまう。
そんなわたしに殿下は、
「そういう状況になったとしても、わたしは絶対にあなたを救いに行きます。わたしはあなたが好きです、愛しています。来世でもあなたへの愛を貫き通したいと思っています」
とやさしく言ってくれた。
わたしは改めて殿下のことが好きになった。
そして、いよいよ婚約するところまできたのだけれど……。
わたしは体が強くなかった。
大人になるまで生きるのは難しいだろうと侍医に言われていた。
この王国の名医の一人である侍医がそう言うぐらい、わたしの体は弱かった。
それでもわたしは、なんとか生きたいと思った。
理想を言えば、殿下と婚約、そして結婚をして幸せな生活をしていきたい。
殿下とずっと一緒にいることができれば、それでわたしは幸せ。
それが無理ならば、せめて婚約だけでもして、あの世へと行きたかった。
その願いが通じたのか、病気がちではなったものの、なんとか大人になるまで生きことができ、婚約寸前というところまできた。
しかし、わたしの病気は重くなっていた。
今までも重い時はあったが、今回は違う。
多分、もうわたしの生命も長くはなさそうだ。
侍医は、
「残念ながら、後半年持てばいいかどうかというところです。わたしの力が足りず、申し訳ないと思っています」
と涙ぐみながら言っていた。
苦しくてつらい。
せっかく幼い頃からの夢だった殿下との婚約が、まもなくできるというのに……。
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